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コラボ補足編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
零雨様に書いて頂いた噂の補足編。

キャスト
瀬戸氷河(せとひょうが)
月下美人の不良
池崎藤夏(いけざきふじか)
見えないふりした異端
世界(せかい)
全知全能の釣木


※瀬戸氷河
「せかいちゃん!」
「……カオルちゃん」
沈黙は新たな少女の出現によって破られた。サイドと前髪だけ真っ白なセミロングの髪の少女。腕にはもふもふの大きなパンダのぬいぐるみが抱えられている。
「お母さんは?」
「ママね、お友達と話してるの」
カオルと呼ばれた少女が指さした先には母親と思われる女性ともう一人女の人が話している。俺達の視線に気が付くと母親はひらひらと俺達に手を振った。
「紹介しよう、彼女は厄神の厄祭カオルだ」
「厄神……?」
俺の隣に座った厄祭はぬいぐるみを膝に乗せ俺を見上げる。
「わたしは『ふこう』を与える神様なんだ」
「いせれいいちが死んだのは彼女が原因だよ」
「……何だって?」
厄祭は俯いてゆらゆらと足を揺らす。
「わたしがお兄ちゃんに触っちゃったから、お兄ちゃんにふこうが移って……」
息を飲む。彼女が泣いてしまうのではないかと思ったからだ。しかし、厄祭は泣かずに、世界はへらりと笑った。
「カオルは悪くないよ。触ったいせれいいちが悪いんだ」
「そんな……」
「そんなもこんなもない。不用意にファンタジーに触れた馬鹿が悪いのさ」
池崎も厄祭も、複雑な顔をしながらもそれに異を唱えない。世界の言うことが間違っていないからだろう。
「最近の釣木の生徒は不用意にファンタジーに触れてしまうから困るよ。いろりはなだってそうだ」
「囲炉裏?」
「彼女はせとひょうがの神血と同じ様な力を持っている」
ぞわ、と全身の毛が逆立つ。あっさりバラされてしまった俺の血のこと。俺は世界を睨み付け、ポケットのカッターに手を触れた。
「何で、俺の血のことを知ってる」
「全知全能なんだから全てを知ってるに決まってるじゃないか。警戒するのは構わないけど、攻撃するのは君の為にならないよ」
世界は微笑みを崩さぬまま、コーヒーに口をつける。ハッとして厄祭を見ると、彼女はまさしく神と呼ぶのに相応しい、無慈悲な顔をして俺を見つめていた。
「お兄ちゃんがせかいちゃんをこーげきしたら、ふこうになって死んじゃうよ?」
「……話を続けよう」
カップをソーサーに置く世界。
「いろりはなの血はファンタジーを呼び寄せる」
「…………」
俺の神血が魔術師に憎まれるのと同じだ。
「せとひょうがと違うのはいろりはなの血はファンタジーに好かれるという事だよ」
俺の考えを見透かした様に鼻で笑う世界。そして、チラリと池崎を見た。
「いろりはな、いせれいいち、そしていけざきふじか。いいはらともえも逆にそうだな。君は知らないが、いちいしのもそう。あの生物部は……ファンタジーを通り越して、カオスだ」
「…………」
ガタン!と池崎が唐突に立ち上がり、俺達の視線が彼に集中した。
「……そうか、もうそんな時間か。帰らなければ怒られてしまうね」
世界が驚くことなくそう言う。……池崎は、何か言いたい……いや、言いたくないことがあったのだろうか。俺は気になったが、彼の雰囲気に聞くのを躊躇ってしまった。
「カオルちゃん、そろそろ自分達は帰るよ」
「えーそうなの?」
「うん、またね」
「またね!せかいちゃん!」
そんな可愛らしいやり取りのあと、世界も立ち上がった。俺もコーヒーを飲み干して立ち上がる。
「せとひょうが」
「なんだ?」
「並のファンタジーの人間が『世界』に会うチャンスはたったの一回。そのチャンスを君はもう使ってしまった」
「使いたくて使ったんじゃねぇけどな」
「だが、君は『普通』じゃない」
俺は言葉の続きを待ったが、世界は何も言わずに微笑んだ。すると、世界の体が歪み、薄れ、背景に紛れていく。その背景すらも変化しようとして、世界は消えてしまった。
「おつかれ」
気が付くと、俺は池崎と会った廊下に立っていた。さっきと違うのは、池崎の隣に子供がいないこと。
「池崎……」
「何?」
「夢、じゃないよな」
「現実」
しばらくお互い動かずにその場にいる。と、零一がやってきた。
「あれ?藤夏ちゃんに氷河じゃん」
「ちゃんはいらない」
「何?帰るのか?」
「……ああ」
「じゃあ俺も入れてくれー」
普通の会話に俺は妙に安心した。池崎と伊勢が並んで歩く後ろを俺はついていった。
「そーだ、藤夏ちゃん」
「ちゃんはいらない」
「折り紙でさあ、分かんねーやつがあったんだよ。ハートつる、って知ってる?」
「折ったことある」
「マジか!教えてくれ!」
「……構わない」
その時、無表情の池崎が小さく微笑んだことに俺は驚いた。
――なんだ、そんな顔も出来るんじゃないか。
ジロ、と池崎の目がこちらを見る。
「……何だ」
「いや、池崎もちゃんと笑えるんだと思って」
「氷河!藤夏ちゃんはクーデレキャラなんだから時々はデレてくれるぞ!」
「余計なことを言わないでくれ。それと、ちゃんはいらない」
苦々しい顔で伊勢に言った池崎はとても人間らしくて、つい笑ってしまった。
「……言わないだけで、僕にも少し位感情はある」
世界の部下でも、とは伊勢の前だから言わなかったのだろう。
「何言ってんだよ。少しじゃなくて結構あるじゃん」
伊勢がキョトンとして言う。池崎の顔の筋肉が僅かに震えるのが分かった。俺はくつくつ笑う。
「お前は……結構無自覚で人を救ってるよな」
「なにそれ?早く帰ろうぜ」
「はいはい」
俺達は三人で帰りにアイスを食べに行くことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
異世界と青春の狭間の話を。
氷河は零一ときっと仲良くなれる。

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