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※瀬戸氷河
一人の女性が、そこには立っていた。
「瀬戸氷河さんですね」
俺が答える暇もなく、彼女は俺に歩み寄り顔を近付ける。
「ふむ、確かに美青年に分類されます。特別そうなニオイがしますね」
キュッ、と彼女の瞳が動く。その目の動きが作り物臭くて、俺は彼女が人間では無いことに気が付いた。
「えぇ、そうです。私の体はサイボーグですよ」
顔を近付けたまま、にっこりと笑う。
「私は人前には出てはいけないファンタジーを持っているのですよ。本当はこうして話すことすら危険な可能性があるのですが、それは仕方がありません」
彼女が俺から距離を空けた。背筋を伸ばして俺から視線を外す。
「貴方がこの学校に来てから、ずっと観察させて頂きました」
さっと血が引いていくのが分かった。彼女がまた俺に微笑みかける。それは宥めるような、落ち着かせるような、そんな笑みだった。
「しかし、それは何も貴方だけではありません。この釣木学園の全生徒がそうなのです。……貴方が知りたい釣木学園の真のファンタジー、知りたいですか?」
この学園は、異常だ。その異端の核心を俺は今、聞こうとしている。いや、聞かないことも出来るだろう。むしろ聞いてしまったら取り返しはつかない、俺は何かを失ってしまうんじゃないだろうか。そんな予感に駆られていた。しかし、俺のここでの任務はこのファンタジーと呼ばれる異端を知ること。その根源を知る事が出来るのなら、大きな前進になるに違いない。
「……本当に、知りたい?」
彼女が首を傾げる。長い髪の毛がさらりと零れる。俺は頷いた。
「そうですか」
突然、空間が歪み、俺と彼女の周囲の景色が室内へ変化した。応接室のような、綺麗な部屋だ。
「ならば教えてあげましょう」
俺の背後で、声が聞こえた。
「釣木学園のファンタジーを」
ゆっくりと、振り返る。
俺は、そこで異端を知った。
「これで貴方もファンタジーの仲間入りです」
「……そんな夢を見た」
「はあ?何だそれ?」
「知らねーよ、夢なんだから」
朝、零一に話をすると怪訝な顔をされた。まあ、誰だって大してオチも無い話をされたらそうなるよな。
「んーでも……それ結構ヤバいかもな」
零一が机にべたりと頭をつける。
「は、なんで?」
「その女の人って学園長だろ?学園長は夢の中でも会ったらやべーよ」
「だからヤバいって何が」
「あの人は『ファンタジーを作るファンタジー』なんだよ。学園長と何かしらの接触をするだけでファンタジーを持ってしまう……らしい。噂だけど」
零一は目をつぶって、んーと唸る。
「まー氷河は元々変だし大丈夫か」
「元々変って何だよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
真実とか終わりに至りそうな話。
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一人の女性が、そこには立っていた。
「瀬戸氷河さんですね」
俺が答える暇もなく、彼女は俺に歩み寄り顔を近付ける。
「ふむ、確かに美青年に分類されます。特別そうなニオイがしますね」
キュッ、と彼女の瞳が動く。その目の動きが作り物臭くて、俺は彼女が人間では無いことに気が付いた。
「えぇ、そうです。私の体はサイボーグですよ」
顔を近付けたまま、にっこりと笑う。
「私は人前には出てはいけないファンタジーを持っているのですよ。本当はこうして話すことすら危険な可能性があるのですが、それは仕方がありません」
彼女が俺から距離を空けた。背筋を伸ばして俺から視線を外す。
「貴方がこの学校に来てから、ずっと観察させて頂きました」
さっと血が引いていくのが分かった。彼女がまた俺に微笑みかける。それは宥めるような、落ち着かせるような、そんな笑みだった。
「しかし、それは何も貴方だけではありません。この釣木学園の全生徒がそうなのです。……貴方が知りたい釣木学園の真のファンタジー、知りたいですか?」
この学園は、異常だ。その異端の核心を俺は今、聞こうとしている。いや、聞かないことも出来るだろう。むしろ聞いてしまったら取り返しはつかない、俺は何かを失ってしまうんじゃないだろうか。そんな予感に駆られていた。しかし、俺のここでの任務はこのファンタジーと呼ばれる異端を知ること。その根源を知る事が出来るのなら、大きな前進になるに違いない。
「……本当に、知りたい?」
彼女が首を傾げる。長い髪の毛がさらりと零れる。俺は頷いた。
「そうですか」
突然、空間が歪み、俺と彼女の周囲の景色が室内へ変化した。応接室のような、綺麗な部屋だ。
「ならば教えてあげましょう」
俺の背後で、声が聞こえた。
「釣木学園のファンタジーを」
ゆっくりと、振り返る。
俺は、そこで異端を知った。
「これで貴方もファンタジーの仲間入りです」
「……そんな夢を見た」
「はあ?何だそれ?」
「知らねーよ、夢なんだから」
朝、零一に話をすると怪訝な顔をされた。まあ、誰だって大してオチも無い話をされたらそうなるよな。
「んーでも……それ結構ヤバいかもな」
零一が机にべたりと頭をつける。
「は、なんで?」
「その女の人って学園長だろ?学園長は夢の中でも会ったらやべーよ」
「だからヤバいって何が」
「あの人は『ファンタジーを作るファンタジー』なんだよ。学園長と何かしらの接触をするだけでファンタジーを持ってしまう……らしい。噂だけど」
零一は目をつぶって、んーと唸る。
「まー氷河は元々変だし大丈夫か」
「元々変って何だよ!」
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真実とか終わりに至りそうな話。
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