氷河に萌えよう。

・悩み事
※弓ヶ浜雨境
暇だから、氷河の部屋にはいる。
氷河は優雅に紅茶を飲みながら、本を読んでいた。
氷河もそんな調子じゃ退屈だ。
「氷河ー、遊ぼうよー」
「あぁ？今、忙しい」
「暇そうに見えるけどなー」
ここで背中に飛び付くと殴られるから、堪えて氷河の読んでる本のタイトルを覗きみる。
北欧神話、の本みたいだ。
「氷河って、結構ファンタジーなのが好きなんだねぇ」
「んだよ、別にいいだろ」
「んー、いいけど、ね。」
氷河は未だに本から目を離さない。
本以下の自分が悲しいね。
ここは氷河の気をこっちに向かせる話をしよう。
「俺、それの詳しい解説本、持ってるけどなー」
氷河の動きが止まる。
気になってそうだ。
「……それ、貸して、くれないか」
「じゃ、俺と遊ぼう、ね？」
氷河は本にしおりを挟んで閉じた。
「しょうがねぇな、付き合ってやるよ」
「やったね！」
喜んで見せたけど、本で釣らなきゃ氷河とデート出来ないなんて悲しすぎるなー。
俺も恭二みたいに、即決で付き合ってもらいたい。
どこいこっかなー、と考えてると、氷河が声をかけてきた。
「なぁ雨境」
「んー？」
「俺ってさ、冷たいかな」
氷河がぽつりとそんなことを言った。
急にどうしたんだろうね。
俺に悩み事かな！？
「なになに！？どうしちゃったのさ、氷河」
「い、いや、どうだっていいことなんだけどよ……」
「よくないよくない！」
俺の食いつきに押される氷河。
こんなしおらしい氷河はじめてだよ！
瞬間的に、デートの目的地も決まった。
「氷河がこの前うまいって言ってたデザートなんだっけ？」
「あぁ……？ コーヒーゼリー……だけど」
「おごるから！ね、行こうよ氷河！」
「わ、わかったよ、雨境」
氷河を引っ張って街に飛び出した。
ハンドガンなんて持ち出されちゃ敵わないからね！

氷河が案内したカフェで、コーヒーゼリーを二つ頼んだ。
「ここはさ、コーヒーもうまいんだよ。だから、よく行くんだ」
「へぇー……氷河のイチオシってわけだねー」
「まぁな」
氷河の好きな店に来れちゃう俺。
氷河の好みは大体知ってたつもりだけど、やっぱり高そうなものが好きみたいだ。
不良ぶって貴族っぽいの隠してるだけかもしれないね。
そう思うと氷河すっごく可愛い。
さて、そろそろ落ち着いたし、お悩み相談の答えを言おう。
「氷河はさ、正直なだけなんだって。嫌なことは嫌って言っちゃうし、興味なかったら見もしないでしょ？だから、冷たい人って誤解されちゃうんだって」
「……よく、知ってるな雨境」
「氷河が好きだから、知ってんの」
恥ずかしそうに目を反らす氷河。
ストレートな告白に弱いのも知ってるよ。
「でも、変える必要ないよ。だって、正直なのが氷河だもん。自分の意思ってのをはっきり持ってる氷河。そういう氷河だから、いいんだよ」
「そっか……俺らしさってのかな、そういうの」
「そうだよ。」
氷河が照れ臭そうに笑う。
すっごく可愛い。
「お待たせしました、コーヒーゼリーでございます。」
ウェイトレスが、俺達のコーヒーゼリーを用意してくれた。
ちょうどいいタイミングでコーヒーゼリーも来てくれたし。
「食べようよ。氷河がうまいって言ったやつ、すっげぇ気になるし」
「分かってるって。あぁ、そうだ、雨境」
コーヒーゼリーにスプーンを入れようとした俺の手が止まる。
「ありがとな。」
氷河が微笑んでくれた。
俺の言葉で吹っ切れたのかもしれない。
滅多に向けられない笑顔が眩しくて、顔を真っ赤にしたであろう俺。
「い、いいってば。ほら、食べよ？」
動揺しつつも、コーヒーゼリーにスプーンを入れた。

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雨境も頑張る。