５０が茅野と氷河後編なんだよ。

しばし待たれよー。

その前にリクエスト消化。

・騎士志望の愚かな顛末
※弓ヶ浜東火
「あ、聞いて下さいよ、東火さん」
ふらりと廊下を歩いていると、手仕舞君に捕まった。
「なんです？」
「減給されたんですよ、氷河のせいで」
「はぁ」
瀬戸君ってそんなに嫌な奴だっけ？と、ぼんやり考えていると、手仕舞君が付け足すように説明を始めた。
「いや、えっと、氷河が魔術師に絡まれてて、それを助けに行ったんですけど、氷河が勝手に動くから守り切れなくて、それで減給。」
「ああ、なるほど」
私はあまり瀬戸君とは、話さないけれど、雨境からいろいろと噂を聞いている。
彼の性格なら、おとなしくなんて出来ないだろう。
誰よりも他人が傷付く事を嫌う男らしいから。
「私なら、おとなしくしてますけどね」
「え？」
思わず何を口走っているんだ、私は。
しかし、聞かれてしまったことには撤回はしにくい。
「あ、いや、私は動けませんから」
「そっか、東火さんは、預言者だから」
「まぁ、あまり運動神経はよくないのですよ。一応狐ではあるんですけどね。」「そんな東火さんなら、俺守れますよっ！」
私の手を取る手仕舞君。
何故か目が輝いている。
「決めた！俺、東火さんの騎士になる！」
「弓使いが何を言ってるんですか。あんたも後ろでしょう」
手仕舞君の表情が固まる。
そして叫ぶ。
「あああああっ！そうだったーっ！」
「煩いですよ」
「鉄爪、ブーメラン、弓、鉄球、短刀、仕込み刀……ああああ、無理だ……」
手仕舞君が、がっくりと落ち込む。
膝をついて、まるでクエストに失敗したと言わんばかりの凹みようだ。
「……残念、でしたね」
さすがに気の毒になってきたので、声をかける。
だが、がばっと手仕舞君が起き上がる。
「諦めませんから！絶対、東火さんを守れるようにしますから！」
「あ、ああ……期待しないで待ってますよ」
「期待して下さいよ、そこは！」
私たちは、思わず吹き出した。
「ちょっと邪魔なんだけど、二人とも」
私達が廊下にいたのを忘れていた。
本を５冊ほど積んだ状態の瀬戸君が声をかけてきた。
「ここであったが百年目！減給の元凶めー、覚悟しろ！」
手仕舞君が、何故か彼に指差すポーズをとる。
「え、何かしましたか、俺？」
だが、瀬戸君は分かっていなかった。
「減給食らったんだよ、お前のせいでっ！」
「え、何で？お前は治療しただろ？」
「自分を治療しろ、アホ！」
「――そうか、そうだったな。」
瀬戸君がようやく事態を飲み込んだらしい。
というか、私も気になる発言があったぞ。
「あの、手仕舞君が治療されるような傷を受けたんですか？」
「俺をかばって魔術師の攻撃を食らってしまって……。」
「ほう……」
彼が積んでいた本の一冊を奪う。
魔術についての本のようだ。
ぱらぱらと本を捲る。
「え、何してんですか、東火さん」
「勉強熱心だねー、似合わないよ」
と、本を返す。
わざと積み上げたものを乱すように力を入れて。
「ちょっ、東火さん、なにしてん、の……っと！」
バランスよく持ち直しやがった。
「ちっ」
「なんで！？」
瀬戸君が訳が分からなそうにしている。
すっきりはしないが、まぁ仕方ない。
「行きますよ、手仕舞君。」
「あ、柳賀って呼んで」
「行きますよ、手仕舞君」
「行きます……」
彼を連れて食堂に向かうことにした。

ちらりと背後を見ると、瀬戸君の背中から津川君が怒りのタックルをして、積んでいた本をぶちまけていた。
「減給の恨みだよ、馬鹿！」「どうしてくれんだ、馬鹿！」
そして、その場で口喧嘩をしていた所を柊君に見つかり、二人とも頭を叩かれていた。
「うるさいわ、てめぇら！」
すっきりしたかな。

－－－－－－－－－－－
ヒロイン企画の続きになってしまいましたが。

意外と両思いな二人。

分かりにくい嫉妬心と騎士志望の終了。