忍者ブログ
一次創作ファンタジー小説中心サイト。 このサイトにある全ての小説の無断転載は禁止しています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ゆる苛め。
今日は撫でてやりたい気分だよ。



・サディスティックスイッチ
※瀬戸氷河
「氷河ー、いるー?」
恭二の部屋で、カードゲームをしていると、雨境が俺を呼んだ。
「んー?どうしたんだ?」
「鹿屋が呼んでるよー。研究室までこいってさ。」
「鹿屋さんが?」
カードを置いて立ち上がる。
「ってなわけで、氷河借りるね。恭二」
「おー、いいよー。」
何故か恭二に話を振る雨境。
「だから、なんで恭二に許可取るかな……?」
「だって、恭二のなんでしょ?」
呆れながら聞くと、さも常識だと言わんばかりに返された。
「食料としてだけどな……。俺の手札、山に入れといていいから。」
「りょーかーい」
芳示が俺を手札を見て、これはないわ……と呟いていたが、聞かなかった事にした。

「ああ、雨境さん、有り難うございます」
「いいって、いいって」
研究室には珍しく鹿屋さん以外誰もいなかった。
辺りを見回すと、鹿屋さんが先に答えを言う。
「ここの皆さんなら、実験に行きましたよ」
「あ、なるほど。で、鹿屋さん、用事って何ですか?」
鹿屋さんが、ゆっくりとこちらに歩くと、笑顔で俺の肩を軽く掴む。
「氷河に用事と言ったら、治癒術しかないだろ……?」
「ああ、そうですよねー……って、痛い痛い痛い痛い痛い」
鹿屋さんは笑顔のまま、肩を掴む力が強くなる。
プレッシャーがかかって怖い。
「ああっ」
途端に鹿屋さんの腕から、血が流れだす。
くらりと鹿屋さんはわざとらしくふらつき、椅子に座る。
「ちょ、あんな事するからですよ!傷だしてください!」
「ほら、さっさとして下さいよ。」
鹿屋さんが傷口を見せる。
俺はゆっくりとイメージして治癒術をかける。
「ああ、助かりましたよ。運の悪いことに毒矢に刺さってしまいましてね。」
「へぇ、珍しいね、鹿屋がそんなミスするなんて」
雨境がからかうように笑う。
「珍しい、ですか。まぁそうか。慣れてたはずだもんな。」
「また遺跡巡りですか?止めて下さいよ、魔術大国時代のものはろくなのないんですから」
「それは、君にとっては、だろ?」
「まぁ、そうですが」
「それじゃ、失礼しますよ」
振り返り研究室のドアに手を掛けると、背後から何かが頬を掠めた。
ドアには鹿屋さんの小刀が刺さっていた。
恐る恐る振り返ると、鹿屋さんが張り付いた笑顔のまま、こちらを見ていた。
背後に何やら怒りのオーラを感じるのは気のせいだろうか。
「まだ氷河に話があるんですよね」
「え、な、なんです、か?」
鹿屋さんがこちらに歩いてくる。
別の恐怖で動けない。
「この前、末沢と何処かの遺跡に行ったそうですねぇ?」
ドアに刺さった小刀が抜かれる。
「あ、はい、い、行きましたね……。」
この前、末沢さんにとある遺跡に連れていかれた。
神血の魔力が必要だった、という理由で呼ばれたが、結局大した仕掛けもなく、物もなく、帰ったはずだ。
「そ、それがどうかしました……?」
恐る恐る聞くと、小刀を喉元に突き付けられる。
「ひぃっ!」
「いーえ、別に……。ただね、俺は一度も末沢に誘われて遺跡に行ったことが無いんですよ……。一度も、ですよ」
鹿屋さんのオーラが、怒りから嫉妬に変わってる気がするなー……。
「なのに、末沢は貴方や神谷さんは誘うんですよ。何故ですかね……?」
「か、鹿屋さん!?俺は、利用されただけなんですよ!?神谷さんだって、あれでも魔族だから利用するつもりで……」
更に小刀を寸前まで突き付けられただけだった。
「ちょっ、と……?」
じわりと後ずさる。
鹿屋さんの目が怖い。怖すぎる。
だが、俺は既にドアの近くにいたので、すぐに追い詰められた。
バン!と思い切りドアを叩く鹿屋さん。
いわば押されてるシチュエーションである。
喉元寸前に突き付けられているナイフがなければ。
「ひぃぃっ!」
音に反応してびくりと肩を震わせる俺を見て、鹿屋さんが妖しく笑う。
「だったら、鍵がなければ末沢は一人で行ってしまう、と言う事でしょう……。それでは、寂しいじゃないですか……なぁ?」
「そ、そう、ですね……」
「俺だって、たまには助けに行くんじゃなくて、事前に護衛として付いていきたいんだよ……。なのに、末沢は分からない、分かってくれないんだよねぇ……」
「あの、鹿屋さん、洗脳されてから自分に正直になってません……?」
鹿屋さんが無言でさらに追い詰めてきただけだった。
「……ごめんなさい」
「そういえば、君もひやひやする程、周りを巻き込んでんじゃないですか……。止めて下さいよ、末沢じゃあるまいし。」
俺の場合は、火種作ってんじゃなくて、利用されてんだけどなー……。
「あ、の、鹿屋さん」
ぷつり、と針の刺さったような痛みがした。
あ、と気の抜けた声がしたが、すぐに鹿屋さんが小刀を構え、くるりと回す。
「少しは、反省したら、どうですか……ね!」
「っ!」
小刀の切っ先がこちらに来る。
だが、それは俺を掠めドアに刺さる。
「反省しました?」
鹿屋さんの明るい声。
緊張の糸が切れて、へなりと座り込んだ。
切っ先が刺さった首筋を押さえながら、息を吐く。
「鹿屋さん、こえー……」
「いや、見てるこっちも怖かった」
雨境も、冷や汗をかいていたようだ。
顔が引きつっている。
「いや、なかなかいい反応するね、氷河。盛り上がってつい刺しちゃった」
「――痛いんですからね、これ」
集中して治癒術をかける。
押さえた腕を離すと、もう傷が無い。
「あ、そうだ。氷河に雨境さん。先程の毒矢の傷は末沢には言わないでくれ。」
「なんでなんで?」
雨境が人の悪い顔をする。
「こっそり庇った傷なんだ。しかも、ばれてない。これが末沢に知れたら心配させちゃうので。」
「分かりました。それなら、言わないですよ。」
安心しきったからか、すっと立ち上がれた。
「助かったよ、氷河。」
「いえ、俺の役目ですから。」

-----------
長くなっちまったー。
零雨様からのリクエストです。
サディスト鹿屋を書いてたら、ギャグからシリアスになっていた。

一応ギャグです、これ。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
» 無題
ありがとうございます!
わーい!鹿屋さん大好き!
現実の嫉妬は醜いですけど、二次元はどうしてこう美味しいんでしょうね。もぐもぐ!
人目を気にしない鹿屋さんは根っからのサディストですね!

虐められる氷河も萌えです。押し倒される氷河程様になる物はありませんね、ウフフ!
青藍零雨 2012/06/05(Tue)23:13:39 編集
» 無題
コメントとリクエスト有り難うございます。


ギャグキャラっぽくなってしまった鹿屋さんですが、楽しんでいただけたら何よりです。
やっぱりサディスト。

氷河もギャグみたいな弄られ方は、初めてですね。
受けが様になるのが認められてきて、嬉しいですね!

では、またいつか。
早宮千里 2012/06/05(Tue)23:33:49 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
プロフィール
HN:
天草八津芽
性別:
女性
自己紹介:
BLでファンタジー小説が多いです。
ひっそりひそひそ書いてます。
ツイッター
メインアカウント(妄想ばかり)


オリキャラ紹介bot
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
P R

Copyright © [ 妄想の隠れ家 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]