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エリュシオン一話です。

「楽園なんて本当にあると思いますか?」
俺は隊員全員に聞いてみた。
思い思いの答えが返ってくる。
「俺はないと思うなあ。」
「俺はあったらいいと思う。」
「俺はあると思う。」
「私はー…お兄ちゃんがあるって言うなら、あると思います。」
「僕はないと思いますよ。」
「俺はあったほうが楽しいと思うねぇ。」
「俺も留川に同意するな。」
「俺は…ないと思いたいです。」
「僕はあると思いますよ!」
「俺はないと思いますね。」
「俺はあると思うぜー?」
「ええっと…あるといいですねー…」
「そういうお前は?」
「…俺はあると思います。望んだ楽園が何処かに。」

俺達がした希望だけの会話。
今この世界の楽園…エリュシオンは、魔物の巣で人間の敵なのだから。


※井是 黒束
「本当に行くんですか…?」
「行くに決まってるじゃないですか。」
目の前にあるのは、昔エリュシオンを研究した機関の研究所。
古びた洋館のようで、近寄りがたい雰囲気である。
菅谷さんが言うには、この奥でエリュシオンのデータを探すのが任務らしいが、俺は嫌だった。
中が怖そうだから。
怖がる俺を見かねて、菅谷さんが溜め息をつく。
「そりゃ、俺だって行きたくないですよ。」
「そうですよね。上から…いや、白河さん直々の命令ですもんね…。」
「井是さんも分かってるじゃないですか。」
白河さんの命令は、怖いものだ。
時間がかかればかかる程、何をされるか分からない。
このホラー屋敷よりも恐ろしい。
意を決して中に入り込む。
と思ったが。
「菅谷さん、先どうぞ。」
「いやいや、井是さんからに決まってるじゃないですか。」
駄目だった。
菅谷さんは、俺が入らない限り入るつもりがなさそうだ。
俺の後ろでにやにや笑っている。
「分かりました、お言葉に甘えますね…。」
そして、大きな扉をゆっくりと開けた。

屋敷の灯りはない。
崩れかかった中は、まさにゲームみたいなホラー屋敷だ。
「井是さん、こっちです。」
「やっぱり下見してんじゃないですか!」
菅谷さんは先に下調べをして、俺を驚かそうとしている。
どうにかその情報を聞こうとしても、うまくかわされてしまう。
「あ、菅谷さん!」
「分かってる!」
行こうとした扉の前には、魔物がいた。
人型のゾンビみたいな魔物だ。
菅谷さんは、その魔物の頭に弾を撃ち込む。
俺も援護をするために背後に待機している魔物に弾を撃ち込む。
援護なら俺は得意だ。
「大丈夫ですか?」
「井是さんこそ。」
ホラー屋敷の恐怖を振り払い、データのある地下を目指した。
魔物が出るとそれどころじゃなくなるから、助かる事が多い。
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