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檻に閉じ込めて愛する魔術師。
・ケージインラブの魔術師
※瀬戸氷河
目を覚ますと俺は、檻の中にいた。
頭が痛むのできっと背後から棒とかで殴られて気絶したのだろう。
武器は当然奪われている。
「どうなってる……?」
檻のなかを見回すと、捕らえるだけにしては不要なものがいくつもあった。
ベッドとかシャワールームとか。
まるで俺をここに住まわせるような……。
「目が覚めたのかい?」
鉄格子の先にいる男が、俺の前にある椅子に座る。
「よかった。僕はやり過ぎたんじゃないかと心配していたんだよ。さすが本部の人だ、丈夫だね。」
「……てめぇがやったんだろ?」
「そう、僕が君をここに閉じ込めた。」
魔術師は膝を組む。
「僕はケージインラブの魔術師。籠の中の者を愛するものさ」
「意味わかんねぇ……」
「わかるだろう?僕は君に惚れてしまった。結婚、とまではいいから愛したい。そう思って君を閉じ込めた。」
気持ち悪い、と素直に思った。
魔術師の話は終わらない。
「僕はなにもしないよ。君を傷つけも触れもしない。ただ愛を語らい君を見るだけ。そう、僕は君がここにいるだけでいいんだ。殺す意思がないとわかってもらえるように、君の望みそうなものはすべて用意した。ベッドにシャワールームにトイレに……あ、そうだ。着替えだってもちろんあるよ。他に必要なものがあればすぐに用意しよう。食事は僕が作ってあげるよ。この日のために練習したから喜んでくれると嬉しいな。」
「どうかしてる……」
今までの俺を殺そうとした魔術師とは違う狂気を感じる。
「僕は君のすべてをみたいし、知りたい。けれど、僕が欲におかされて君に触れてしまってはいけない。君を抱いても、君を組しいても、君をなめ回しても、君の髪や指先にだって触れてはいけない。僕はただ籠の中の君に向かって愛してるというだけ。見つめるだけ。そう、僕は君の望む無害な魔術師だよ。」
「ち、違う……っ、お前は、有害だ……!」
こいつは確かに俺になにもしない。
けれど、閉じ込められてずっとこいつの気持ち悪い話を聞き続けるのだって、俺を精神的に追い詰めてるのとかわりない。
むしろこいつのが、下手な魔術師より厄介だ。
「出せよ……」
「それはできない。外は君にとって有害な世界だ。」
「俺にとってはここにいるのだって、苦痛でしかないんだよ!いいから出せ、ここから出せよ!」
鉄格子をガチャガチャと揺らす。
魔術師は何故だか恍惚の笑みを浮かべる。
籠の中の鳥を世話する人と同じ気持ちになってんだろうか。
ペットを可愛がるような……それこそ気持ち悪い。
「出しやがれ!くそっ、びくともしねぇ……」
「それはね、魔術耐性の高い物質で出来てるんだ。高いんだよ、それ」
「やめろ、こっち見てんじゃねぇ」
「君のことを見ていたいんだ」
「それが気持ち悪いって言ってんだろ!」
「気持ち悪い……ふふふ、罵られるのも悪くないなぁ」
魔術師は立ち上がりさらに俺に近づく。
格子越しに俺にささやく。
「これからよろしくね」
あまりの気味悪さに、恐怖してしまった。
「いやだっつってんだろ!俺はこんなとこにいられない!出せ、出せよ、いっそ殺しに来やがれ!拷問とかしろよ!鳥みたいに俺を閉じ込めんな!くそ、出しやがれ!」
魔術師は椅子に戻って、嬉しそうに微笑みながら見つめるだけ。
これじゃ俺はなにもできない。
「ざけんな!逃げてんじゃねぇっ!」
悔しさのあまりに格子を殴る。
痛むのは俺の拳だけだ。
「く、っ……。」
殺意よりも恐怖が勝っている。
気味の悪い魔術師に怯えてしまっている。
「恭二……たすけて、くれよ……なぁ」
願ってしまう。
あの半分吸血鬼の恭二が来てくれることを。
俺のヒーローが来てくれることを。
今までそれを信じて強がっていたのだから、当然だ。
けど、そんな都合いいものはない。
「すがって、情けねぇな……」
------------------
愛がおもいはなし。
※瀬戸氷河
目を覚ますと俺は、檻の中にいた。
頭が痛むのできっと背後から棒とかで殴られて気絶したのだろう。
武器は当然奪われている。
「どうなってる……?」
檻のなかを見回すと、捕らえるだけにしては不要なものがいくつもあった。
ベッドとかシャワールームとか。
まるで俺をここに住まわせるような……。
「目が覚めたのかい?」
鉄格子の先にいる男が、俺の前にある椅子に座る。
「よかった。僕はやり過ぎたんじゃないかと心配していたんだよ。さすが本部の人だ、丈夫だね。」
「……てめぇがやったんだろ?」
「そう、僕が君をここに閉じ込めた。」
魔術師は膝を組む。
「僕はケージインラブの魔術師。籠の中の者を愛するものさ」
「意味わかんねぇ……」
「わかるだろう?僕は君に惚れてしまった。結婚、とまではいいから愛したい。そう思って君を閉じ込めた。」
気持ち悪い、と素直に思った。
魔術師の話は終わらない。
「僕はなにもしないよ。君を傷つけも触れもしない。ただ愛を語らい君を見るだけ。そう、僕は君がここにいるだけでいいんだ。殺す意思がないとわかってもらえるように、君の望みそうなものはすべて用意した。ベッドにシャワールームにトイレに……あ、そうだ。着替えだってもちろんあるよ。他に必要なものがあればすぐに用意しよう。食事は僕が作ってあげるよ。この日のために練習したから喜んでくれると嬉しいな。」
「どうかしてる……」
今までの俺を殺そうとした魔術師とは違う狂気を感じる。
「僕は君のすべてをみたいし、知りたい。けれど、僕が欲におかされて君に触れてしまってはいけない。君を抱いても、君を組しいても、君をなめ回しても、君の髪や指先にだって触れてはいけない。僕はただ籠の中の君に向かって愛してるというだけ。見つめるだけ。そう、僕は君の望む無害な魔術師だよ。」
「ち、違う……っ、お前は、有害だ……!」
こいつは確かに俺になにもしない。
けれど、閉じ込められてずっとこいつの気持ち悪い話を聞き続けるのだって、俺を精神的に追い詰めてるのとかわりない。
むしろこいつのが、下手な魔術師より厄介だ。
「出せよ……」
「それはできない。外は君にとって有害な世界だ。」
「俺にとってはここにいるのだって、苦痛でしかないんだよ!いいから出せ、ここから出せよ!」
鉄格子をガチャガチャと揺らす。
魔術師は何故だか恍惚の笑みを浮かべる。
籠の中の鳥を世話する人と同じ気持ちになってんだろうか。
ペットを可愛がるような……それこそ気持ち悪い。
「出しやがれ!くそっ、びくともしねぇ……」
「それはね、魔術耐性の高い物質で出来てるんだ。高いんだよ、それ」
「やめろ、こっち見てんじゃねぇ」
「君のことを見ていたいんだ」
「それが気持ち悪いって言ってんだろ!」
「気持ち悪い……ふふふ、罵られるのも悪くないなぁ」
魔術師は立ち上がりさらに俺に近づく。
格子越しに俺にささやく。
「これからよろしくね」
あまりの気味悪さに、恐怖してしまった。
「いやだっつってんだろ!俺はこんなとこにいられない!出せ、出せよ、いっそ殺しに来やがれ!拷問とかしろよ!鳥みたいに俺を閉じ込めんな!くそ、出しやがれ!」
魔術師は椅子に戻って、嬉しそうに微笑みながら見つめるだけ。
これじゃ俺はなにもできない。
「ざけんな!逃げてんじゃねぇっ!」
悔しさのあまりに格子を殴る。
痛むのは俺の拳だけだ。
「く、っ……。」
殺意よりも恐怖が勝っている。
気味の悪い魔術師に怯えてしまっている。
「恭二……たすけて、くれよ……なぁ」
願ってしまう。
あの半分吸血鬼の恭二が来てくれることを。
俺のヒーローが来てくれることを。
今までそれを信じて強がっていたのだから、当然だ。
けど、そんな都合いいものはない。
「すがって、情けねぇな……」
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愛がおもいはなし。
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