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友人に捧げた短編集。
今回は、ハーレムをテーマに書いてみました。

鴨鳥燕編。

※瀬戸氷河
昼間の明るい喧噪。
街は人と商店の声で賑わっている。
現在は魔物があまり出てこないので、戦う事もなく比較的平和な時を過ごしている。
俺が、人目に触れず路地裏へと抜けた時、女に声をかけられた。
「ねぇ、瀬戸氷河君」
「……何者だ」
明るい茶色の髪の女だ。
くすりと女は笑い、自分の名を名乗った。
「私は鴨鳥燕。皆からは燕ちゃんと呼ばれているよ」
「で、何の用だよ?」
狙ったように人通りのない路地裏で声をかけたのだ。
俺の事情をいくらか知っている奴なのだろう。
「そう怖い顔しなくても」
鴨鳥燕がくすりと笑い、語り始めた。
「君は、ずっといろんな女性から話を聞いてきたはずだ。灯野あさぎの経済の話、来鈴舞皆の人外の話、柚木優衣の甘える話、イシアの守る話、芳賀巫斗の敵の話、古川宇美の音の話、茅野三奈美の救いの話、セリティナ・アークの愛の話、ミシア・ガブリエルの恋の話、夜羽小春の使役の話、アルリス・グレツァイトの貴族の話、報化咲矢柄の異形の話、八雲灰雪の力の話、綾柏妖孤の企みの話、根矢川夏実の他人の話、千歳雄利の協力の話、奈々峰松里のライバルの話、楠木菖蒲の後悔の話、ミユキの変わる話。これらの話を全て聞いた君に、いったいどのような心境の変化が現れたのかな?」
鴨鳥が告げた話は、全てここ数日の間に俺が聞いた話だ。
不自然なぐらいに、彼女は知っている。
「仕組まれてたってのか?」
「違う違う。全て偶然だよ。偶然が重なって今に至るのさ。」
「偶然が重なったら、そりゃ運命だろ」
この数日の出来事が全て偶然ってのは気味が悪すぎる。
何か裏があると思っても不思議じゃないだろう。
鴨鳥は頷くと、腕を組んでにやりと笑う。
「そう答えるか。ならば、この私からは偶然の話を送ろうじゃないか。」
それでちょうど20個目だしね、と鴨鳥は呟いた。
一つ咳をしてから、鴨鳥は更に語る。
「偶然ってのはまさにたまたま、って意味になるのさ。たまたま立て続けに女性たちが君に話をしたくなったとかそんなん。これは操られたわけでも、噂となっていたわけでもない。彼女たち、それぞれが君に話をしたいと思ったからこうなったのさ。」
「でも、それは気味の悪い偶然だ。誰かが操作したとしか思えないだろ」
「運命や偶然を操作出来るのは、神様ぐらいじゃないかな。神様の真意なんて、君には分からないだろ?」
「わかんねぇけど、嫌われてんだろうな、ってのは分かるな」
「どうしてだい?君は神の代替えなんだよ?」
「その代替えが気に食わない行動してたら、潰したくもなるだろ?」
「ほほう、自覚はしてるのか」
「そりゃな。」
鴨鳥は乾いた笑いをもらす。
俺の答えに困っているようでもある。
「でも、今回の偶然を神様が引き寄せたというのなら、神は君を嫌っているのではないんじゃないかな?むしろ可愛がっているようにみえるね」
「気持ち悪いな、それ」
「ストレートだな、君は。そう好意を切り捨てるもんじゃないよ」
「はん、悪かったな」
「どこまでも不良だな……。これじゃ俺がいくら頑張ったって無駄じゃないか」
鴨鳥は、頭を掻いて項垂れる。
「どうした?」
「ああ、いやこれ以上君に話しても無駄だと思っただけだよ。話を終わりにしよう。20個目の女性の価値観だ。」
これで、20人の女性から俺は何かを聞いたってことになるのか。
それぞれの価値観や考え方を全て聞いて、俺は何を思うのだろう。
「さぁ、もう一度聞こう。君は何を思ったのかを」
鴨鳥が再度問いかける。
それに対する俺の答えはこうだ。
「参考にはなったかな。」
「さ、参考にだってぇ!?」
「全部、あいつらの考えは俺にはない物だ。あさぎちゃんの金への執着も、来鈴さんが愚痴を言いつつ木津樹さんに付き合う事も、優衣ちゃんの楽しみ方も、イシアの騎士道も、芳賀の思想も、古川が赤塚につく理由も、茅野の聖女的発想も、セリティナとミシアのおせっかいも、夜羽の能天気さも、アルリスのプライドも、報化咲の恐怖も、八雲の固さも、綾柏の考えも、根矢川の恋心も、千歳の願いも、奈々峰の憧れも、菖蒲の思いも、ミユキの気遣いも。聞いても俺には真似できないものばかりだ。」
鴨鳥が、驚いたまま固まっている。
一体、何を期待していたのだろう。
俺の心の揺らぎかな。馬鹿みたいだ。
「それに、真似する必要も理解する必要もない。俺には俺の考えがあるんだからな」
「お、恐れ入ったよ。降参だ。」
手を上にあげ、参ったという鴨鳥。
ひきつった笑みのまま、体裁を取り繕うとしている。
「それじゃ、失礼するよ。二度と会うことはないかもしれないね」
突然現れた女は、静かに人ごみに紛れた。
――その前に見えてしまった。
鴨鳥燕に生えている縞々の尻尾を。
そいつの肩を掴み、確信を突き付けるように言う。
「お前、化け狸だろ」
「え」
鴨鳥燕――いや、化け狸 太岬宗吾は、変身を解いて普段通りの青年の姿に戻る。
ゆっくりと振り向いた太岬は、震えて恐怖で表情がさっきよりもひきつっている。
「な、なんでばれたのかな……?」
「頭隠して尻隠さず。狸ってのは化けるのが下手なんだっけか」
「あ、いや、それは、尻尾隠すのだけがうまくいかなかっただけで」
「そんなのどうだっていいんだよ。俺にはさ」
指をパキパキと鳴らす。
久しぶりに切れちまったよ。
「聞いたのは氷河じゃないか……」
涙目で太岬が訴える。
当然、そんなものを聞こえるわけがない。
聞こえたとしても無視だ。
「問答無用!てめぇ、よくも人の事を弄んでくれたな!」
「ひいいいいいい!結局揺らがない君もおかしいからね!?」
俺の手を振り払い、逃げようとする太岬をかすめるように銃を撃つ。
それだけでも、太岬の足が完全に止まった。
止まった太岬の頭に銃口を向ける。
「今日は、妖怪退治だな」
平和は長く続かなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
氷河ハーレム、変なオチ。
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