忍者ブログ
一次創作ファンタジー小説中心サイト。 このサイトにある全ての小説の無断転載は禁止しています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

The last Songの一話です。
古い話で更新停止中です。

「そろそろ、頃合いね」
真夜中、屋の上にいた女が一人呟いた。
オレンジの髪が一まとめに上げられ、それは風になびく。
彼女の手には刀。
だけど、拳銃も持ち合わせていた。
彼女は飛び降りた。
飛び降りた下にある、歪みの穴を目指して。

The last Song 第一章 歪みから始まる物語

同時刻。
聖なる神に仕える組織、簡単に言う聖組織。
その本部で、一人の下っ端が呼び出された。
「何の御用ですか?」
「ああ、来たのね。遅いからあと少しで寝てしまうところだったわ」
「それはすみません。」
聖組織の主であるスィア・セイクリッドは、一つ欠伸をした。
「それじゃ、簡単に話しましょう。最近、現れた歪みの穴を調べて欲しいのです。出来れば解決まで」
「それは私ではなく、他の者の方がいいのでは…?」
下っ端であるヴァイスには、この事件は荷が重い。
少なくとも彼女はそう思っていた。
「あら、せっかく私が指名したのに投げ出そうって言うの?」
「い、いえ、そんなつもりは…」
スィアは嫌な笑みを浮かべる。
その表情を見たヴァイスはそれ以上は言えずに、言葉が詰まる。
スィアは詳細の書かれた書類をヴァイスに押し付けて笑った。
「なら、決まりね。行って来て下さいな」
「…わかりました」
これには敵わない。
ヴァイスは溜め息をつき、真夜中の街へと歩いた。

聖組織を出たヴァイスは、裏路地を目指すことにした。
だいたいの情報はそこで手に入るからである。
だが、先に見つけてしまった。
「歪みの穴…か」
その穴は、中を覗くことが出来ない暗い色の穴。
歪みのように黒い渦を巻いているように見えるからそう呼ばれていたりもする。
ふと上を見れば、その下に飛び降りようとした女がいた。
それを見たヴァイスは慌ててその女を止めようとした。
「おい待て!」
女はその声に驚いたのか足を止めた。
「ちょっと邪魔しないでよ!」
「その穴に入るつもりだったのか?」
歪みの穴は暗く先の見えない穴。
そんな恐怖のある穴に入ろうだなんてのは、いないはずだ。
「そーよ!」
だが、その女は即答で答えた。
「…正気?」
「正気よ。だから、邪魔しないでくれる?」
女はせっかく止めたのに、また入ろうとする。
だが止めた効果があったのか、女は上からまず穴の隣に降りてくれた。
そこでヴァイスを見た彼女は驚きの声を上げた。
「あんた、聖組織の回し者ね。どうりで私のことをとめるわけだ。」
「何か後ろめたいことでもあるのか」
「ないけど、私みたいなおかしい人を見たら止めるだろうとは思っていたわ」
「自覚してたわけだ。おかしいってのは」
「まぁね。」
何故か得意気に笑う。
「あんたは何?この穴でも調べようと思っていたの?」
「まぁ、そんな感じ」
「なら、一緒に行かない?私もこの穴を調べていたのよ」
女は手を差し伸べる。
「私はユーニス・マースィレス。悪くないと思うけど?」
ヴァイスは彼女の手を取った。
「ヴァイス・イクワリティだ。とりあえず、入ればいいのか?」
「そう。その先に重要人物がいるかもしれないからね」
重要人物?と疑問を投げかけると、ユーニスは持っていた刀を上げる。
「この刀に似合う人。」
「それはお前のものじゃなかったのか」
「私は銃専門なの。刀はさっぱり。」
そう言って、刀を下ろす。
よく見れば彼女の腰には拳銃が見える。
「じゃ、何故持っているんだ?」
「ちょっと事情があるのよ。この刀もただの刀じゃないしさ。」
「ただの刀じゃない…」
「これ以上話すのは後にしましょ。」
さっさと行きましょうよ。
ユーニスに導かれるがままに、穴に入った。

別の時空の研究室。
そこには、歪みの穴を作り出した人物であるビレイア・アルブライトが機械の画面を見つめていた。
その機械は自分が作り出した歪みの補正装置。
機械の明かりしかない暗い部屋だった。
「…やっぱり、考えた方がいいかしら?」
「どういう風にだ?」
ビレイアの背後から声がする。
彼女の友人であるリライア・スィンセリティは、ビレイアの隣に寄り、同じ画面を見つめていた。
「歪みの穴じゃ目立ちすぎる。これじゃいつ誰がこの異変に気付くかわからないわ」
真剣に画面を見つめて話すビレイア。
表情はあまり変わっていないので、よほど真剣に考えていたのだろう。
「もうほとんど気付いてると思うがな。聖なる組織とか」
リライアは呆れて答える。
こんなあからさまな異変に気付かない奴はいない。
「聖組織はいい。敵じゃないから。」
ビレイアは即答した。
「随分な自信だな。」
「まぁね」
ビレイアは、機械を操り始める。
「何をするつもりだ?」
「歪みを自然にしようと思うの。穴じゃなくて、通路…というのかしら?どこかの家の扉を利用させていただいたり、とかね。」
「今更隠そうとしてもな…。しかし、それでは一般人も巻き込まれるぞ」
リライアの心配をよそに、ビレイアはくすくす笑う。
「それこそ、研究しやすくなるじゃないの。」

ユーニス達が入った穴を最後に、歪みの穴は現れなくなった。
だが、突然の行方不明者が増えた。
 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
HN:
天草八津芽
性別:
女性
自己紹介:
BLでファンタジー小説が多いです。
ひっそりひそひそ書いてます。
ツイッター
メインアカウント(妄想ばかり)


オリキャラ紹介bot
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
P R

Copyright © [ 妄想の隠れ家 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]