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迷い迷える少女の世界の3話です。

庇神村はとても暗い村でした。
灯りは火の灯りだけで、古びた家が並んでいます。
その家にも灯りが見えないのですが、人が住んでいるのでしょうか。
歩いていると、いきなり誰かが襲い掛かってきました。
「うわっ、何ですか?」
「せっかく奇襲したのに、それだけかよ。まぁいい。これで俺は隷慈の名を捨てられる!」
私はあまり力は強くありません。
すぐに隷慈さんに捕まってしまいました。
「よし、贄を捕まえた…。これで俺は…」
隷慈さんは思い詰めていたような表情を見せます。
「何処へ行くのですか?」
「緋燈家。そこで秘祭の管理者様を呼ぶからな」
隷慈さんに連れられて、村を歩くことになりました。

隷慈さんは、ある家に向かう道すがら私にこの村の話をしてくれました。
「俺の緋燈家は、代々贄を選ぶ家系で、贄が見つからなければ緋燈家の当主が贄となる。当主が一番贄として相応しい力をお持ちだからな。」
「隷慈さんは、何をしているんですか?」
隷慈さんは、悲しい表情をしました。
「隷慈の名を持つ者は、緋燈家の最下層。雑用とか見張りとか…そんな役割しか与えられない。」
「あ…すみません…。」
悪い事を聞いてしまったのだろうと思いました。
だけど、隷慈さんは前を向いて言います。
「緋燈家の当主の息子でさえも、一度は隷慈の名を与えられる。だが、これがしきたりなんだ。役目を果たせば、名前を取り戻せる。」
「そうですかー…」
「だから、お前を利用させてもらう。そして、隷慈の名を捨ててみせる…」
隷慈さんは、決意をした表情で前を見ていました。

緋燈家が見えました。
緋燈家というのは、庇神村の中で大きなお屋敷みたいな家でした。
大きな扉を開けると、あまり灯りの変わらない廊下を通ります。
広い部屋に入ると、誰かいました。
「弥宵様。贄を連れてきました。」
隷慈さんが、深々とお辞儀をします。
「へぇ…すごいね、隷慈。」
私は弥宵さんに引き渡されてしまいます。
弥宵さんは、私をまじまじと見ています。
「これで元の名を…!」
「ちょい待ち。隷慈の名を捨てるには、他の当主の許可がいる。私は認めることが出来ないな。」
「何故!?」
隷慈さんが、声を荒げます。
「隷慈は、何も考えないで捕獲したのでしょ?だって、彼女は…」
「滅多に訪れない余所の者だぞ?この好機を逃せと?」
「うーん、私も緋燈家当主様が贄になるのはもう嫌だからなあ。」
「ならば!」
弥宵さんは、考え込んでしまいます。
そして、私を隷慈さんの下に返します。
「管理者の家に連れてきな。もしかしたら使えるかもしれない。」
「弥宵様…有難うございます。」
また村の中を歩く事になりました。
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