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息抜きの話。



・スリープティアの魔術師
※イシア
日がまだ出ているというのに、魔物討伐本部は静かだった。
原因は分かりやすい。
歌声が聞こえるからだ。
あれは、おそらくセイレーンという魔物だろう。
霊的なもののはずだったが、どうしてここまではっきりと存在が見えるのだろうか。
本部の屋上に女性が見える。
「私は、あれを探せばいいわけだな」
大剣を携え、私は勝手に本部へと入る。
何度か入ったこともあるし、大丈夫だろう。

ラウンジで、数人が寝ていた。
あの歌は人間を眠らせる歌だ。
彼らは、半分が人間でないものだろう。
だからこそ、ここまで来られたのだ。
半分魔族に、半分妖怪、半分吸血鬼。
それに神血。
私は、あまり彼らの名前を知らない。
半分魔族、神谷慎二と亜須磨が話していた噂の神血、瀬戸氷河。
これぐらいのものだ。
瀬戸氷河の方は、半分吸血鬼に抱き着かれながら眠っている。
亜須磨は彼を硝子のような人だと言っていたな。
その意味が半分理解できた。
彼は顔立ちがいい。
それ故に美しく見えるのだろう。
吸血鬼がからかうように言っていた姫君……。
まぁ、ふさわしくないというわけでもないようだ。
さて、屋上を目指そう。
途中、半分魔物である伊塚君が眠っていた。
彼は子供だから、部屋を飛び出すので精一杯だったのだろう。

屋上に出ると、女性が歌を歌っていた。
あれは、セイレーンではなかった。
セイレーンを取り込んだ人間。
魔術師、というものだろうな。
「どうして、貴方は無事なの?」
歌を止め、彼女が私に問いかける。
「私は魔族だ。そんな人間に向けた歌などは効きはしない」
「そう……魔族なんていたのね」
彼女が寂しげに語り始める。
「私ね……彼が殺されてしまったの……いなくなってしまったのよ。それでね、私は同じ思いをした子を飲み込んだの。セイレーン……。そんな名前だったわ。魔物を取り込んだ魔術師は、魔術師の中でも優秀だとかいうけど、私にはそんなのどうでもよかった。彼は戻ってこないもの。」
「それで歌っていたのか?」
「一番賑やかな場所でね……うふふ、みんな気持ちよさそうに寝ているじゃない。」
「そうだな。お前は魔術師の中でも最も人間に強く、最も無害なのだろうな。」
「ええ、私は歌っているだけだもの」
「だがな」
私は、大剣を彼女に向ける。
「異常を引き起こしてしまうのが問題なんだよ。」
そして、抵抗もしない彼女を切り捨てる。
崩れ落ちる彼女を拾い、下に降りる。
後始末までするさ。そこまで雑ではない。

彼女を抱え、ラウンジに戻る。

まだ本部は寝静まっている。
人間に対しては協力だからな。
目が覚めることには、日が落ちているだろう。
しかし、銃口を向けられた。
神血。瀬戸氷河。
私は、飽きれつつも彼に聞いた。
「いきなりそれを向けるとは、余程警戒心があるのだな」
彼は、冷たい目をこちらに向ける。
慣れているのかもしれないな、慣れ過ぎていそうだ。
「何者だ」
「魔族。」
私は、すぐにそう答えた。
そして、からかうように聞いた。
「君が噂の神血だろう?」
「だったらなんだよ」
表情を変えずに答える瀬戸氷河。
思わず笑ってしまった。
硝子、ガラスな。
面白いことをいうよ、亜須磨は。
刺さりそうじゃないか。
「ふふふ、亜須磨が話していた通りの人だな。」
「亜須磨?」
亜須磨の名を出すと、瀬戸氷河は驚いたようで少し動揺した。
「そう、私は亜須磨の友達なんだ。そうだな、エリュシオンが変わる前から、彼に興味を持っていた」
「随分古い話だな」
皮肉気に彼は答える。
それも面白い。
「そうだな、一年になりそうだ。しかし、私はいつまで君にそれを突きつけられていればいいのかな?」
「そんなの疑いが晴れるまでだろ。まだあんたの目的を知らない。それを利用して俺を狙ってきたという線がある」
ここまで警戒されると、呆れるしかないな。
亜須磨の名を出したのに、まだ銃口は降ろされない。
「魔族は、鬼ではないが嘘はつかない。それに手負いの君をさらうほど卑怯でもない」
「……」
瀬戸氷河は、鋭い目を向ける。
ため息を吐くしかない。
「はぁ。君は、警戒心が強いな。君が守れるものなんてほんの些細なものだけだろうに。」
「その、些細なものが俺には大事なんだよ」
強く言う。
はっきりとした言葉で。
強い人間なのかもしれない。
硝子には少し強度があるからな。
「面白い。例え私が相手でもか」
「ああ。あんたが敵なら撃ち抜く」
迷いなく答える。
私はくすりと笑った。
彼は面白い人間だ。
「そうかそうか。これは、亜須磨も大変だろうな。」
瀬戸氷河は、不思議そうな顔をしたが、気づかないのは当人だけだ。
亜須磨は、彼の事を硝子のようだといった。
それは、美しいからでも強いからでもない。
壊れそうなほど脆いからだ。
今の状態では、その脆さを見ることはないが、亜須磨は大変だと笑っていた。
彼を壊さないようにするのは、難しいだろう。
すでにひびが入り壊れかけている。
「さて、今は深夜だ。君は、人間らしく寝てるといい」
彼の背後に回り、手刀を首にあてる。
彼は、すとんと眠りに落ちる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
魔族から見る彼。
本部が解決しない魔術師事件。

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