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武器名決定記念。

茅野三奈美編。

・セフィルの書
※瀬戸氷河
街を歩いていると、茅野を見かけた。
向こうもこちらに気づいたようで、彼女が俺を呼ぶ。
「氷河さん」
修道服を着て聖書を持ち歩いている。
典型的な教会の人間。
そして俺と同じ神血。
だが、彼女と俺は全く違う。
使い方も意識も何もかも。
「……あのさ、時間あるか?」
「え?まぁ、少しなら……」
「話がしたい。どこか落ち着けるとこないか?」
茅野が動揺して、急に背を向ける。
「そ、それなら、あそこのカフェなんてどうかしら?」
上擦った声で店を指差す。
なかなかおしゃれな店だ。
恭二が好みそうだ。
「じゃ、あそこで。」
「なら、早くいきましょ!」
早足で茅野が店に入る。
何を気にしているんだか。

カフェの人は少なく、すぐに席に案内された。
そこで茅野と俺は、同じ紅茶を頼んで待つことにした。
「急にどういうつもりよ?」
「そういや、茅野と俺は同じなのに話し込んだことはなかったと思ってな」
一度別の地方の教会で話したことはあったが、それきりだ。
「……神血は貴重なものではないわ。私にはちゃんと教会に神血の友達いるもの」
「まるで俺が寂しいやつみたいな言い方だな」
「貴方も教会にくればいいのよ」
「……ごめん、それはできない」
「そう、よね」
茅野が寂しそうに俯く。
そこで、紅茶が用意される。
互いに一口飲む。
茅野が先に話しかける。
「……どこかの貴族の生まれかしら?」
「え?」
「貴方、飲み方が上品だもの。」
「元下級貴族だった。今はそんなのとは縁を切ったけどな。」
「それなら貴方が神血ってのも、理解できるわ。最初は何かの間違いかと思ったけど」
茅野がくすりと笑う。
茅野は俺と会うときは不機嫌であることが多い。
それか寂しそうであった。
「茅野だって、どこかの名家の人間だろ」
「そうよ。私の家は代々教会へ奉仕を続けてきたの」
「そんなの……嫌にならないか?」
縛られている生活。
だが、茅野は平然と答える。
「私は好きで教会にいるもの。嫌になんてならないわ。」
貴族は王に捕らわれるものだ。
下級であったとはいえ、貴族であった俺は逃れられることなく、食事会やらなんやらに出たことがある。
俺は、それが嫌いだった。
ただただ不快でしかなかった。
茅野だってそれは同じはずなのに、彼女はそれを受け入れている。
全然、違う。
「……強いな」
思わず漏れ出た言葉に、茅野は驚く。
「貴方がそういうこと言うなんて。」
「……俺は、この血が好きになれない。」
自分に流れる特異な血を、受け入れることができない。
俺が神血だから、いろいろなものを呼び寄せてしまい、恭二や芳示を傷付ける。
俺だけならいいものを、彼らまでを引き裂くこの血を許せなかった。
「茅野は受け入れてんだろ?」
「ええ。定めみたいなものよ。」
言葉がでない。
茅野にだって俺と同じことが、あったはずなのに。
「氷河さん」
優しく名を呼ばれる。
「私たちが神血を与えられた理由は、人々を救うためよ。貴方だって誰かを救ったことがあるでしょう?」
「救い……」
「貴方の考えていることは大体わかるわ。貴方には天使の保護がないから、神血を狙う魔術師に襲われたことがあるのでしょう。私だってないわけじゃないわ。教会に直接襲ってくるやつだっている。そのたびに騎士が傷を負うのは確かに見ていられない。けどね、その傷付いた騎士を救えるのは神血だけなのよ。神血の人間しか人々は癒せない。救えないのよ。」
茅野は、凛と語る。
その意思の強さは俺にはないもので、羨ましく思える。
「……治癒術はどこまで出来る?」
「魔力を聖書で増幅すれば、死者蘇生まで。」
「死者、蘇生……そんなことが……」
茅野がいつも持ち歩いている聖書を取り出す。
「私が持っているのは、セフィルの書と呼ばれる聖書。これじゃ死者蘇生は出来ないけど、手を触れなくても治癒術がかけられる。願うだけで人は救える。」
茅野の治癒術は、相当のものだ。
傷を一瞬で塞ぎ、毒なんかも払える。
教会でも評判の治癒術師らしい。
「氷河さんだって、コツと聖書さえあれば、今よりも治癒術が使いやすくなると思うわ。人を救えるのよ。」
今よりも誰かを助けられる。
嫌々治癒術師を引き受けているつもりが、随分と慣れてしまった。
そんな俺には魅力的な話だ。
けど、俺は治癒術師として本部にいる訳じゃない。
「……氷河さん。神血として生まれてしまったからって、拒絶しないで。貴方にしか出来ないことがあるのだから」
拒絶はしていない、はずだ。
俺だって嫌いなこの血を利用しているのだから。
「違う。俺たちは覚悟が違うんだ。俺は、この力で誰かを殺すために利用している。」
「……神血を戦闘向きに利用するのは貴方だけよ」
「いる場所が違うんだからな、当たり前だろ。俺には天使の保護なんてない。自分の身は自分で守るしかないんだ。死にたくないなら殺すしかない……だろ。」
「同じ神血なのに、ここまで違うものなのね」
「そうだな。」
茅野と俺は同じ神血だというのに、ここまで相違があるなんて。
おかしいものだ。
彼女の思いが聞けたおかげが、少し吹っ切れた。
「茅野。ありがとな」
「……な、なにもしてないわ」
「ここの代金ぐらい払っとく。先に出てていいぜ。」
茅野が顔を赤らめ俯く。
そのままそそくさと店を出る。

会計を済ませ、店を出ると茅野が待っててくれていた。
「……貴方は、怖いわ」
「物騒、って意味でか?」
ただ首を横に振る茅野。
「だって、壊れてしまいそうだもの。思い詰めすぎて割れてしまいそう。だから、私と話がしたかったのでしょう?」
「……」
「いいの。辛くなったら話ぐらいは聞いてあげるから。懺悔、とかね」
「教会の聖女ってのが、いたら茅野みたいな奴なのかもな……」
「人々を救うためよ。貴方だって救われるべきだわ」
平等に人々を救う聖女。
俺は彼女の強さと優しさに救われていたのかもしれない。






私は貴方を救いたい。
教会に引き込むのが無理ならば、どうか彼の支えでいさせてください。
吸血鬼に敵わずとも、私は彼が好きだから。

-------------------
神血コンビ。
どちらもヒロイン要素があるため、儚くみえます。
だけど、人を救う茅野と人を殺す氷河じゃ全然違いますね。

ノマカプらしくしてみました。
茅野は聖女らしい強さを持った女性で、意志が強いです。
氷河は物理的に強いけども、割れ物のようなアンバランスさを持っています。
どちらにもないものがあり、精神的にも物理的にも彼らは救われています。
似てもいるんですけどね、どっちも強がりで自己犠牲的。
茅野はツンぶっていますが、氷河は正真正銘のツンデレ。

神血ってどうしてこうもヒロインなんだか。
いや、ヒロインだから可愛い。




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