悲しいくらいに痛々しく。

※痛いの注意！

・ブレイクマインドの魔術師
※瀬戸氷河
数日が経った。
恭二は奇妙な実験を繰り返され、斬られ、刺され、殴られ、蝕まれ、弄ばれた。
恭二はもはや痛みに耐え切れず叫び、喘ぐのみで、俺はそれを何も出来ないまま見ているだけ。
傷だけが増えていく恭二を見ていられなかった。
魔術師が、俺達を見てくすりと笑う。
「さて、君たちも壊れてきたし、そろそろ頃合いだろう。吸血鬼、血が欲しいだろう？」
「……っ」
恭二がぴくりと反応する。
恭二は吸血鬼だから血を定期的に求める。
ただそれが、吸血鬼よりも長いだけで、血がなければ飢えてしまうらしい。
「ふふ、半吸血鬼だと聞いたから、吸血鬼の倍くらいはお預け期間を用意してみたのだが、正解だったかな。血をやろう。吸血鬼。」
「ほんと、に？」
「ああ、目の前の神血を食らうといいよ。」
と、恭二の檻の扉を開ける。
そして、鎖を外した。
「――――ッ！」
外された瞬間、恭二が勢いよく飛び、俺の牢の檻を壊す。
魔術師があまりの威力に驚く。
その勢いのまま、体当たりされ、壁に叩きつけられた。
「ぅ……きょう、じ……っ」
恭二の目が恐ろしい。
乾いた衝動を露にした恭二は、始めてみる。
そして、俺の首筋に噛み付いた。
「ぐあぁっ！」
いつもの小さな痛みではない、思い切り噛み付かれた痛み。
しかし、それはすぐに止まる。
恭二が、蒼白な表情をしていた。
「ごめん……ごめんっ、氷河……！」
「恭二……？」
「俺、今、氷河を傷付けた……！」
恭二が、俺を強く抱き寄せる。
「ごめん、ほんと、ごめん……」
「恭二は、今まで気使ってたわけ？」
「ああ、慎重に噛み付いてたよ。氷河が痛くないように、ってさ……！」
「それでも、ちょっと痛かったけどな」
「でも、さっきみたいに噛み付くよりは……いいじゃん。」
俺は恭二の傷だらけな身体を治そうと治癒術を使う。
「くぁ、っ……！」
電流が流れるかのような痛み。
治癒術は、恭二を完全には治さない。
「くそっ、まだ、いけるだろ……っ！」
「氷河？」
さらに魔力を強める。
その分、魔方陣で強い力が返ってくる。
「ぐ……っ！」
その力に耐えて、恭二を治す。
「な、何してんの、氷河！」
恭二が慌てて、離れようとする。
「さっきの恭二、見てるだけだったからな……。」
「そんなの……！」
「恭二が、あんな事されて見てるだけなんて、耐えられねぇよ！」
思わず声を荒げてしまう。
「なぁ、恭二。まだ血足りないよな……？」
「え」
「おい、魔術師。ナイフ貸せ」
「これでよければ」
魔術師がナイフを投げ、壁に刺す。
寄越されたナイフは、吸血鬼の弱点である聖なるナイフ。
「恭二、ちょっと離れてくれ」
「あ、ああ……」
壁に刺さったナイフを手に取る。
「吸血鬼でも討つのかな？」
魔術師の質問を、嘲笑う。
「いーや、違うな。――こうすんだよ！」
俺は、ナイフを肩に刺す。
「氷河！何してんだよっ！？」
「く……っ！」
肩口からは血が流れだす。
「へ、へへ……恭二、いいよ。乾いてんだろ？」
「氷河、なんで……」
「きょう、じだけが、傷付くのは、見て、られない、から……っ」
ぐらりと視界が歪む。
「はははは！先程のナイフは、聖なるナイフなんかじゃないよ！吸血鬼に与えた毒を塗ったものだ！」
「はっ、だから、苦しいのか……！」
「余裕ぶるなよ、貴様が！貴様のその思考は壊れている！」
「が、は……っ」
口から血を吐き出す。
恭二が心配そうに叫ぶ。
「氷河っ」
「ああ、いいよ、こんなの治るから――」
「違う、違う、違う！俺も同じだから！氷河が傷付くのは見たくないから！安易に傷付くなよ……！」
「わりぃ、な、それ聞けないかも……ってか、早く血を吸えって」
「……氷河」
先程よりも、強く抱きしめられる。
少し痛いほどに。
「俺、二度と氷河をこんな目にあわせないから」

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氷河が痛々しいわ！
自分のせいだけどな！