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零雨様より、小浜と島原の話を頂きました。

小浜×島原です。

※島原洋斗
「ねえ、付き合ってほしい所があるんだけど」
ある非番の日、部屋で漫画を読みながらくつろいでいると、黒葉が部屋に入ってきた。
「なんだ?任務関係か?」
「んー、まあそんなとこ。いいでしょ?」
俺が尋ねると何だか曖昧な答えをされてしまったが、食べ物を奢ると言うので付き合うことにした。いつもの制服に着替え直して本部を出る。
本部から出るとき、ついでに皆の外出表をチェックしてみたが、任務で出掛けているのは四分の一も満たなかった。
「平和だねぇ」
黒葉が横から除き混んで言った。
「最近大きな事件もないし良いことだろ。……外出札は『任務』でいいか?」
「いや、『外出』で。僕のもお願い」
俺と黒葉の外出表の欄を「外出」に切り替える。
「何処行くんだ?」
「行ってからのお楽しみで」
何にも聞かされず俺は黒葉に着いていく。黒葉はサプライズが好きだ。俺に黙って色々やって驚かせるなんてしょっちゅうだ。……まあ、俺もそうだが。
俺たちは昨日の任務がどうだったとか今日の夕飯なんだろうな、だとか他愛もない話をしながら街の表通りを歩く。
「ついたよ」
「……なんだあ、ここ?」
「見れば分かるじゃん。喫茶店だけど?」
俺は任務関係だと言うので勝手に何処かの交渉だとか治安の悪い所の視察だとか、そういう物を想像していた。そんな予想を大きくブチ壊し、目の前にあったのは小綺麗で可愛い喫茶店であった。
「……接待の、視察か」
俺の無い頭から絞り出したギリギリ納得出来る理由がこれだった。我ながら今間抜けな顔をしていると思う。だが、黒葉はアッサリと否定する。
「違うよ。ただ個人的に行きたかっただけ」
「おま……っ、任務だって……!」
「否定はしなかったけど、肯定もしなかったよ?」
白々しく笑った黒葉は俺の手首を掴んで中へと入っていった。


店の中も外から予想出来る通り、可愛いファンシーな感じだった。通された席は、外の景色がよく見える場所でソファにローテーブル、という作りだった。可愛らしいのには変わり無いが。
「ここ行ってみたかったんだよねぇ」
黒葉は演技でなく嬉しそうにぼふっとソファに腰掛けた。立ち尽くしてる俺を無言で見上げるので、俺も黙って隣に座った。座り心地も良く、長時間くつろげそうだが、男二人が座るにはやや狭く感じられた。ふとした瞬間、膝とか腕が当たって邪魔そうだ(カップルじゃあるまいしどうでも良いのだが)。
「席がなくてカップル席しか無かったんだ」
ごめんね、と言いながらも黒葉は口許を押さえて笑うのを堪えていた。申し訳無いとは全く思ってないだろ!俺はそんなに嫌そうな顔をしていたんだろうか。
俺は気持ちを切り替え(顔は切り替わってないが)、メニューを開いた。
「……奢ってくれるんだろ。なんか美味そうなモンが良い」
「えーとねぇ、洋斗はガレットが良いんじゃないかなぁ」
黒葉は首を傾け、そのガレットとやらのページを開く。
「ガレットって何だ?」
「甘くないクレープって言うのかな。クレープでツナマヨとか入ってるのあるでしょ?あれが豪華になった版」
「なるほど」
おそらくかなり曲解した解説なんだろうが、分かりやすくて納得した。ミルフィーユだとかの繊細な菓子よりも俺に合ってる。
「あ、飲み物も選んどいて。ここの紅茶は美味しいからオススメ」
「美味しいから、って何度も来てるような口ぶりじゃねぇか」
「実際何度も来てるよ」
じゃあ今回も俺を巻き込まないで行けば良かっただろ、と思ったが、俺でないといけない何かしらの理由があるのは容易に想像できるので言わない。その考えも黒葉は分かったのか、付け加えるように言ってくれた。
「今回は『トクベツ』を頼みたいんだ。洋斗にもちょっと分けてあげる」
「ふーん……」
結局俺はオススメと書いてあるチーズとベーコンの半熟卵乗せガレットという物を頼んだ。紅茶は黒葉がアールグレイが良いと言っていたのでそれにした。
「黒葉は?」
「これ。『カップル限定☆苺のふんわりミルフィーユパルフェ』で」
「……なんだって?」
「『カップル限定☆苺のふんわりミルフィーユパルフェ』」
「…………」
どうやら聞き間違いではなかったらしい。後半は良い、普通のメニューだ。だが、前半は何だ?「カップル限定」だと?
「カップルじゃねーよ!」
「うわっ!」
店員が去った直後、思いっきりツッコむ。いきなり叫んだせいでか、黒葉がビクッと体を震わす。しかし今はそんな気遣いをしている場合ではない。
「カップルって何だよ!?え?俺とお前の事かあ!?」
「そ、それ以外に何があるっていうのさ」
俺の豹変具合にちょっと黒葉がビビっている。いいぞもっとビビれ。
「洋斗だって良いって言ったじゃん!」
「聞いてねーし!」
「もう店入ったし頼んだから今更ヤだとか言わないでよねっ」
「知らんわ!」
怒りに狂った俺は右手の中指と親指とで輪を作り、黒葉へと構えた。黒葉はさらにビビった顔になり後ろへ退こうとする……が、ソファが狭いせいで無意味だ。俺は右手を構えながらじわじわと体を寄せる。
「やっ……!」
黒葉はとうとう目を瞑ってしまったが、俺は容赦なんてしない。右手を黒葉の額に添え、思いっきりデコピン。
「いっ……た……っ!!」
バチンッ!と良い音が響いた。黒葉はデコを押さえて悶えている。腹いせのつもりか、俺の背中を片手でバシバシ叩く。
「あー、メシまだかなー」
俺はそんなヤツを無視してソファに座り直す。丁度店員が紅茶を持ってきてくれたので、ポットからカップに注いで飲む。黒葉が言うだけあって美味しい。
「そ、そうそう……真面目な話を、するとさ……」
屈んで額を擦りながら俺の方を見上げた黒葉は思ったよりも真剣な顔をしていた。痛いのかまだ喋りが途切れ途切れだ。
「周辺に……指名手配中の、魔術師の目撃情報が、あった」
俺は無言で眉を動かし、先を促す。黒葉は話を続けた。
「何か事件だとか……そういう情報はないけど、警戒に越したことはないよ」
俺は遅ればせながら、黒葉が俺を引き連れた理由を理解した。その魔術師への牽制だ。本部の人間が彷徨いていると分かれば、そこへと近付きたいとはまず思わないだろうし、行動も起こしづらくなる。制服で出掛けたのも、わざわざ通りからよく見える席なのもそういう理由か。黒葉は皆まで言わないが、つまりはそういうことだ。
「ったく、素直じゃねーなあ。初めっからそう言えば良かったのによ」
「……うるさいな」
魔術師そのものの討伐には鹿屋を向かわせるらしい、とか飯が来るまで色々な話をした。
「お待たせいたしました、『チーズとベーコンの半熟卵乗せガレット』と『カップル限定☆苺のふんわりミルフィーユパルフェ』になります」
ローテーブルの上に皿が置かれ、一気にテーブルの上が豪華になる。俺のガレットは確かにクレープっぽいが、生地の色が違うし、野菜が添えてあった。大きな皿にわざわざ平たい物を乗せているので、フランスのフルコースの大袈裟な感じを彷彿とさせた。
黒葉のミルフィーユパルフェはと言えば、大きなミルフィーユが二つに、色々と小鉢が回りに置いてあった。量が多く、確かにカップル用と言えるだろう、色々と二つあるし。
「うわあ、美味しそうだね」
黒葉の目が輝く。早速ナイフとフォークを両手に持って、ミルフィーユを攻略し始めた。俺もガレットを食べる為にナイフとフォークを持つ。
「うん、美味しい!」
俺たちは食べるのに夢中でしばらく無言になる。
「ねえ、そのガレットも一口くれない?」
ミルフィーユを半分食べた黒葉はちょっと余裕が出てきたらしく、こちらに視線を向ける。
「ああ、美味いぞ」
「僕のミルフィーユもちょっと食べて良いよ」
お互いの皿を入れ替えて、俺はミルフィーユを切り取って食う。
「あっ、洋斗!食べ過ぎ!」
「ちょっとじゃねえか」
「それの何処がちょっとなのさ!」
黒葉は唸って皿を元に戻した。何人もの人間を手玉に取る騙し屋の姿は見る影もない。ただの甘い物に執着する男である。
「それは何なんだ?」
俺はさっきから気になっていた小鉢に入ったアイスと液体のチョコレートを差す。
「これ?フォンデュにするんだよ」
「フォンデュ?」
黒葉はフォークで添えられている苺を刺し、そのチョコレートに突っ込んだ。くるくるとチョコレートが垂れないように器用に回しながら黒葉は俺に苺を向ける。
「口、開けて」
言われるがままに口を開く。苺を入れられた。食べる。飲み込む。
「……うめえ」
「でしょ?」
「もっとくれよ」
「えー……」
こんな感じで俺は何度も黒葉にフォンデュを貰った。
今思い出すと中々にカップル的な事してんな。恥ずかしい。


「よう、島原」
「おっす、留川」
「お前な、一応先輩だぞ?敬語使えよ、敬えよ」
「知らん」
「今度の任務の時に敵と一緒に潰してやるから覚悟しとけ」
「避けるから関係無いぜ!」
「ともかく。今日何処行ってたんだよ?」
「喫茶店かどっかで黒葉と飯食ってた」
「喫茶店なんてお前にゃ合わないぜ」
「うるせー」
「まあお前たちが仲良さそうで先輩の俺は安心だ」
「何が先輩だ」
「首突っ込んでやるからちゃんと経過報告しろよ!」
「ぜってぇしないぞ」
「しなきゃ減給」
「嘘だろ!」

―――――――――――――――――――――――――――――――
というわけで、小浜と島原の甘い話でございます。
私の中では島原×小浜で書いてますが、まぁ逆でも全然ありです。
イチャついてるだけで、いいんだよ。うん。
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