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ツンデレと鼻歌。


・Song for you
※榎本恭二
氷河が珍しく故郷に帰っていたらしいので、俺も戻って氷河を探すことにした。
俺たちの町は吸血鬼に壊されたから、跡形も残っていないし、氷河にもいい思い出がないはずだ。
なのに、戻ってるだなんて聞かされたら心配しちゃうじゃないか!
壊された教会の方に向かうと歌声が聞こえてきた。
慎重に様子を見てみると、壊れかかっている長椅子に座っている男が見える。
氷河だ。
歌うのは好きじゃないとか言ってたくせに、めっちゃうまいじゃんか。
聞き惚れていると、前に寄りかかっていた瓦礫が崩れてしまった。
がらりと音をたててしまった上に俺の姿を見られてしまった。
氷河は、顔を赤らめてから目をそらして恥ずかしそうに呟く。
「……きいてんじゃねぇよ」
「だって綺麗な歌声がしたから、つい」
「綺麗じゃねぇだろ。俺、うまくないんだから」
そういう氷河のいつもの謙遜。
いっつも未熟だとかなんだか言ってるけど、氷河は格闘も魔術も治癒術もうまいんだよ。
「死んだ連中にせめてもの弔いを、と思ってさ」
「……そっか」
「甦るわけないのは分かってる。反魂は神の能力を超えてしまうから使えないしな。」
治癒術ってのは万能じゃない。
神血である氷河にしか使えないし、その力も限度がある。
氷河は俯きながら続ける。
「けどさ……償いたいんだ。俺のせいで、殺してしまったから」
「氷河のせいじゃないよ!」
すぐに叫んでいた。
「氷河のせいで町のみんなが死んだわけじゃない!氷河だって被害者じゃんか!」
町を壊したのは吸血鬼だ。
氷河だって殺されかけたのに、なんで償うっていってんだろう。
「俺のせいで死んだやつだっている。俺が殺したやつだっているだろ。鎮魂歌でも歌ってみたかったんだ。気が晴れるとは思えなかったけど。」
「氷河は……抱えすぎだよ……」
「そう、だな」
氷河の目に涙が浮かんでいた。
無理して笑って見せているのが痛々しい。
「でもさ……俺の血が……おれの、せいで、恭二だって傷付けた……」
「氷河が傷つくよりマシだよ。」
「俺が……嫌だ。誰の、傷も、見たくねぇんだよ」
「氷河が治癒したらいいじゃん!氷河の血は誰かを救うためにあるんだって!」
とうとう氷河が泣き出した。
溜め込みすぎなんだよ、氷河。
「茅野みたいなこと、言うんだな……」
「……みなみちゃんほど正しくないよ、俺は」
「いいんだよ。俺は、恭二にすくわれてっから……」
「うん……ごめん」
「ありがと、な」

-------------------短めに。

歌う氷河。
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