二話目です。

「さー、席について！」
チャイムが鳴ってから一分ほど遅れて担任の神坂美都依が教室に入る。
学級日誌と配る予定であろうプリントの山を抱えて、こちらを見る。
すると、担任はオーバーに驚く。
「って、着いてるじゃん！偉いねぇ、君達！」
上機嫌になり、教卓にプリントの山をどさりと置く。
学級日誌は担当であった赤羽条然の机に置かれた。
「じゃ、美都依さんがこれ配ってやるかなー！」
上機嫌のまま担任はプリントを配り始めた。
この人がプリントを配ると必ず余ったり足りなかったりが発生するから嫌なんだがね。
そして、配り終えると教卓に戻り、それを叩く。
「今日はいつも通り連絡なし！以上！解散！」
それだけかよ。
担任はすぐにスキップしながら、上機嫌のまま出て行ってしまった。
「まだＨＲの時間なんだけどね…。」
篝祇亜須磨がやれやれ、と肩をすくめる。
このクラスの連中はすでに担任の自由っぷりに慣れてしまっていた。
最初はかなり抗議とかツッコミとかあったんだけどな。
抗議は担任が聞き入れないわ、ツッコミは更なるボケで返すわ。
そのボケは騒がしい瑠子さんや光宮波乃、先原佑美さんによって、広がるし。
一週間で俺達は担任に慣れてしまったわけだ。
不必要な抗議もツッコミもしなくなった。
スルー能力が上がった、とも言うのか。
「全く、ちゃんと連絡してくれるんだろうな、あの人は。」
「さすがに担任の仕事はすると思うよ。」
亜須磨も信じ切れないのか苦笑いだ。
というか、してくれなきゃ困るのは俺達だ。

授業は何事もなく終わり、昼休みとなった。
何故か俺は瑠子さんと波乃と亜須磨と昼飯を食べるのが、当たり前になっていた。
たまに逃げ出して、如月才臥や椎名李卯や赤羽条然と食べることもあるけどな。
別にそれに対して彼女達は怒らないのが救いだ。
ちなみに俺と亜須磨は自分で作った弁当で、瑠子さんと波乃は、学食で買ったものだ。
女の子なんだから自分で作れよ、って最初に言った事があった、と思い出す。
でも、この二人はすっかり忘れたのか、そのままだ。
料理の出来ない女は好かれないって聞いた気がするけどな。というか俺は嫌だな。
瑠子さんにおかずを奪われながらも食べ終わり、瑠子さんと波乃がゴミ箱へ容器を捨てに行った。
捨てに行っただけのはずの瑠子さんが大慌てでこちらに来た。
「幽夜君！ひ、人が！エイリアンが廊下に！」
「はぁ？」
聞き返すしかなかった。
瑠子さんは、俺にどう伝えようかと真剣に悩み始めた。
そしてすぐに、途切れ途切れに落ち着くように説明を始めた。
「あ、あのね。廊下にふらっと出たのよ。そしたらね、い、いきなり人が現れたの！本当にいきなりだよ！？だから、エイリアンじゃないかって！あ、幽夜君も来てみればいいのよ！」
百聞は一見にしかず。
瑠子さんに引っ張られ、廊下に出る。
確かに廊下に座り込む男がいた。
「え、えーと…エイリアンです？」
普通の学生じゃねぇか。
扉を閉めた。
向こうで瑠子さんがぎゃーぎゃー騒ぐ。
うるさくて敵わないので、再び開けてやった。
「もう！幽夜君の意地悪！」
瑠子さんはぷんぷんと怒っていた。
俺はそれをあっさり受け流す。
「今日のおかずの恨みだ。」
それを聞いた瑠子さんは、おかずは君がいいって言うから貰ったんじゃないかー！とさらに騒ぎ始めるが、俺はそんなことを言った覚えはないので、スルー。
「あはは、エイリアンなんているわけないだろ？」
くすくす笑い、男が立ち上がる。
俺達のやりとりで笑ったんだよな。きっと。
「あの、誰ですか？」
俺が恐る恐る聞くと、男はあっさり名乗る。
「神崎澄久。ここの三年。」
三年と聞くと、ますます分からなくなる。
「なんで、ここに？」
「手違い、かな。」
理由を聞いたら、答えを誤魔化すように笑う。
手違い？本当に意味が分からない。
神崎先輩は、困惑する俺達を宥める。
「気にしないで。君達なら時期に分かる事だからさ。」
それだけ言って、去っていった。
今度はちゃんと歩いて。
瑠子さんがいきなり現れたというから、いきなり消える術でもあるのかと思ったのだが、そうでもないようだ。

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頑張って会話を減らしているのに、やっぱり増える。
いいや、もう。
頑張っているんだ。