零雨様より、氷河と芳示の話を頂きました！

おいおい、テンプレが通じちまうよ。

「実験、するよー」
その魔術師は軽い調子で言った。
「濃硫酸。ちょびっとね」
ソイツは手に持っていた駒込ピペットの中身をぽたぽたと掛けた。量にするとほんの数ml程度だろう、そんな数滴の硫酸が太股のズボンに掛かる。
「ッうあッ！！」
たかが数滴、だがその数滴で充分だった。硫酸はズボンを焼き、穴を空け、皮膚を焼いた。
「ねえ、痛い？痛い？」
動物を見てはしゃぐ子供のような感じで魔術師は聞いてくる。
痛いに決まってる。服を焼く程の液体が皮膚に掛かって痛くない訳がない。硫酸が皮膚に沈み込むようにじわじわと痛みが食い込んで広がっていく。
「まー、ちょっとだけだから怪我したーってレベルだよね。我慢出来るよー」
言いつつ、ピペットのゴム部分を抑えていた手を話す。中に溜まっていた濃硫酸が落ちてきて、ぱしゃりと。
「――ッ、ああッ！！」
喘ぎ声のような、情けない声が出た。じわじわと。肉を蝕まれていくような感覚。拘束されて足が見えないが、きっと焼けただれているなんてモンじゃないだろう。
「『万が一触れてしまった時は、すぐに水で洗い流しましょう』だっけ。学校の実験とかで言われるよねー知らないけど」
ピペットを置いた魔術師は俺の焼けた足を顔を近付けて観察している。
「うん、いいんじゃない？」
「何が……だよ」
「え？神血への拷問に」
ヒュッと空気が喉を通り、息が詰まる。神血、つまり氷河が関係しているなんて、俺は知らない。
「神血をね、捕まえちゃったんだ！でも死なれたら困るじゃん？だから先に君で実験して、死なないか確認しようと思ってさー」
「お、まえ……ッ！」
足の痛みも無視して俺は暴れたが、当然そんなことで拘束は外れるはずもなく、ガシャガシャと空しく音が響くだけだった。
「氷河に何かしたらッ、殺す……ッ！顔に硫酸かけて！口にブチ込んでッ！ブッ殺してやるッ！！」
口を開けて俺を見ていた魔術師は一瞬の間を空けて爆笑し始めた。
「何それ……ッ！ウケるー！」
「な、んだよ……」
「いーよ、神血には手出さないであげる」
不自然な程にピタリと笑うのを止めたソイツはそう言った。
「そのかわり、今君が言ったことを神血の前で君がやってよ」
「は……？」
「だからー、神血の前で君が自ら硫酸飲めよってこと」
ふふ、と再び魔術師は笑い始めた。
「そしたら、神血への拷問は止めてあげる」
俺は魔術師の目をじっと見る。何を考えているか分からない目だ。だが、断れば氷河へ拷問が決まる。コイツが約束を守るなんて１ミリも信じられないが、そうは言っても俺が硫酸を飲めば、最低でも数日は拷問が延びるだろう。
「……分かった」
長考の末に頷けば、口が裂けるかと思うほどに魔術師はニンマリと笑う。
「おっけぇー、交渉成立」
そう言うや否や、両手が伸びてきて顔を固定される。そのまま魔術師の顔が近付いてきて、唇が触れ合った。
「！？」
俺は抵抗もできずに固まった。それを良いことに、そのままニュル、と口の中に生暖かい舌が入って来て、口内を這い回る。俺、キャラ的には襲う側だったのに、と今どうでも良いことが頭によぎった。
「……っ、は、んぅ……」
妙に長い舌が奥歯から犬歯、前歯まで全ての歯の輪郭をなぞる様に舐める。歯茎に舌が当たる度、ゾクゾクと全身を妙な感覚が襲う。
「っ、ふ、あ……」
ゆっくりと唇が離れ、誘うような魔術師の顔が歪んで笑う。
「やらしー。何物欲しそうな顔してんの？」
「ち、が……」
「えろーい。ちょっと起ってるー」
「何、すんだ……ッ」
「え？ディープキスってヤツだけど」
トボけた顔をする魔術師に余計腹が立った。
「ちげーよ！なんでそんな事、すんだっつーのッ！」
「神血の代わりになんてくれるんでしょ？」
「あ？」
「神血の代わり、だよー。神血に手を出さない代わりに、神血にやろーと思ってた拷問、全部やってあげる」
「……話が、違うだろ？」
「違くなーい」
アハハ、と魔術師は笑う。
「楽しみにしててよねー、神血の代わりの実験体君」
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バッドエンドの始まり。
というわけで、苛められる芳示を頂きました！

虐めと同時に微えろも果たす。
いいよね、そそるよね。