魔術師ブーム。
きっとうずまくこの気持ち。

・サーカスドールの魔術師
※瀬戸氷河
結局、子供をつれて地下室を歩くことになった。
途中で逃がせるのならそうしたいが、まだ出口は見付からない。
戻るにも時間が惜しい。
所々に血の跡や血のついた道具を見かける度に気持ち悪くなる。
幸い子供は、恭二についていくので必死そうだから見えていないようだ。
「お、扉だ」
恭二が扉を開ける。
急にスポットライトの光が当たる。
「ようこそ！我がサーカスへ！」
ベタなセリフと共に、魔術師が舞台上に立つ。
「さて、君達がここにきた理由は分かっている。私を殺すのだろう？」
更に舞台に光が指す。
そこには、虚ろな目をした子供が並んでいた。
「あ、ゆみちゃん……」
子供が、ある女の子を指差す。
確か藤野さんの被害者リストにあった先原佑実だ。
友達だろうか。
まだこの子は、彼女の異変をわかっていない。
魔術師が子供に気づき、こちらに歩いてきた。
「ん、まだ改造していない子供がいるとは……。今日の分はすべてやったはずだがな。まぁいい、その子を返してもらおう」
魔術師の手が、子供に伸びる。
それを俺が払う。
「返してもらうは、こっちのセリフだろ！」
「そうかもしれないね」
瞬時に魔術師が消える。
ふと前を見れば舞台にたっていた。
「さて、ショーといくか。楽しみたまえ、今日が第16公演だ！」
と、また魔術師が消える。
虚ろな目をした子供が、ナイフやらダガーやらを構える。
「氷河はそいつ見てろ！」
「絶対そこから動いちゃダメだよ！」
「あ、ずりぃぞ！」
芳示と丙が俺をおいて、舞台に向かう。
この子供を利用して前線に出させないつもりだろう。
実際、ズボンの裾を子供に掴まれているから動けないのだが。
「大丈夫だから、な？」
安心させるように、言葉にしてみる。
「うん……」
子供は、小さく頷いた。
「だから、あんまり前見るな。あれは－－見ていいものじゃない」
子供が目を伏せる。
頭を軽く撫でてやる。
そういえば、恭二はどこにいった？
辺りを見回しているが、どこにもいない。
上をみると、恭二と魔術師が舞台の真上にいた。
天井の狭い足場を器用に渡っていた。
だが、急に魔術師が消える。
「氷河っ！後ろ！」
「……っ！」
上から恭二が叫ぶ。
子供が逃げ出す。
振り返ると、魔術師が子供を捕らえようとしていた。
咄嗟に引き抜き銃口をつきつける。
「本当に趣味が悪いな」
「私は、子供が好きなんだよ。それじゃダメかな？」
「歪んでるな」
魔術師から隠れるように、子供が俺の後ろに回る。
「嫌われた気がするな」
「本当に嫌われてんだって」
トリガーを引こうとする。
子供が俺の手を握る。
「その甘さに感謝しよう」
魔術師が消えた。
「逃げられたか！」
すぐに探そうとすると、手を引かれた。
「おにいちゃん、こわいよ……」
「……ごめん、な」
それしか言葉に出来ず、握り返すことしか出来ない。
「もういい！あの子を殺したって構わない！あの男を狙え！」
魔術師が叫ぶ。
すると、虚ろな目をした子供が一斉にこちらを向く。
「ゆみちゃん……？」
子供が気づいてしまった。
先原佑実がすでに改造されたことに。
自分もああなるかもしれないということに。
「う、うぅっ……ゆみ、ちゃん……？」
先原佑実が、こちらにナイフを向ける。
「…………」
やはり改造されたせいか、なにも語らぬまま斬りかかる。
「ちょっと離れろ！」
子供を突き放す。
そして、先原佑実のナイフを奪い取ろうとする。
しかし、相手は子供だ。
加減もわかんねぇし背が低いからな、うまくいくか……？
迷いなく正確にこちらを刺そうと向かってくる。
「く、っ……！」
足をかすりはしたが、なんとかナイフを持つ腕を取り、捨てさせる。
そして、先原佑実の額に触れる。
「氷河！何してやがる！？」
「これは賭け、だ……！」
少女に治癒術をかけてみた。

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まだ続くね！