ハートフルな話の続き。

・亡霊と幻影の異世界
※瀬戸氷河
どんどん風景が変わっていく。
この世界は、滅茶苦茶な幻影だ。
それでいて、俺の知らない地形と知っている地形が混ざる。
異世界でもあるのか。

湖を抜けるとおぞましい赤色をした紅い海。
瀬神さんの姿をした仮面の男がいた。
それを見ないように走り抜ける。
紅い海を抜けると、静かな草原となる。
そこに一人の少女がいた。
恐らくこの異世界を作り出したのは、彼女だ。
「寂しい、一人は寂しいよ……。」
「まて……！」
俺が少女の肩を掴もうとすると、少女は消えてしまった。
「一人は……さみしいに決まってんだろ……！」
闇雲に先に進む。

先はどんどん暗くなる。
暗い森に、奇妙な笑い声。
耳を塞ぎたくなる。
芳示と丙までも仮面を被っている。
どいつもこいつも……！
延々と続く笑い声。
まるで自分がからかわれているみたいだ。
一人だから、孤独だから……？
「……うるせぇんだよ！」
怖さに耐えきれずに叫ぶ。
嘲笑うように森の笑い声が更に煩くなる。
「く、っ……！」
耳を塞ぎ、踞る。
うるさいうるさいうるさい……。
俺は、一人じゃないんだよ……。
おれ、は……ひとりじゃ、孤独じゃない……！
「氷河」
「え？」
顔をあげると、仮面をした恭二が俺に手を伸ばしている。
「……きょう、じ……？」
よくみると仮面にヒビが入っている。
恐る恐る恭二の手をとる。
さらに仮面にヒビが入る。
恭二は俺を引っ張って立ち上がらせる。
そして、抱き締められた。
恭二の表情が途端に鮮明になる。
「恭二……」
「ずーっと、探したんだぞ……！」
仮面が崩れ落ちる音が二つ。
俺は、恭二を強く抱き返す。
「ひょうが……？」
「ずっと……一人だったんだよ……！」
「んな、泣かなくてもいいんだぜ？」
「泣いてすらいねーよ！」
多くの人の表情が鮮明に思い浮かぶ。
そして、少女の声がフラッシュバックする。
きっとあの子は……！
恭二から離れ、奥をめざし走り出す。
恭二が俺を止める声がしたが、今は耳に入らない。
暗い森に一筋の光。
森を抜けると静かな草原だった。
少女が振り返る。
「おにいちゃん……なんで……？」
少女が涙を流す。
俺は、ゆっくりと近付き彼女の目線に合わせて座る。
「一人は……寂しいよ……」
そういって泣き始めた少女の頭を撫でる。
「寂しいに……決まってんだろ……。」
「……誰もいない……わたしは、一人きり……」
「しばらく、俺がいてやるから。それなら……一人にならねぇだろ」
少女は、頷いた。
「おにいちゃんは……どうして仮面を剥がせたの？」
「俺に……仮面があったのか？」
「仮面は、演技の仮面。偽りの姿。誰にだってある心の距離感。おにいちゃんだって、例外じゃないよ」
「そう、か……。」
しばらく間をおいて答えた。
「俺の仮面を剥がしたのは恭二だ。恭二が俺を救ってくれたから、俺はここにいられる。」
「おにいちゃんは……救われたんだね……」
少女の体が薄くなる。
「っ、おい！」
「 」
少女は青い光となる。
少女が最後にいった言葉が耳に残る。
すぐに白い光に包まれる。

「氷河！」
「っえ？」
目をさますと、洞窟で唯一光があたる草の上。
振り返ると、恭二と芳示がいた。
恭二が俺に近づく。
「どこいってたんだよ。心配したぞ」
「ああ……悪いな」
ゆっくりと立ち上がる。
「しかし、よくこんなことまで来たな……」
芳示は辺りを見回す。
小さなフロアだ。
「……なんでだろうな」
「わかんねーの？」
「ああ、わかんない」
「使えねーな」
芳示が舌打ちをする。
それでも、苛立ちはしなかった。
「まぁ、行こうぜ氷河」
「ああ」
俺は恭二の手を握る。
「ほら、行くぞ。」
「え？あ、氷河？」
戸惑う恭二。
俺はおもわずくすりと笑う。

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ハートフル！
超いい話だろ！

と思うよ。