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ワンダーアビスワールドの4話です。

「あ、唖奏君!」
手取さんがこちらに気付いて手を振る。
「ねぇ、唖奏君。時間ある?」
「あるけど…何?手取さん」

「最近、矛盾が多くて本当にイライラするのよ。最近多いのは小説よね。例えば恋愛面。想いは言葉にしないと伝わらないの?言葉にしなくても伝わるの?ねぇ、どうなのかな、唖奏君?」
手取さんの必死の説明を聞く。
僕はしばらく考える素振りをして答える。
「…臨機応変ってことじゃないかな。鈍い人には言葉にしないと伝わらないし、言葉を伝えるのが下手な人は伝えなければいい。」
それを聞いた手取さんは手をぽんと叩く。
「あ、そーかっ!なんか納得いかない部分もあるけどいーや。ありがと、唖奏君!」
どういたしまして、と言おうとしたら、手取さんが先に言いだす。
「あ、いつまでも唖奏君ってのはなんかやだなぁ。ねぇ、春刈君って呼んで良い?」
「いいですよ。」
「やったー!じゃあ、春刈君!私は行くね!じゃあね!」
手取さんは小さくぴょんと飛んでから、さっさと行ってしまった。

「矛盾ね…」
「うわっ!夢呟?」
後ろから、夢呟が現れる。
「矛盾は必然。矛盾のない世界なんてない。臨機応変って事が一番の回答かしら?でもね、矛盾を自然の物とするのが最もいいの。だって、矛盾は必然なんだもの。他にも矛盾は数多にあるわ。手取さんは全てに怒りを感じながら生きているのね。そのうち死ぬわよ、あの子。」
夢呟は一気に話すと、先に靴を下駄箱から出していた。

手取さんは、夢呟の言葉通りになった。
死因は自殺。
手取さんの悩みはずっと解決しなかったんだ。
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