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幸せを与えたい。

ただ静かな話。

・アルカディアフラワーの魔術師
※瀬戸氷河
目を覚ますと、そこは色とりどりの花畑だった。
どうしてこんなところで倒れていたのかすら思い出せない。
起き上がって辺りを見回してみる。
全ての季節の花が咲き誇っている。
「どうなってやがる……おかしいだろ……」
綺麗な光景であるはずが、恐ろしく見える。
「ここのおかしさに気づくということは、花に詳しいのね」
女性の声がした。
長い茶色の髪にピンクでまとまったふわふわとした服装。
「ここには季節がないのか?」
「ないんじゃなくて、私が育てているの。私は魔術師だから。」
「魔術師……!」
ホルダーの銃に手をかける。
「あ、警戒しないで。君がここにこれたのは偶然なんだから。それに花を傷つけたくないの。」
確かに敵意のない魔術師。
こんなことは初めてだが、彼女やここの雰囲気から警戒もできない。
ホルダーから手を離し、座り込む。
「綺麗でしょ。私はアルカディアの花畑って呼んでる。」
「アルカディア……理想郷、楽園って意味だよな」
「そう。エリュシオンっていうのも、楽園って意味なんだよ。」
「知ってる。楽園だなんて……馬鹿馬鹿しいよな」
エリュシオンは実際には楽園じゃない。
一時期は魔物の巣食う地獄のような場所だったと聞くし、今だって俺にとっては楽園なんかじゃない。
「貴方は楽園を信じないの?」
「俺にはとても信じられねぇな。」
彼女は、その場をくるりと回って見せる。
その時に花びらが舞う。
「じゃ、ここが君の楽園!この世のものとは思えない美しい風景。それに感動できれば楽園になれるの。」
「…………」
言葉が出なかった。
彼女の楽園--アルカディアは、本当に楽園に見えたからだ。
救われているような気がする。
「君、花は好き?」
「……どうだろうな。墓に花を添えるぐらいしかしなかったし、俺が触れれば凍りつくしな。」
「儚い意味のが強いんだね」
「そうだな。死者を思い出す。」
そういえば、あの時の彼女は花が好きだった気がした。
部屋に生けてあったのを思い出す。
「そんな悲しいこと言わないでよ」
「え?」
彼女が何処からか花束を取り出す。
それは、色とりどりの花束。
「そんな悲しいことばかりじゃないよ。花は愛を伝えるメッセージにもなるし、癒されもするし、幸せにもなれるんだよ。」
「……そんなの、考えたこともなかった」
「だから、あげるよ。たくさんの幸せ!」
彼女が花束を投げる。
俺の真上で包んでいた紙とリボンがほどけ、花がばら蒔かれる。
「わっ!?」
花は当然俺に落ちてきて、花びらが身体中につく。
それを払うことなく、呆然とする。
「あははははは、似合ってるよ!」
「あーもー……すげぇついてんじゃん……」
彼女が笑い出して、急に恥ずかしくなる。
「ふふふ、やっと笑った。魔術師は嫌いだったみたいで、ずっと怖い表情か悲しそうな表情しかしてなかったから」
「……そう、だったか?」
「ここは、楽園。幸せの訪れる場所だから、笑ってもらわないと。」
「アルカディア……だったか。」
「うん。楽園アルカディア。」
「ここは、忘れられないと思う。」
「よかった。」

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力尽きた!
誰か幸せそうに微笑む妄想が捗るシチュエーションを下さい!
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