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コラボ補足編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
零雨様に書いて頂いた噂の補足編。

キャスト
瀬戸氷河(せとひょうが)
月下美人の不良
池崎藤夏(いけざきふじか)
見えないふりした異端
世界(せかい)
全知全能の釣木

※瀬戸氷河
「瀬戸氷河」
放課後、俺が帰ろうとすると廊下で池崎に話し掛けられた。隣には小さい子が立って池崎の服の裾をつまんで俺を見ている。
「話がある。ついてきて」
「……また、異端の話か?」
子供を見ながら返すと、池崎は少しだけ口角を上げた。
「関係者だから大丈夫。いい?」
「断る理由がないな」
異端関係なら、俺は調査の為についていかざるを得ない。それを分かっていながら聞く池崎は実は性格が悪いのかもしれない。
この前のように廊下の色が変化し、壁が歪む。池崎と子供は顔色一つ変えない。廊下はいつの間にか小洒落た喫茶店へと変化していた。
「いらっしゃい」
渋い顔をしたオヤジがコップを拭きながらそう言って俺は驚いた。彼には俺達がどう見えているのだろうか?突然現れても驚かない人間なのか、記憶の改変なんかを勝手にされているのか……。
子供が近くの椅子に座り、池崎もその隣に座った。俺も池崎の向かいに座った。
「コーヒー三つ」
俺が座ったのを確認すると、池崎がメニューも見ずにオヤジに注文をした。何が良い?とか聞く位すればいいのに、なんて思ったが聞かれてもどうせコーヒーを頼んだので文句を言うつもりはない。
「ここも、世界に存在する場所だよ。この前せとひょうがに地獄や妖怪の森を案内したのと同じ様に」
はじめて子供が口を開いた。
「こんにちは、『せとひょうが』。自分は『世界』だよ」
子供――世界はニコリと笑う。
世界。釣木学園のある世界が意思を持った個体で、池崎藤夏の上司。
「そうか、お前が……」
「自分という存在は『世界』だが、肉体は必ずしも『世界』とは限らないのさ」
『世界』そのものは概念に過ぎないんだから、と子供は続ける。オヤジがコーヒーを三つテーブルに並べたので、俺達は一旦会話を中断してコーヒーを啜った。俺と池崎はブラック、世界はミルクと砂糖を沢山。
「意外かな?『世界』がコーヒーをブラックで飲まないのは」
砂糖をかき混ぜる子供への視線に気が付いたのか、相手は俺に微笑んだ。
「全知全能の神が甘党だとは思わなかったものでね」
「勘違いしてもらっては困るが」
カチャ、と世界はスプーンをソーサーに置く。
「『世界』は全知全能ではあるが、神ではない。そして、甘党でもないし、ブラックが飲めない訳でもない」
「神という存在は閻魔や九十九神なんかも学園にいるしね。自分で言うのも何だが『世界』ってのはよく分からない存在だよ、生きていると言って良いのかも分からないしさ」
世界がコーヒーを啜ると同時に、池崎が世界の口調を全く真似して喋り始めた。しかも、普段の無表情と代わってさっきの世界の顔を移し替えたかのような表情の豊かさである。
「池崎?お前どうしたんだ?」
「いけざきふじかは今のところ『世界』に一番近い部下だ。『世界』――まあ、自分のことなんだが、自分の声を一番聞き違える事なく聞ける人間だ」
と、また池崎の顔が無表情に戻った。
「僕はいつでも『世界』が入れるように準備をしている」
「つまり、いけざきふじかは世界に順応出来る力を持っているのさ。異世界に行っても生きていける程のね」
俺は話があまり分からずに、眉を潜めた。そんな俺を察したのか池崎が補足を加える。
「イタコの『世界』版と、郷に入れば郷に従えの異世界版」
「ああ、なるほど」
「話が逸れたね。自分がせとひょうがと会うだけならいけざきふじかに入れば済むことだ。この姿で来たのにはちゃんと訳があるのだよ」
ニヤリと不敵に笑う世界が何だか背伸びしている子供に見えて(中身を気にしなければ実際そうなのだが)少し微笑ましくなった。
「へえ?」
「全知全能の自分が大人の姿でせとひょうがに会ったら殴られたりしてしまう。君は子供には甘いそうじゃないか」
前言撤回。微笑ましいなんて嘘だ。こんなズル賢いヤツが子供の中身だなんて詐欺だ。というか、世界は子供を人質に取っている!といっても過言ではない。
「腹黒い野郎だな」
「言葉のあやなのは分かるが、性別はないよ。全てを知っているからね」
「ふん。で、その世界が俺にわざわざ会いに来て何の用だよ?」
チロリと舌を出して世界は上唇を舐める。
「せとひょうがにいけざきふじかの話せないファンタジーを教えてやろうと思ってね」
「話せない?」
「僕は『世界』からいくつか制限が掛かっている。ファンタジーについて、許可の無い異世界への渡航なんかがそう」
「…………」
その制限を疑問に思うこと無く淡々と話す池崎に俺は不快感を覚えた。しかし、その怒りは池崎に向けるものではないと気付き俺は口に出すことを控えた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
殴ってやるよ、なんていったばっかりに。

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