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目覚める話。




・リミットオーバー
※瀬戸氷河
目を覚ますと、俺は自分の部屋にいた。
部屋のベッドに寝かされていた。
ラウンジにいたはずなのに、傷が痛み出してからのことが思い出せない。
「おー、起きたかー」
「莱桃さん……?」
俺の部屋で、莱桃さんがドーナツを食べて待っていた。
起き上がろうとすると、あかんよー、と止められた。
「氷河の傷は何一つ治ってないんやから。寝たまま聞いてや」
「治って、ない……?」
そういわれて自分の身体を見てみると、鞭で打たれた痕が痛々しく残っていた。
「なんで……!?」
「その理由を説明するから、聞いてって言うてんの」
ドーナツを食べ終えた莱桃さんが、話始めた。
「氷河のその傷は、間違った治癒術で無理矢理に押さえてたもんが、開いた傷や。魔力がない中やったって、そんなの応急処置にしかならへんのよ」
「……」
応急処置。
確かにウィップスレイブ、エレクトロスパーク両方の場合で俺は疲れていたのかもしれない。
そんな状態は、うまく魔力を集められない。
わかってた、はずなのに。
「だから、改めてゆっくり魔力を集めて、丁寧に治癒術を使うんや。まぁ、一週間ぐらい、治癒術に専念せや」
「人は、治せるんだな……?」
「そうやね。治癒術師の仕事だけはできるやろ」
「なら、いい……」
安心してベッドに潜る。
莱桃さんが、くすりと笑う。
「随分大人しくなったんやね。戦わせろーって暴れるのかとおもっとったわ」
「そりゃ、暴れてぇけどさ……思ったように動かねぇから、無理だってのはわかる。それに……」
「ん?」
「治癒術も嫌いじゃねぇんだよ。俺が、誰かを助けられるってのが、嬉しいから」
「変わったなぁ……」
感心したように呟く莱桃さん。
「考えを変えたんだよ。」
「ええと思うよ?氷河の治癒術には、みんな助けられてるみたいやから。」
「俺がいる限りは、誰も死なせねぇって決めたんだよ」
「……なーるほど。怯えてるんやな、氷河」
「なんだと?」
急ににやにやと笑い出す莱桃さん。
「氷河は、誰かがいなくなるって事に怯えてるんよ。誰かが死んだりして、消えてしまう事を怖がっとるんや」
「……」
何も言い返せなかった。
当たっていたから。
気づかれたくなくて、顔を伏せる。
「だったら、それを繋ぎ止める術は、治癒術か自分が強くなることしかないもんなぁ。」
「俺のせいで、傷付けたんだ……。だから、俺が助けないと、消えちまいそうで……!」
「んー、苛まれとるねぇ。魘されてる?どっちだってええけど」
莱桃さんが、優しく俺の肩を叩く。
「そんなに抱える必要ないんだよ?」
「……ッ!」
顔をあげれば、莱桃さんはすでに部屋を出ていた。

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氷河可愛い

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