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友人に捧げた短編集。
今回は、ハーレムをテーマに書いてみました。

アルリス・グレツァイト編。

※瀬戸氷河
吸血鬼。
俺の中では悪魔に属すると考えられる夜の頂点に立つもの。
人の生血を吸う事で生き延び、太陽の光さえ浴びなければ最強の一族であるとされるらしい。
他にも弱点がいくつかあるなんて話を聞くが、どれも真偽は定かではない。
実験する前に吸血鬼に殺されるのがオチだろうしな。

日も沈んできた夕暮れ。
高級紅茶店には、吸血鬼のアルリスがいた。
「あら、氷河さんではないですか。」
「何してんだよ、アルリス」
彼女の話によると、吸血鬼の間にも貴族制度というものがあるようで。
アルリスの家は、かなり高位の地位を持つ吸血鬼貴族らしい。
「飲み物を切らしておりましたので、新しいものを買おうと思ったのですよ」
「吸血鬼の飲み物って、生血じゃねぇのかよ」
「ずっと生血ばかりを楽しむような下賤な物ではありませんから。」
アルリスは茶葉の缶のラベルをひとつひとつ見ながら、選んでいる。
選びながらも、彼女は優雅に話し始める。
「血は本能の供物なのですよ。吸えば吸うほど我々は魔物に近くなってしまう。吸血鬼が悪魔でいられるのは知性があるからですのよ。」
「そういう割には結構血を啜ってる気がすんだけどな」
「それは我々吸血鬼が生きるためには仕方のないことですわ。例えて言うなら三食の食事と同じ。食わずには生きられず、食いすぎては身体に毒なのです。」
「本当かそれ……」
「貴方のは特別ですから、三度の食事程度では抑えきれないのでしょうね。私も頂けるのなら今すぐに欲しいぐらい。」
警戒して身構えると、アルリスがくすりと笑う。
「ここでは致しませんわよ。街にいる間は人間として通しているのですから」
「さすがにそうだよな……」
一応店員だって見ているわけだし。
吸血鬼だって人間の街でトラブルは起こしたくないのだろう。
それを同じ吸血鬼である彼女の弟が意識しているとは思えないが。
「そうだ。貴方も詳しいのでしょう?何か選んでみてくれません?」
「は?俺が?」
「ええ。元貴族様――いえ、氷河さんのお気に入りが知りたいのです」
アルリスは、紅茶の棚から離れる。
本当に選ばないといけなくなったな……。
「言っとくけど、俺コーヒー派だからな。昔に飲んだやつでよければ……」
棚を見て、昔に見たことあるような名前を探す。
ほとんど名前だけは聞いたことあるものばかりだ。
飲んでいたのかもしれないが、覚えているはずもない。
「あ、これだ。俺がうまいと思ったやつ」
気に入った名前の茶葉をアルリスに渡す。
確かイングリッシュブレックファースト。
それを受け取ったアルリスは感心したように呟く。
「ブレンドティーですか。なるほど……」
「気に入ったか?」
「ええ、これにしてみましょう。ありがとうございます」
アルリスはそれを手に、レジへと向かう。
決めると行動が早いな。
すぐに会計を済ませてしまったアルリスは、俺を呼ぶ。
「氷河さんは、どうしてこちらに来たのかしら?」
「あ、俺も買いに来たんだよ。あいつらにはこだわりなんてないだろうから、適当でいいか……」
2,3個適当に茶葉の缶を取ろうとしたら、アルリスが先に一つ差し出した。
「こちらなんてどうです?私のお気に入りなのですよ」
アルリスから缶を受け取る。
そのラベルに書いてあるのは、アールグレイ。
「王道ですが、この店のアールグレイはおいしいのよ」
「じゃ、これにするよ。」
先に手にした2個とアルリスの選んだ缶を手に、さっさと会計を済ませる。
領収書も用意してもらった。
誰が自分の金であいつらに茶を用意するか。
「それでは行きましょう。ずっとここにいるのはよくありませんわ。」
アルリスの後をついて店を出る。
少し歩いた所で、アルリスが立ち止まる。
「さて、夜も更けてきそうですし、帰りますわ」
「夜は吸血鬼の時間だろ?」
「だからこそ、街にはいられないのです。今日は新月。屋敷でゆっくりと夜を楽しみたいのよ。」
アルリスが空の月を見上げる。
といっても、新月であるなら月は見えないはずなのだが。
「では、氷河さん。失礼致しますわ」
一礼してアルリスは去って行った。
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