もうフルーツタルトは毒々しいよ！
華やかじゃないよ！



※痛いの注意！

・ブレイクマインドの魔術師
※瀬戸氷河
「確かによく眠れたのは、事実だが、まさかここまで痛め付けていたとはね。君は仕事熱心な魔術師だね」
魔術師の声がした。
「ぅ……っ」
昨夜は、忍者と名乗る男に為す術もなくやられて、気絶した。
ゆっくりと起き上がると、魔術師がくすりと笑う。
「起きたかな？まぁ、ここには昼も夜もないから、分からないかもしれないがね。」
「恭二は……！」
魔術師の向こうにいる恭二を見やる。
まだ目覚めていないようで、ぴくりとも動かない。
「君の治癒術は未熟だ。何せ届く距離が短過ぎる。触れていないと治癒術は使えないのだろう？だから、離したのだけどね。」
「くそ……」
魔術師に言われると腹が立つ。
「さて、自分に使われるのも困るから、少し細工をしよう。」
魔術師が、俺の牢に入り、魔方陣を描く。
描きながら男は、話をする。
「魔力を乱す魔方陣だ。魔術を扱おうとすれば、電流が流れるかのように君に刺さるだろう。」
描き終わり、牢から出る魔術師。
また律儀に鍵を掛けられる。
そして、恭二を見る。
「苦しいかい？血が欲しいかい？」
「血……？くれんの？」
「やらないよ。先に実験からだ。まずは……耐久性からかな。頼むよ。」
魔術師が男に注射器を渡す。
男はすぐにそれを恭二の腕に差す。
「ぅ……ぐっ……！」
恭二が苦しそうに声を上げる。
「恭二！」
「今のは、毒だよ。神血は毒に耐性があると言うが、彼はどうかな？」
「てめぇ……！」
「君は自分の無力さを呪いたまえ。さて、気分は如何かな？」
「ぐ、ぅ……っ、は……！」
恭二は、言葉を出せない程、苦しんでいた。
「ふむ、思った以上だな。やはり人間か。では、次は……」
魔術師がナイフを取り出す。
「これは教会から奪ったナイフだ。聖なるナイフ、とでも言うのだろうかね。さて、吸血鬼は神血の、光の魔力に弱いというのは、本当かな？」
「や、やめろ！それは……っ！」
「そう、君の力で彼を滅ぼせるかの実験だよ。」
そう笑い、魔術師は恭二の胸にナイフを突き刺す。
「ああぁああっ！」
恭二が声を上げる。
刺された所は何故か焼けていた。
「ぐ、っ……ぅ、ぁああ！」
「そうか、やはり神血の魔力に弱いのか。喜びたまえよ、君でもこの程度の吸血鬼は滅ぼせるぞ」
恭二の苦しそうな声を聞いていられなくなってきた。
俺は、もう限界だった。
「やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ……っ！」
「ん？」
「なんで、恭二なんだよ！俺だったらいくらでも堪えたのに！なんで、俺じゃなくて、恭二なんだよ……っ！」
「ふふ、悔しいかな？」
「なんで俺はあいつを治して、やれないん、だよ……っ。もう恭二が、苦しむ所は、見たくねぇ……！」
届かない手を伸ばす。
そして、治癒術をかけようと魔力を込める。
「く、ぅっ……！」
魔方陣の力で、魔力が乱される。
治癒術はそもそも発動しない。
そんなことをしている間にも、恭二は苦しそうに叫ぶ。
「ぅ……っ、くそっ……」
「はははは、君の弱点が見えてきたね。やはり君は他人の傷に弱い！己ばかりが傷付いたから！痛みが分かってしまうのだね！」
魔術師の高笑い。
そんなに耳に入らない。
「なぁ、傷付けるなら俺にしろよ！傷付くのも、斬られるのも、刺されるのも、殴られるのも、毒に冒されるのも、全部、俺なら平気だから……！」
「断る。」
一転して、冷徹な声。
「な……っ！」
「君には何もしないよ。ただ見てもらうだけだ。」
「そんなの……っ、耐えられるかよ！」
「これは実験なのだから、耐えられなくて当然だろう？お前は嘆くだけだ。」
「くそ……っ！」
再び檻を蹴り飛ばそうとする。
だが、やはり何もならない。
「きょう、じ……っ！」
何も出来ない。
ただ恭二が、実験体にされるのを見てるだけ。
悔しさから涙が溢れる。
「まだ、いけるね？」
その問い掛けはどちらに向けられたのか。
「再開しよう、実験を」

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壊れ始めた氷河。
次は恭二を壊しますよ。