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友人に捧げた短編集。
今回は、ハーレムをテーマに書いてみました。

綾柏妖狐編。

※瀬戸氷河
八雲の領地から逃げ出し、山の頂上へと上る。
一番上には、妖怪の主である綾柏妖孤が住んでいる。
彼女は最古の妖怪、九尾の妖狐だ。
普段から人間に化けていて、一昔前の和を重んじているのか着物を着て扇子を常に手にしている。
典型的な古参者だ。
綾柏の住む洞窟へと入る。
蝋燭の明かりだけが不気味に灯る異様な空間だ。
「おや、神血じゃないか。」
「久しぶりだな」
綾柏は扇子を広げ、ぱたぱたと仰ぐ。
「なんだい、わらわの物になってくれるのかえ?」
「そんなわけねぇだろ、迷っただけだよ」
「迷う?この山で何を迷うことがあるのかしら?ここは、下に行けば人間の領域、上に行けば妖怪の領域というだけの簡単な山ぞ?」
この綾柏の言葉使いが俺は苦手だ。
高齢の古参らしい古い言い方っていうんだろうな。
「飛び降りるってわけにもいかねぇだろ。それに、九尾の様子も見たかったからな」
「ほう、わらわのか?」
「そう。何か企んでないか見に来たんだよ。最近のお前らの動きは大人しすぎるからな」
「なんじゃつれないのぅ。わらわの身を案じているわけではないのか」
「そんなわけねぇだろ。今すぐにくたばれとは思ってる。」
けらけらと綾柏が笑う。
「お前だけだぞ、わらわにそんな口が聞けるのは。弓ヶ浜ですら表面上はわらわに従うというのに。」
「そりゃ弓ヶ浜だってお前が使っているからだろ。」
「ふふ、そうじゃのう……」
急に綾柏が手にしていた鉄扇をこちらに投げる。
咄嗟に下がってかわし、鉄扇が地面に刺さる。
かわせずに刺されば、死んでいたかもしれない。
綾柏が低い声色で言う。
「感謝しろよ、貴様は許されているだけにすぎないことを」
「わかってる……」
後ろ手でホルダーの銃に触れる。
彼女はやはり敵だ。
またどこからか扇子を取り出し、ぱたぱたと仰ぐ。
「我々妖怪はしばらく様子見だ。状況が変化しつつあるからのう」
「状況、か」
街にも徐々に変化が生まれてきている。
あそこにはいろんな種族が潜んでいる。
彼らが何をするかなんてのは、山に籠る妖怪にも予測がつかないのだろう。
「事を起こすなら、満月かのう……。」
綾柏は、洞窟の窓から見える空を見る。
この前新月となったばかりだから、夜空には月が見えない。
「今から、満月って言ったら随分先の話になるぞ?」
「それを待てるほど、妖怪にとって満月とは力を与えるものなのよ。」
恍惚の表情で、綾柏は夜空をみる。
「そういや、月と妖怪ってどんな関係なんだ?」
ふと気になって聞いてみたが、彼女を上機嫌にさせるスイッチを入れてしまったらしい。
扇子をぱたりと閉じ、饒舌に語り始めた。
「ならば話してやろう!月は我々妖怪にとってなくてはならないものだ。月の妖力は妖怪の力を増幅させる効果がある。多すぎる妖力は時に妖怪自身を狂わせるものとなってしまうが、半月ぐらいまでなら、どんな妖怪も力を得た状態になるじゃろう。」
「満月になればなるほど妖怪は力をつけるわけか。襲撃するなら新月だな」
「ふん、新月であっても妖怪は元から高い能力を持っている。貴様がいくら特別な人間であろうとも、我らにはかなうまい」
また扇子を広げ、仰ぎ始める。
妖怪らしいプライドの高さが腹立つ。
けど、聞く事は聞けたし、いいか。
「まぁ、お前らの動き次第では、全力で潰すから覚悟しとけよ」
「それは怖いのう」
狐は臆せずからかうように笑うだけだ。
苛立ちながら、洞窟を出た。
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