えらく不機嫌な氷河。

・喧嘩というか一方的なワンマンプレイ
※瀬戸氷河
身体を動かすのは好きな方だ。
魔術や治癒術を集中して使うより、銃技や体術の方が本能的で楽なんだ。
じっとしてろ、って言われても無理だしな。
「なぁなぁ兄ちゃん、いい話があるんだけどさぁ」
路地裏に入った途端に、男に声をかけられた。
無視しようと思い、歩き続ける。
一緒についていきながら、男は続ける。
「兄ちゃんさ、たまってんだろ？身体を売ってみる気はねぇか？兄ちゃんも気持ちよくなれるし、金も入る！女とやったっていいし、兄ちゃん程の美貌なら男からも金とれるよ！」
「さっきから、うるせぇんだよ……」
苛ついて振り返り男を睨む。
こういうのを無視できないってのは、俺の性格の欠点だな。
巻き込まれやすくなっちまうわけだし。
男はすくむどころか、にやにやと笑う。
「なんだよ、近くで見たら結構な美人じゃねぇか。最高の逸材だねぇ……」
「そういうのは、他を当たれよ。」
「そうもいかねぇんだよ、こっちにもノルマがあるんでね……」
男が指を鳴らすと、隠れていたのか奴の仲間が現れる。
人数は7,8人。囲まれたようだ。
「この路に入るってことは、兄ちゃん、痛い目にあってもいいってことだろ？」
「こいつ、ほっそいなー。確かにいい素材だけど！」
「最初は俺がいいなー」
「いやいや、おれっしょ！」
囲んだ連中の思い思いの声が聞こえる。
好き放題言いやがって、腹が立つ。
「なめてんじゃねぇぞ！」
目の前の男に向けてハイキックをする。
あえて、寸土めの所で止める。
「言っとくけど、手を出すなら、こんなんじゃすまさねぇからな？」
構えを取って挑発する。
リーダー格の男が、挑発に乗ってくれた。
「やっちまえ！売るんだから、顔はやめろよ！」
はは、と思わず笑ってしまった。
俺、すっげぇ機嫌悪いから暴れて発散したかったんだよな。
「かかってこいよ！雑魚が！」
最初に殴りかかった男をかわして、回し蹴りを入れる。
絶叫する男の悲鳴を無視して、次々と襲いかかる男をかわしたり、腕をとり捻りあげたり、蹴りあげたり。
ストレスが貯まっていた俺は、好きなように、本能のまま暴れてしまっていた。
俺の喧嘩の技術は、芳示の見よう見まねだが、連日その芳示にしごかれて鍛えられているし、他の人の戦い方も大体覚えているし、参考にさせてもらっている。
だからこそ、俺なりの戦い方ってのが出来たんだろう。
芳示に勝ったことは数える程しかないが、今みたいに絡まれたときには、助かっている。
最後にリーダー格の男を、ストレートに殴り飛ばす。
拳が痛むが、こっそり治癒術使って痛みを押さえる。
「なんだよ……兄ちゃん、強いじゃねぇか……」
「んだよ、まだ喋れるのか」
他の連中は皆気絶したってのに。
立ち上がったら止めでもさそうと思い、一歩歩く。
「そんだけ腕がたって、美人なら……俺が惚れそうだぜ……」
それを嘲笑う。
「気持ち悪ぃな。俺はあんたみたいな雑魚、大嫌いだ」
「は、はっ……厳しいやつだ……」
男がぐったりと倒れる。
くたばってくれたようだ。
全員のしてしまったから、喧嘩が落ち着いてしまった。
「おい氷河」
見知った声が響く。
芳示だ。
「探したぞ、ったく……。変なとこで揉めやがって」
俺をさがしに来てくれたようだ。
俺の手を取ろうとする芳示の手を払いのけた。
「芳示－－まだ忘れちゃいねぇからな」
「なんだよ、まだ根にもってんのかよ」
「当たり前だろ！」
「んな荒れてっと、せっかくの美貌も台無しだぜ？」
キレて芳示を殴る。
俺の拳はあっさりと片手で受け止められてしまうのだが。
「……ざけんな、見下してんじゃねぇよ、芳示ッ！」
「めんどくせぇな……大人しくしやがれ！」

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氷河のハイキックは綺麗だと勝手に思っている。
氷河の体術は、基本風を切ってる。
そのぐらいの鋭さはあるのに、芳示曰く隙が多いから弱い。
氷魔術を足に付与すれば、もっと綺麗なんじゃないかしら。

強気すぎる美形不良、氷河。