忍者ブログ
一次創作ファンタジー小説中心サイト。 このサイトにある全ての小説の無断転載は禁止しています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アンハッピーシリーズ第一弾。
全5弾。

たまには幸せにしてあげたかった。


※天城芳示
魔術師の噂を聞いて、街外れの遊園地に来ていた。
目的は魔術師の討伐。
メンバーはいつもの三人。
「わーい、遊園地だー!」
「はしゃぐなって、恭二!」
恭二と氷河がいつものように振り回し振り回されてる。
「結構人いるね」
丙が辺りを見回す。
表向きは、ちょっと行きにくい遊園地だ。
ここに魔術師がいるなんて誰も知らない。
「なーなー、ちょっと遊ぼうぜー?ほら、あれとか!」
恭二がジェットコースターを指差す。
レールが円を描いている。
「あれ、すっごい怖い奴じゃね?」
俺は氷河を逃げられなくするように肩をつかむ。
「ほ、芳示さん、なんで俺の肩掴むのかな?」
「あの恭二は聞かないだろ。だったら、ちょっとくらい遊ぼうぜ、な?」
「俺はあんなのいいって!」
逃げ出そうとする氷河。
恭二には見えてないらしく、丙も呼ぶ。
「ほらほら、行こうぜ!丙も!」
「ええー、仕方ないなー……」
「だからって、丙まで俺を押さえ込まなくていいだろ!?」
ジェットコースターは、簡単に乗れた。
このジェットコースターは余程怖いのか、並んでいる人が少なかったのだ。

「あははははっ!」
ジェットコースターから降りると、恭二が腹を抱えて笑っていた。
「なんでそんなはしゃげるかな、もう……」
氷河はすでにぐったりとしている。
「いや、しかし、あれは怖かったなー」
「芳示かなり楽しそうだったもんね」
「あ、レインボーアイスだって!」
恭二がある屋台の看板メニューを差す。
正確にはレインボーソフトクリームだそうだ。
七色に高く積まれたソフトクリームは、どう考えても混ざりきってまずそうだ。
氷河が、近くのベンチに座る。
「ああー、もう限界だわ。お前ら買いに行ってていいよ。俺、休んでるから」
「情けねーな……」
俺が呟くと、氷河は小さくうるせぇよと返した。
先程のジェットコースターがかなり厳しかったようだ。
「分かった!待ってろよ、氷河!レインボーアイスだー!」
恭二が屋台に向かって走りだす。
俺と丙も慌てて追い掛けた。

「これ下さいなっ!」
「お、兄ちゃん、いいセンスしてんねー!」
「だろー?」
恭二がレインボーソフトクリームを頼むと、店員が上機嫌で用意を始めた。
店員の趣味でしかも受け入れられなかったんだな、可哀想に。
まぁ、普通にバニラソフトのが旨そうだもんな。
「はい、お待ち!気を付けろよ、兄ちゃん!」
レインボーソフトクリームを受け取る恭二。
七色なだけあって、高い。
「さんきゅー!」
恭二が上機嫌で、氷河の元に戻る。
また慌てて追い掛けると、途中で恭二の足が止まった。
急に止まるもんだから、恭二にぶつかった。
レインボーソフトクリームは脆くも半分落ちた。
目の前を見ると、氷河が誰かと話していた。
黒い服の女だ。
女は、氷河の目を隠すように手をかざす。
そして耳元で何かを囁いたかと思うと、氷河の身体ががくりと崩れ落ちた。
女は妖しく笑い、寄り掛かる氷河を支える。
「なにしてやがる!」
俺はその女が魔術師だと確信し、ハンドガンを抜いて氷河に駆け寄る。
女は、くすりと笑う。
「幸せをあげたのよ。彼を幸せにしてあげたかったから。」
「……何処がだよ。」
「ふふ、そろそろかしら。ほら、座って」
言われるがまま、ベンチに座る。
すると女が氷河を俺に返す。
ただ氷河が俺に寄り掛かるようにしただけだ。
驚いたが、慎重に氷河を支える。
すると氷河の身体がぴくりと動く。
目を開けたのか、ぼんやりとした目が俺を見る。
「……あれ?俺、いつの間に寝ちゃったのか。わりぃな、芳示。」
「いや、いい……けど」
女が氷河に何かをしたのは、明白だ。
俺は警戒しつつ答える。
氷河があれ?と声を出す。
「俺、いつの間にこんなの持ってたんだ?」
不思議そうに抜いたのは、魔術仕様のハンドガン。
笑顔でそれを俺に渡す。
「はいこれ、芳示のだろ?俺は戦えないから、必要ないし。返すよ。」
この時の俺は、どんな表情をしていただろうか。
向かいの女がくすくすと妖しく笑う。
丙が恐る恐る氷河に聞く。
「あのさ氷河、今日何しに来たか、覚えてる?」
氷河は答えた。
「遊びに来たんだろ?珍しくお前等が暇だっていうから。忙しいのは芳示と丙だけだもんな。俺は、軍とか入ってないから、暇で暇でしょうがないんだよな」
丙は困ったように笑う。
「――そっか、そうだよね」
「んで、次どこ行く?」
氷河がベンチから離れる。
丙は、女から距離を開けようと、適当に指差す。
「そうだね、あのホラーハウスとかどう?」
「つまんねーと思うぜ?」
意図の分からない氷河は、意外なチョイスだとしか思ってなさそうだ。
「まぁまぁ、行こうよ。」
丙が氷河とホラーハウスに向けて歩き始めた。

恭二がようやく口を開く。
「どうなってんだよ……?」
「氷河の記憶が操作されてる。きっとこの氷河は、本部も神血も吸血鬼も忘れてる。」
俺が冷静に返すと、女が付け足す。
「そう、今の彼は幸せよ。嫌な記憶を全て抜いたのだから。」
「幸せ……?」
「ええ、後は二度と思い出さないように契約をすれば完璧。」
女が何処からか紙とペンを持ち出す。
「魔術師か……っ!」
俺はハンドガンを女に突き付ける。
女は、反応もせずに嘲笑う。
「止めてよ、悪魔には効かないんだから。」
「悪魔だと……?」
「私は、契約の悪魔。魔術師なんかじゃないわ。そんな事よりいいの?」
悪魔が氷河達を指差す。
追ってこない俺たちを不審に思ったのか、氷河が俺たちを呼んでいた。
「私なんかを追い詰めるより、彼と遊んであげたら?」
「くそっ!」
ハンドガンをしまい、氷河の所に行くことにする。
「恭二、行くぞ!」
「あ、ああ、うん」
戸惑いながらも恭二も氷河の所に行く。
振り返ると、悪魔が手を振っていた。
苛ついて舌打ちをする。

-----------
幸せな氷河が書きたかった……!
純粋に楽しそうな氷河が、書きたかった!

こんな仕掛けであろうとも!

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
天草八津芽
性別:
女性
自己紹介:
BLでファンタジー小説が多いです。
ひっそりひそひそ書いてます。
ツイッター
メインアカウント(妄想ばかり)


オリキャラ紹介bot
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
P R

Copyright © [ 妄想の隠れ家 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]