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零雨様より、鹿屋と末沢の話を頂きました!

前回の続きであります。

※末沢針弥
僕が何らかの罠の中にいるっていうことは理解した。肝心なのはここから出ることだ、こんな道が変わる洞窟調べてたら無限に調べ続けることになるし。
壁に付いている蒼い鉱石はさっきよりもかなり増え、半分以上壁を覆っていた。それほどまでに深く来てしまったということだろうか。
「それよりも……」
視線を下げ、さっきトラバサミで挟まれた足を見る。結構深くまで傷つけられたのだが、今は既に血が止まっている。その血が止まっているのだが、その止血のされ方が少し不安なのだ。傷の部分が壁のと同じ蒼い鉱石で覆われびっしりと張り付いている。
「どう見たって変だよねぇ」
どうしたものかとちょっと考えてみるが、良い方法が思い付かないから早々に諦めた。鹿屋さんと一緒だったら絶対怒られそうだけど。
いつまでも座っている訳にはいかないので、ゆっくりと立ち上がり当てもなく歩き始める。右足は動かないので軽くびっこを引く形になりながら。
「とは言え、どーすればいいんだろう……」
僕はいつも任務以外では罠は無意識に抜け出せていたり破壊していたりとしているので、残念ながらこういうイザという時役に立てないのだ。
途方に暮れるしかなかった。もちろん、そうしている間にも覚えている道を歩いてある程度の道の変化の確認もしている訳なのだけど。さっきは鹿屋さんが来てくれるかも、なんて甘い考えをしていたが、そもそもこんなトラップハウスとも言える場所に鹿屋さんが何の準備も無く入る訳がない。来るのに時間がかかりそう……いや、違う。僕は本部の人間なんだから鹿屋さんに頼らず自分で脱出出来るくらいにはならないと!普段はちゃんとやってるんだから!
僕の記憶では帰り道だった壁を触ってみる。何の感触もしない。触っている、という感覚さえもない。まるで、後ろから見えない糸が腕に絡まって触れない、みたいな。僕は触った感触があるのか確かめたくて無理矢理腕を押してみる。
「うわ……っ!?」
見えない糸が切れたように唐突に体が傾き、僕はそのまま前のめりに転んでしまった。
「いたた……あっ!」
顔をあげると、さっきまで無かった道が現れていた。これはもしかしたら出られるかもしれない。それと、道の先には男がいた。
「……鹿屋、さん?」
僕は立ち上がった。その音に気がついてか、男は振り返ってこちらを見た。暗くて顔がよく見えない。
「鹿屋さんですか?」
「…………」
反応が無い。もしかして、このトラップハウスを作った人間だろうか。そう考えたらこの状況、マズいんじゃないか?
沈黙の中、男はこちらへ一歩踏み出す。咄嗟に後退り銃を取り出してしまった。
「あ、えと……」
どうしよう。つい警戒してしまったが、もしかしたら敵意は無かったかもしれないじゃないか。でも、ここで銃を手放したらもしもの時はどうしようもないので手放すのも危険だ。
「ご、ごめんなさい。えーと、信じられないかもしれないですけど、敵意は無いんです、よ……」
無反応。
「えっと、聞こえてます?」
無反応。しかし、男はまた一歩前に踏み出した。僕も後ずさる。それに習って男も無言で近付く。
「ちょ、ちょっと……近付くと、撃ちますよ!」
銃を男へと向けると、ようやく相手は止まった。相手との距離は数メートル。相手に距離を詰められるのが先か、僕が撃つのが先か微妙な射程距離だ。僕は構えたまま、もう一歩下がる、が。
ばしゅん、と。
「え」
キョロキョロと周りを見て、足元を見る。足に、ボウガンの矢が刺さっていた。認知した瞬間、太股に激痛が走る。
今日は厄日だ。トラップに引っ掛かって二回も怪我するなんて。しかも二回とも足。僕の足は呪われてるんじゃないだろうか?……そんな呑気な考えが走灯馬の様に駆け抜け、ほんの数瞬であるが意識が男から離れてしまった。
たった数瞬、されど数瞬。その隙を敵(多分)が逃す訳がない。あっという間に距離を詰められ、そのまま突き飛ばされた。体が後ろへ行き、地面に叩きつけられる。反射的に目を瞑ってしまった。目を瞑った所で痛みが軽減する訳がない、普通に背中が痛い。体の上で相手の息遣いを感じる。僕はゆっくりと目を開けた。
「……か、鹿屋さん?」


※鹿屋牙狼
ジャリ、と小石の擦れる音が聞こえて、俺は振り返った。
「末沢!」
そこには末沢が立っていた。唐突に、現れた。いや、末沢の後ろにさっきまで無かった道があるので、幻覚で見えなかっただけかもしれない。末沢はをちらを目を凝らしてじっと見ている。俺が分からないのだろうか?
「俺です、鹿屋ですよ」
そう言いながら俺は末沢に向かって近付こうとした。しかし。
「……ッ!」
何故か末沢は後退り銃を取り出した。まるで、知らない人間に警戒するように。
「末沢」
呼び掛けてみるが、無反応。こちらの声が聞こえない様だ。そもそも俺のことを認識しているのか?蒼い鉱石の効果が未知数なので何とも言えないが、敵の姿と錯覚していたら、いきなり撃たれなかっただけマシと言えるだろう。
「面倒なことになった……」
体に触れさえすれば、御守りがある程度幻術を打ち消してくれるはずだ。少なくとも俺の姿が分かる程度には。
「……まあ、隙さえあれば、なんとかなるか」
紙とペンなど筆談できる物があれば良かったのだが、生憎そんなものはない。ので、末沢の隙を突いて近付くしかないということだ。末沢は俺よりも窮地に強いので、余り追い詰め過ぎると俺が撃ち殺される可能性もあるが。
また数歩近付いて見る。と、銃を向けられた。やはり曲がりなりにも本部の人間だ、早々隙なんて見つからない。
末沢が俺から距離を取るように一歩下がった、時。
ばしゅん、と。
「な……ッ!?」
末沢は何が起こったか理解出来ていないようで、キョロキョロと周りを見、足元を見る。末沢の太股には、ボウガンの矢が刺さっていた。顔が苦痛に歪んでいく。
その時出来た、数瞬の、隙。
相手を慮るよりも先に、体が動いた。駆け出し、突き飛ばし、自分もそのまま飛び込む。先程末沢が居た位置には数本のボウガンが刺さっていた。
「……か、鹿屋さん?」
「ようやく気が付いたか……どんだけ鈍いんだか」
末沢はようやく俺を認識したらしい末沢は馬鹿みたいに口を開けて俺を凝視していた。
「え、さっきの人って……鹿屋さんだったの?」
「そうですよ……蒼い鉱石の幻覚効果でね。詳しくは帰ってから説明しますんで」
俺は末沢の上から退いて側にしゃがむとちょっと動かないで下さいね、と末沢の全身を観察する。左太股にボウガンの矢。右足にはびっしりと蒼い鉱石が貼り付いている。
「この足、怪我したんですか?」
そう聞くと末沢はゴニョゴニョと何か言い出した。が、鼻をつまんで黙らせた。
「理由は簡潔に言う!」
「ごめんなさい……。と、トラバサミに挟んじゃって……」
珍しい。探検家の末沢がそんな簡単な罠で怪我をするなんて。
「これは蒼い鉱石の共鳴効果ですね。血液に付着し、血管を通って徐々に感染者の全身を鉱石に変えてしまう」
さっと末沢の顔が青ざめる。
「早く帰りましょう」
コクコクと末沢は頷いた。
「よ……っと」
俺は相手の背と太股の下に腕を通して持ち上げた。俗に言う「お姫様抱っこ」ってヤツだが、大した意味はない。末沢の足にあまり負担を掛けないですむし、末沢の反応が面白いからだ。
「ちょ、ちょっと……!」
案の定末沢は困ったように顔を赤らめた。俺は思わず笑ってしまった。
「何です?担いだ方がいいですか?」
「背負うって選択肢はないのっ!?ていうか、一人で歩けます!」
「いや、駄目です」
お姫様抱っこはともかく、歩かせるのはあまり良くない。彼の足の鉱石は激しい運動などをして血液の循環を激しくすると、活発化して鉱石化の進行が早まる。一刻も早く鉱石化を治すために走って洞窟を出るつもりだが、それを末沢にさせるのは本末転倒だ。
「俺が末沢を担いで走って出た方が効率が良いんですよ」
「分かりました……」
彼は恥ずかしいのだろう、顔を赤くして俯きながらも納得して黙る。俺は面倒な空間からさっさと脱出するべく、走り出した。


「牙狼さん、お疲れ様」
「小浜さん。お疲れ様です」
「黒葉でいいのに。……今回のお迎え、大変だったらしいね」
「ええ、まあ……」
「でも良かったじゃないか、しばらく一緒に居られるよ」
「え、いや、その……」
「看病の時位素直になってみれば?針弥くんも喜ぶんじゃないの」
「……喜ぶよりも気味悪がられると思いますけど」
「反応があるだけマシだよ。洋斗は僕が毎日デレデレしてあげてるのに無反応なんだもん」
「…………」
「ま、嘘だけど」
「無表情で言われても」
「ふふ……何なら、僕が騙してあげようか?」
「……いえ、それには及びません」
「そっか。じゃあ楽しんでね、末沢くんによろしく言っといて」
「はい。ありがとうございます」

―――――――――――――――――――――――――――――――――
というわけで、鹿屋×末沢でした。
サディストと天然キャラということで、割と甘めです。
末沢が自由人で鹿屋が苦労人ってのがいい。

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