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ファンタジーノイズワールドの3話です。

「幽夜~、なんか作って下さい。」
「俺が何か作れると思いますか?」
休み時間にふと波乃が俺に言う。
俺は嫌味を含めて答える。
「私ね、そうだなぁ…甘いものがいいです。」
「作れないっつの」
波乃は聞かずに続ける。
話が通じないのは不便だ。
「えぇー…フルーツパフェが食べたいなあ…。」
「どっかのカフェで食え。」
俺がはっきり言うと、波乃は凹んだ。
ぐったりと俺の机に突っ伏すと、その状態のまま波乃は言う。
「幽夜はいつから、そんな性格になったんですか~。」
「元からだ。」
俺と波乃は友人関係だ。
こんな下らない当たり前のような会話は、毎日のようにしている。

数学の授業中にたまたま隣の席になっている式恒瑠水。
彼女は、式の世界の電波質であるらしい。
そう波乃が言っていた。
「世の中って必ずしもイコールで結ばれない。数式って逆の理論で正しいかって言われたら違うのだってあるじゃない。それと同じよ。」
今は授業中で、先生が数式の説明をしている所だ。
それに構わず式恒さんは続ける。
「その歪んだ式は無数にある。変な理屈で考えればすぐに歪むんだけどね。逆に言うなら、数式のように整ってるものなんてありはしないんだ。数式同士がイコールになるなんて有り得ないんだ。」
何を思ったのかすらすらと話しだす式恒さん。
その姿は奇妙にも思える。
「全ては歪んだ数式の世界だ。どこにでも式は存在する。そしてそれらは定理が成り立っている。」
「ちょっと待て。定理が成り立つ式なんてありはしないって言ったばかりじゃねぇか」
つい口を挟んでしまう。
式恒さんはにやりと笑った。
「それが、無数の人間なんだよ。定理があるのは物理的な物だけだ。わかるかい、存原」
シャーペンを俺に向けて、嘲笑うかのように言う。

式恒さんは一旦話を切り、さらに続ける。
「定理のある物なら、まだいいんだけどね。定理のない人間なんて実に不安定だ。すぐに頭の中にある式を変えてしまう。すぐに数式による安定は失われ、人間は歪んでいく。存原。君は常に歪みゆく少女に何を見ているんだい?」
波乃のことだろうか。
そう聞こうとしたら、先に式恒さんが話す。
「私は、ずっと気になっていたんだ。何故変哲もない君に彼女…光宮さんのような歪んでいく電波質が寄ってくるのか。どうやら君もわかってないらしい。君には電波質を呼び寄せる力でもあるのかい…?」
まじまじと俺を見つめる式恒さん。
学者の好奇心のような目だったが、すぐに嘲笑する。
「ふふ、やはり人間の式は解けないね。」

…わけが分からない。
式恒さんはそれで満足したのか、授業に戻った。
俺も授業に戻ったが、あまりにも不思議な話をされたもんだから、脳が数学に追い付かなかった。
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