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ちょっとだけ書いてみた。




※愛染梓
それは、私が愛染梓という人の名で縛られていなかった頃、エリュシオンが役割を変える前の話になるわ。
私は、同胞の動向を調査するように裁判所に依頼され、ある同胞の元に向かっていた。
その同胞は魔族でありながら、国を作り人をまとめているのだという。
それは我々魔族が成してはいけない事。
知力も技術もまだ劣っている人に我々の高度な技術を提供している可能性がある。
それは、人の成長を阻害する要因になりかねない。
我らは、世界を見守る者でなければならないのだから。
同胞が作り出した国に入ると、門の傍で指揮をしている男を見つけた。
「何をしているのかしら、スヴァトラス」
「……裁判官。ついに気取られてしまったか」
容疑のかかっている同胞、スヴァトラスは私を見るなり面倒くさそうな顔をする。
私は、裁判所からの書状を突き付けながら用件を言う。
「ええ。貴方に掟に反している可能性がある、と容疑がかかっているわ」
「その件か。それなら私はなにもしてない」
「この町は人間が生み出した技術とでもいうの?」
「そうだ。ま、少しだけ私が助言をしてしまった部分もあるのだが、全て今の人間に起こり得る技術の可能性の範囲内にあるものだ。」
「確かめさせてもらうわ」
少し町を歩いて回る。
今回の書状に持ち込み禁止の技術が全て記されており、私も当然それを暗記している。
その私が見ても、確かに持ち込み禁止の技術が使用されている形跡はなかった。
我々魔族が外部にもたらす事を禁じた技術を使っていれば、人間が働く事なんてなくなってしまう。
この町の人間がせわしなく働いているのが第一の証拠だ。
「確かにそうね。せこい計算をして逃れる所が貴方らしいわ」
「裁判所に目をつけられては、面倒だからな」
「分かっているのなら、容疑のかかるような真似はしないで。」
「今度は、見つからないようにする」
今の行為を止める気はないようだ。
スヴァトラスは元々変わり者であったから、あまり気にはならない。
スヴァトラスの潔白が証明された時点で帰るべきなのだが、私は気になっていた事を聞いてみた。
「どうして貴方は人の王になったのよ?」
「面白そうだったから」
「それだけ?」
「それだけだが」
真顔でのスヴァトラスの回答に、私は頭を抱えた。
彼の本心は、いつになっても読み取れない。
「あなたの考えが分からないわ。イシアもそう。どうして貴方達は人に興味を持ってしまうのかしら。」
「ここまで多様に変化するのは人間だけだ。彼女も私もそこに惹かれてしまったのではないだろうか。」
この世界で最も変化する要素が多いのは、確かに人間だ。
だから、人に惹かれるという理由がわからない。
人はいつ我らや世界に反抗するか分からないのに。
スヴァトラスは、目線を空に向けて続ける。
「人に興味を示しているのは何も我らだけではない。空だって人を利用している。」
「ええ、気づいているわ。でも、空の目的は分からない」
「目的なんてどうでもいい。空も人に興味を示している、ということが大事なんだ。お前には一生分からないと思うがね」
何故、彼らも空も人に興味を示すのかしら。
その解答に興味はない。私は裁くのが目的の裁判官なのだから。
「分からなくていいわ。裁く判断が狂うだけ。じゃあね、スヴァトラス」
「二度と来ないで頂きたいね、裁判官」
張り付いた笑顔でスヴァトラスが送る。
何を考えてるか分からなくて気味の悪い所は相変わらずで、安心したわ。

スヴァトラスの街は、その後空によってうち滅ぼされた。
そして、私は愛染梓として人が作り出した街を裁こうとしている。
アマリアであった頃と違うのは、空が人を求めた理由を知った、ということぐらいかしら。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
100~200年前ぐらいの話。
まぁ、大雑把に100年前とか言ってた気がする。
エリュシオンがまだ冥王に支配されておらず、魔術大国が神血の妨害を受けながらも繁栄を極めていた時代。
スヴァトラスが町を生み出し、イシアはうずうずと人の行く末を見ている。
キースも人に興味を持ち始めている。変化の前の時代の話。
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