一話目です。

※木津樹甘良
ちょっと話をしよう。
『紅い海』って知っているかい？
人間が魔物を殺した血で出来た海と言われている海でね。
古い時代に魔物と人間が戦争をしたんだ。
…戦争という言い方はおかしかったかな。
魔物が地上を支配しようとした。人間はそれを阻止しようとした。
それだけの話なんだ。
魔物は全滅する勢いで殺され、血で海が出来上がった。
そしてそこから魔物の怨念だとか、強い恨みの念が湧き出てきてね。
争いの後に紅い海を封印した。
このあたりがちょっと高いところになっているのは、このせいなんだね。

そして、これは最近の話なんだけど。
紅い海の封印が解かれたらしいんだ。
１０年前くらいに、ね。
四人の子供が封印の場の近くで遊んでいたら、封印を壊してしまって紅い海に落ちた。
これは大事件になって、子供はすぐに救出された。
けど、助かったのは一人だけ。
他の三人の子供は紅い海に落ちてしまったっきりさ。
残った子供にどうやって封印を壊したのか、とかいろいろ聞きたかったみたいだけどね。
その子にとって紅い海はひどく嫌な記憶となっていてね。
聞くに聞けない状態になってしまったんだ。

そして今、その被害者の子供を支部に迎え入れた。
これで紅い海をもう一度封印することが出来そうだ。