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盛り上がったから、バラードで。


テンションの低い話です。
かつてのハードスクラップショー15です。

・癒しの音色
※篝祇亜須磨
街のとある教会。
瀬戸氷河さんが寂しそうにグランドピアノに触れていた。
「……あ」
扉を開けた音で瀬戸さんが、俺に気付いた。
「亜須磨君、どうしたの?」
「いえ、たまたま来ただけなんですけど……瀬戸さんは?」
「俺も偶然かな。何故か司祭も誰もいなかったから、ピアノ借りてる。」
瀬戸さんが、音を一つ出す。
「何故ピアノを?」
「弾いてた事あるから。昔、一人で暇な時にさ。」
「ピアノが家にあったんですか?」
「ああ、あったな。綺麗なピアノだった」
「……もしかして、神血は代々継いでいたんじゃ――」
「あー、言うなそれ。認めたくない」
瀬戸さんの表情がいつもより柔らかい。
「好きなんですか?それ」
「……嫌いじゃないな。弾いてる間は楽しかった。」
「瀬戸さん、表情が穏やかですから、そうだと思いましたよ。」
「氷河でいいって。」
「あ、はい。」
瀬戸さんは、またピアノに触れる。
音も出ない程優しく。
「恭二とか芳示とか丙がいない時に弾き始めたんだ。母親が弾いていたピアノが好きだったから。」
「いつも一緒ってわけじゃなかったんですね」
「当たり前だろ。都合とかあるもんだ。」
「じゃ、氷河さんのヒロイン度が更に増しましたけど、いいんですか?」
はっきり言ってしまうと、氷河さんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「馬鹿やろ、そゆこと言うなっつの……。」
「氷河さん、ずるいなあ」
「なにがさ」
「そのリアクションまで可愛いじゃないですか」
「亜須磨のくせに生意気な」
「どういう意味ですかね」
「そういう意味だ」
「じゃ、話を変えましょう」
咄嗟に切り返す。
「恭二さんとかは知ってるんですか?」
「きっと知らねぇよ。俺だけの趣味だから」
「聞いたら喜びますよ、さっきみたいに」
「言う気もないけどな。」
「いっそ弾いてみたら?」
「尚更無理だよ。あいつにこれの良さは分かんないだろうから」
「じゃ、今。」
「は?」
氷河さんが戸惑う。
「弾いて下さいよ。聞きたいです。」
「い、いいけど。俺あんまうまくねぇぞ……?」
そして、恥ずかしそうに答える。
「いいんですよ。氷河さんの音が聞きたいんですから」
「……亜須磨のくせに」
「はい?」
「あーもう、なんかリクエストあるか?」
「すみません、あまり詳しくないので……」
「……じゃ、これでいいか?」
ピアノの前に予めあった楽譜を取り出す。
「ああ、いいです。それで。」
「分かった。――期待すんなよ?」
氷河さんが楽譜を立てると、ゆっくりと弾き始めた。
曲なんて分からない。
きっと氷河さんも楽譜のまま弾いてるだけだ。
しかし、癒される。静かな曲調だった。
氷河さんが弾き終わると、俺は拍手をする。
「上手いじゃないですか。」
「んなことねぇよ……。つか、らしくないだろ?」
「氷河さんは、繊細な人なんですよ。だから、らしくないなんてことはないですよ」
「繊細、かぁ……」
「硝子みたいに綺麗なのに、それが時に痛々しく見える。」
「生傷絶えないからか?」
「氷河さん、苦しみ過ぎです。無理し過ぎなんですよ。たくさんの人に言われまくったでしょう?」
「言われまくったわ。」
「なのにまだ気付かない」
「気付かない……?」
「氷河さんは、無理しないって優しさを持ちましょうよ。」
「……それは、聞けないかも。」
「まだ、毒が抜け切ってないのに?」
「ばれてたか」
氷河さんは、安静にしてろという所を抜け出した人だ。
「恭二が辛そうだから、見ていたくなくて」
「氷河さんのせいなのに?」
「俺のせいだから。けど、ほぼ毒なくなったしさ。抜け出しても」
「何処か大丈夫なんですか。病の毒は抜けてないんでしょう?」
氷河さんの額に手を当てる。
予想通りの高温。
「――ほら」
「大丈夫だって!もう辛くないから!」
「それが無理なのでは……?普通ならまだ寝てないと駄目ですよ」
「そう、だな」
「なんで、ピアノに触れていたんですか」
「恭二に会いたくなくて、ふらりと街に出て、これを見たら懐かしくなった。そしたら、ピアノを弾いていた母親を思い出したんだよ。あの人、これ弾いてる時切なそうで悲しそうでさ。なんでだろ、ってずっと思ってた。」
「分かったんですか?」
「分かんなかった。俺が聞いていたからなのか、あのピアノに何か思い出があったのか、なんなのか。だからかな。俺も弾いてると楽しいんだけど、悲しくなる。あんな表情されたら、どうしたらいいのか、分かんなくなる」
「氷河さん」
「ん?」
「泣くならここより、恭二さんの胸で」
「……わりぃ、帰るわ」
「はい。」
-----------
亜須磨にしなきゃよかったああああああ!
でも、亜須磨しか適任いなかったー!

ほぼ会話ですが、氷河がヒロインだと思ってくだされば。

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