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捧げるようなそうでないような。


「そういえば、東火さんの誕生日っていつなんですか?」
ふと、雑談の一環として手仕舞君が私に聞いた。
誕生日というものが、私は嫌いだ。
人間と妖怪の半分じゃまともに祝われることがないし、私が生まれ落ちた日なんてどうでもいい。
私は不機嫌なのを露にしながら、答えた。
「覚えてないです」
「ええー!?それじゃ、俺が東火さんの誕生日お祝いできないじゃないですかー!」
手仕舞君は、私が邪険にしても更に食って掛かるやつだ。
今回だって鬱陶しく食いついてきた。
「そんなことしてほしくないんですがね」
「俺がしたいです!」
「はぁ……」
私は呆れたため息をついた。
手仕舞君は、相手の人種を考えないでものを言うから、世間の反応ってのをよく知らないでいる。
そのせいで、私のような半分の寄せ集めの連中がどんな思いをしたかなんて、彼には分からないんだ。
バカに諭すように私は話すしかない。
「我々兄弟は、誕生日ってのにあまりいい思い出がないんですよ。構ってちゃんの雨境でさえ、誕生日だけは祝われたくないと避けるぐらいにね。」
「だったら、今からいい思い出作りましょうよ」
「今更です。必要ありませんから、忘れてください」
「むー……分かりましたよ……」
手仕舞君は、不服そうだが諦めてくれた。
しかし、いい思い出がないなら、作ってしまおうなんて手仕舞君らしいアホな発想だ。
聞いた瞬間、思わず笑ってしまった。
気づかれていないと思うけれど。
「……手仕舞君」
「柳賀ですー」
「ほんとに、なんもしないでくださいよ?」
「しないですよー、うん」
といいつつ、手仕舞君はにやにや笑っていた。
絶対余計な事をするな、こいつ。
一応釘は指したので、私はこれ以上は言わないことにした。

その一週間後、任務終わりに手仕舞君に呼び出された。
具体的な用を聞こうにも、手仕舞君はいいから、としか言わない。
誤魔化すのが下手なやつだと思いながら、案内に従う。
連れてこられたのは、食堂だった。
「はい、どうぞ!」
手仕舞君に言われるがまま入ると、クラッカーの音が一斉になり出す。
「東火さん、おめでとー!」
中にはばか騒ぎが好きそうな如月君に榎本君に雨境がいた。
料理やケーキを作ったであろう宮代君までにやにやしとる。
「あのね、東火さん。誕生日なんだけど、今日ってことにしない?」
「はぁ?何言うとるんですか、手仕舞君」
本当の誕生日はずっと先だ。
忘れたなんて言ったが、忘れるわけがない。
その日の度に親から歪んだお祝いをされたんだから。
「東火さんがここにいてくれて、俺嬉しいんですよ。東火さんがいたから、俺は頑張れるんだし。」
「んなの、私じゃなくても」
「ダメです!東火さんじゃなきゃ!」
力強く否定し、私の手をとる手仕舞君。
「東火さんの誕生日、祝わせてください」
その言葉に私は、こう答えるしかない。
こいつらがここまでしてしまったのを無下には出来ないしな。
「ここまでされては、敵いません。いいですよ、私の誕生日は今日ということにしましょう。」
「東火さーん!」
「んじゃ、飲もうぜ!東火さん!」
如月君が勢いよく酒を開ける。
ワインにビールに日本酒に……。
めちゃくちゃじゃないか。
「ケーキも頼むぜ、自信作だから」
宮代君もケーキを切り始める。
ほんまにパティシエやればええのに。
「東火さん!」
「ん?」
手仕舞君が、私を抱き締める。
それから軽くキスをした。
誕生日プレゼントのつもりだろうか。
……まぁ、悪くない。

――――――――――――――――――――――
てしとうか。
ささげます

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