本編っぽい妄想。

熱冷めやらぬ愛憎愛情偽造。

・残酷宣告
※瀬戸氷河
「……違う」
俺は、柊さんに教えられた図書倉庫に強引に入った。
管理者である夜桜さんと残階さんは、始めは何やら理由をつけて追い出そうとしていたが、柊の名前を出したとたんにすんなり通してくれた。
地下室の奥で大量の本を読み捨てていた。
「これも、違う……」
本を戻す。ここまで来るとノートにまとめただけの資料も増えてくる。
「投げ捨てないだけいいけど、何を探してるんですー？」
残階さんが、寝転がりながらこちらに質問する。
「神血って、ご存知ですか？」
俺は本を読み漁りながら答える。
「知ってますよ。でも、そこに神血の資料はありませんよ？」
読んでいた本をばたんと閉じる。
残階さんが、ある本の山を指差す。
「あそこ、ですよ？」
「分類表示が全く機能してねぇんだな！」
確かに棚に張ってある分類表示には、ここが神血とあったのに。
苛立ちながらも、本の山に向かう。
「夜桜に頼んだんですけどね……」
残階さんの呆れたようなため息。
無視して山からある程度本を抜き取る。
「……机、借りる！」
「どーぞ。あ、お茶いれてきてくれません？」
「てめぇでやれや！」
「あははは」
時折残階さんが、口を挟む。
何なんだ、苛々する。
「……違う、これも違う！」
あの本の山は全て実験結果しか書かれていない。
違う、俺はそんなものをが知りたいんじゃない。
積み上げた本を払い落とし、立ち上がる。
「本当にこんな資料しかねぇのか！？」
苛立ちを当てるように残階さんに訪ねる。
残階さんは、冷静に問いかけた。
「瀬戸、氷河さんでしたね？何をそんなに焦っているのです？」
「焦ってなんか……！つか、答えになってねぇだろ！」
「あなたの質問には先程答えました。私は、何かの焦りか闇雲にここを漁っているあなたの理由が知りたい。」
一息ついて答える。
「……神、というのは実在する。俺はその代替えで、人と天使どちらかの陰謀により利用される生け贄、だと知った。……本当にそれだけの理由で俺はあれだけの人間－－いや、魔術師に狙われるのか？」
「ふむ、なるほど。賢い方だ。エリュシオンの事件から、本部には関わってきましたが、貴方のような人は滅多に来なかった。」
残階さんが、満足そうに笑う。
「その答えは、本にはありません。ですが、答えましょう。」
「いいのか？」
「ええ。答えだけを申しますと、貴方はそれだけの理由でしか襲われませんよ。」
「そう、なのか……。」
落ち込む間もなく、残階さんが囁く。
「そうですねぇ、もう少し話をいたしましょう。ここからは、内緒話ですよ」
そして残階さんが、話した内容は残酷なものだった。
聞けばきくほど、俺のなかでなにかが壊れる。
耐えきれず一歩後ずさる。ぐっと堪えるように拳を握る。
俺はどんな表情をしていただろうか。
「……ん、なの、うそだろ……」
聞き終えて始めに呟いた言葉は、うわずっていたかもしれない。
すがるような声。
しかし、残階さんは答える。
「いえ、全て真実ですよ」
「……っ！」
俺は、階段をかけ上がる。
そして、一階の夜桜を無視して外に出る。
森の中を走っていた。
先程の話が受け入れられずに、逃げるように。
途中、誰かを見掛けた。
「どけよ！」
突き飛ばそうとした。
しかし、その手を捕まれた。
「氷河さん？」
「あ、すま……っ」
一番会いたくないやつが目の前にいた。
亜須磨は、空の関係者だから。

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次回、亜須磨が主人公になる。

焦って必死に本を読み漁る氷河が見たかった。
何かに追われ始めた。