コラボ補足編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
零雨様に書いて頂いた噂の補足編。

世界の中心の話、前編。

※瀬戸氷河
朝学校に行ったら、大変なことになっていた。
「零子、毎日その髪型で飽きねーの、のか？」
「それさ、友輝の朝御飯が毎日米で飽きないのって言ってるのと同じだと思うんだけど」
零一と友恵の性別が……反転していた。
「あ、氷河だ。おはよー」
「……おう、おはよう」
ツインテールの零一――いや、零子と呼ばれていたか、が手を降る。零一の面影はあるが、結構可愛い。髪留めのセンスの悪さは変わっていないが。それに気付いた友恵――友輝だったか、が手を挙げる。こちらも女顔だが、確実に男だ。背は相変わらず零一よりも小さい。
「おっす、氷河。ところでさ、ツインテ以外の零子ってどー思うかな、かな？」
「はあ？」
俺が思わず間抜けな声を出すと零子が慌てて俺達の間に割り込んだ。
「ほ、他の髪型なんてやだよね？氷河！？」
零子は眉を潜めて顔を近付ける。ツインテールが揺れて俺の頬をくすぐった。少し彼女の顔が赤い。
「え、あー……見てみたい、かも」
「な……！」
俺が好奇心と悪戯心でそう言うと零子はショックを受けたように口を開け、教室から逃げ出していった。


気が付けば放課後で、俺は零子と友輝と一緒に生物部でお茶を飲んでいた。
「……ん？」
「どうしたの、氷河？」
違和感が頭の中をよぎる。
「どうして俺はこんなところで優雅に茶なんか飲んでるんだ？」
「何言ってるんだよ、よ。僕達が誘ったら普通についてきたじゃん、じゃん」
それはそうなのだが。どうして、どうして俺は。
「こんな異常な事態なのに茶なんて飲んでるんだ？」
「異常？」
友輝が首を傾げ、零子が眉を潜める。
「異常な事態って、また氷河ったら調査してるわけ？」
「また、じゃなくてそれが俺の任務だからな」
反射的に答えつつ、考える。この性別が反転しているという異常な世界で、俺は何故か適応していた。そう、受け入れてしまった。これは確実に――何か異端の能力に違いない。
「……聞き込みしていくしかないか」


零子と友輝に今居ない面子の場所を聞いたら、「葉平(多分囲炉裏のことだろう)はいつもみたいに体育準備室じゃない？」「藤美(池崎に違いない)ちゃんは分かんない、ねぇ」と言っていた。まずは居場所の分かる葉平に会おうと俺は体育準備室の前に来たのだが。
「出ねえ」
ノックしても、反応がない。まあ、ただの倉庫なのでノックする必要すらないのだが、人の気配がするので一応。
「…………」
思いきって扉を開ける。
「……よう、氷河」
華――葉平が、女の人を押し倒していた。
「せ、瀬戸君……っ！」
その押し倒されている女性は俺に気が付くとその目に涙を浮かべた。
「……状況説明を、頼んでも良いか？」
俺はどうするか悩んだ末……面倒であったが、葉平に話し掛けた。その女性が可哀想だったからな。葉平は空耳でなく嫌そうな顔で舌打ちしたが、説明してくれた。
「あっきーを押し倒してたんだよ」
「…………」
「それだけだけど？氷河早く出てってくんね？」
「駄目だろ！俺が言うのもなんだけど駄目だろ！」
また葉平に舌打ちされた。が、俺の居る前でヤるつもりはないらしく、彼女の両手首を押さえていた手を離して、彼女の上から退いた。女性は長いクセのある赤毛が乱れ、上のジャージを脱がされ、半分下着が見えている……ていうか、あっきー！？あれが遊関！？美人になりすぎだろ！
「瀬戸君……ありがとう……」
遊関が服の乱れを直しつつお礼を言う。
「私、彼岸花の言うことは逆らえないから……」
「え、それ、なんてエロゲ？」
「だよな」
二人の様子を見る。こういうことになってたし、観察するまでもないが二人はこの事件の関係者ではないだろう。
「ま、いいか」
黒塚や赤空葉菊の行方を聞いてみるが、「どうせ愛裕(黒塚のことだと一瞬分からなかった)はミス研だろ」「赤空先生は熊崎先生の所にいると思うよ」と言われた。先に黒塚の所にでも行ってみるか。
「じゃ、ごゆっくり」
「……ふえ？」
俺は葉平に手を振り、準備室のドアを閉めた。
「あっきー……続き、シよ？」
中でそんな声が聞こえた。

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氷河の受難。