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零雨様より、手仕舞と東火の話を頂きました!

あざとい策師。

※弓ヶ浜東火
「あ」
「あらどうも、東火さん」
任務も終わり、特にすることが無くて本部内を彷徨いていた私は手仕舞君と出会った。
「任務終わりですか?」
「えぇ、津川と芳示と井是とで潜入討伐に行ってきました」
隠密狙撃が得意な面子(芳示君は別格だ)が揃った任務だったらしい。手仕舞君は単独で任務をこなすことが多いし、得意なので今回の任務は大変だったろう。しかも、お互いの姿が見えない隠密潜入任務では特に。
「それはお疲れ様です」
「ええまあ……俺は見事な仕事でしたけどね!」
手仕舞君は無駄に自慢気にそう言った。何故か手仕舞君はそういう変な自慢が好きだ。見栄を張っているのか、嘘なのか、本当なのかは自分には分からないが。
「じゃあこれから報告に?」
「はい。白河さんに報告して今日はおしまいです」
「自分も着いてっていいですか?暇なんですよ」
「いいですけど、何も面白いことなんて無いですよ?」
「まあまあ。私が着いていきたいだけなんで気にせんでください」
「はあ……」
手仕舞君の後ろに回り、背中を押して進むのを促す。彼は押されるがまま素直に歩き出した。
「……ところで、東火さん」
「何でしょう?」
しばらく歩いていると、手仕舞君が口を開いた。丁度良いので隣に並んで歩く。
「何で俺のこと名字呼びなんですか?」
言葉に詰まる。
「え……そりゃ……普通、仕事仲間は名字で呼ぶ物だと思うんですが」
手仕舞君の顔をちらと見ると、残念ながら真面目な顔だった。手仕舞君は真面目な顔をして結構突拍子も無いことを言うのだ。
「俺は東火さんのこと名前で呼んでるのに?」
「それは、皆弓ヶ浜って呼んだら区別がつかんでしょう……」
「そんなの不公平だ!」
顔をしかめて手仕舞君は怒った。何が不公平なのか。自分には全く理解出来ない。
「僕も東火さんに柳賀って呼ばれたい!」
「えー、と……」
もし自分と手仕舞君が旧友と言えるほどの年月を共に過ごしてきたのなら、自分は手仕舞君の扱い方を熟知していて今の状況も「はいはい」みたいなノリでスルー出来ただろう。しかし、自分と手仕舞さんの出会いはそう長くはないし、未だに彼の思考回路は把握出来ない。
不機嫌な顔でこちらをじっと見る手仕舞君に根負けした。
「……柳賀、君」
呼んだ途端、一気に機嫌が変化しニコニコし始めた。なんて分かりやすい。
「東火さん!」
「……何です?」
「呼んだだけです!」
「……さいですか」
このやりとりを面白いと感じるか感じないかは人によるだろう。自分は面白くて好きなので、良い付き合いになっているんだろう。


「お待たせしました」
「いえ、自分が勝手に待ってただけなんで」
手仕舞君の報告が終わり、白河さんの部屋から出てきた。私がまだ待っているとは思わなかったのか、すまなそうに声を掛けてきた。
「この後どうするつもりなんですか?」
「消耗武器の残りが少なくなってきたんで買い出しに行こうかなーって」
手仕舞君は一旦言葉を切り、下を見て、上目遣いで話し掛けて来た。何故。
「付き合ってくれます?」
「ええ、もちろん」
即答。暇なんだから付き合わない訳がない。
本部を出ると、彼に案内されるがまま、薄暗い裏通りだとか狭い路地裏だとか、変な道ばかり通る。そんな道にある「これ、店なの?」と言えるような店に彼は何食わぬ顔で入る。
「……よくこういう店、見付けますね」
「ハハ、俺の武器のレパートリーの中には特殊な物もありますからねぇ。こういう店じゃないと無いんですよ」
虫取り網とか、と手仕舞君は笑って言ったが、流石に虫取り網は冗談だろう。
「私は武器とか使わんので興味深いですねえ」
「あ、そっか。妖術って何か……杖とか道具もいらないんですか?」
「弓ヶ浜の血があるんで媒介は必要無いんですよ」
「へえ……。魔術とか妖術使える人って憧れます」
店の中の展示されている武器(?)をチェックしながら、手仕舞君は羨ましそうに私を見て笑った。
「私は近接戦出来る方が羨ましいですけどね」
妖術は中々に便利な物だが、如何せん近接戦闘に弱い。魔術師系全てに言えることであるが、自分もその例に漏れず運動能力は並である。
「菅谷みたいに俺が東火さんを守ります!……って言えたら良いんですけど」
彼は困った顔をしてそう呟いた。手仕舞君は色々な武器を持ち合わせており、近遠共に戦えはする。しかし、そもそも彼の近距離スタイルが紙一重で攻撃をかわしてヒットアンドウェイ、という人を守るには向いてない戦い方なのだ。そのスタイルを変えるのは、やはり難しいだろう。
ちゃんとした算段もなく「俺が守る」と無責任に言うよりは、素直に守れないと言った方が好感が持てた。
ていうか。
「……私今ナチュラルに告白された?」
「告白?誰がですか?」
素で言ってたらしい。私は苦笑いして誤魔化した。
「これくださーい」
私にはどういう用途で使うのかよく分からない武器を手仕舞君は大量に買った。荷物を持たせて貰うと、思ったよりも軽い。
「これ位軽くないと駄目なんですよ。俺、体力ないし回避重視だから」
それでも色々持つから重いんですけどね、と笑った。確かに彼の戦い方は多種多様で見ていて面白い。なんでそんなめんどくさいやり方なんだと思うときもあるが。
私達は店を出て表通りをぶらぶらとする。その最中にちょっとお洒落で可愛いカフェを見付けた。
「休憩しますか?」
「いいですね……あっ」
「どうしました?」
「島原さんと小浜さんが……」
私達は咄嗟に隠れて店内の様子を伺った。島原さんはふてくされたような顔だが、小浜さんは楽しそうにニコニコしている。食後なのか食前なのか、まだテーブルには水しか置いてない。
「……行きましょうか」
手仕舞君は黙って頷き、二人の先輩方に見付からないようにこそこそ店の前を通った。


「うーん、帰ります?」
「そーですねぇ……」
どうでもいい話をしながら街をしばらく彷徨くと、お互いなんとはなしにそんな話になった。
一軒のドーナツ屋の前を通る。
「良い匂いがしますよーとっても美味しそうですよー」
そう言いつつ手仕舞君はチラチラとドーナツ屋に視線を向けるが、結局通り過ぎる。食べたければ言えば良いのに。三度目に未練がましく振り返った時、私は助け船を出してあげた。
「……皆に買って帰りますか?」
「それ良いですね!」
手仕舞君は一瞬でドーナツ屋の前に立っていた。なんという素早さ。
「全部で何種類あります?……あ、二十種類ですか」
「じゃあ全種類三個づつ位買ってけば良いかと」
「そですね」
手仕舞君が店員に注文した。頼んだ後に思ったが、全員分って結構バカにならない値段だよな。
長かったのはここからだった。
「ああー迷うなあ……」
彼は超が付くほどの真剣な顔でショーケースを見ている。
「チョコホイップも悩むし、さくさくベリーも捨てがたい……ノーマルキングも美味しそうだし……」
優柔不断だ。それもかなりの。手仕舞さんはこうしてかれこれ十分以上悩んでいる。店員も持ち帰りの箱に全部詰め終わって苦笑いしながら見ている。
「手仕……じゃなくて柳賀君」
「な、中々決められなくてごめんなさい……」
「ついでに私の分も一個選んでください。柳賀君の好きなのを二つ選んで、半分こしましょう」
「ええっ!良いんですか!?」
手仕舞君はバッと振り返り目を輝かせた。が、少々遠慮の色が見える。欲望と遠慮の狭間で悩んでいるようだ。
「私も自分じゃ決められんのです。だから手仕……柳賀君に任せます」
「やったー!あ、ありがとうございます!」
彼は満面の笑みで両手を上げ(そのままの意味で)小躍りし始めた。ちょっと恥ずかしい。後から取って付けたようなお礼を言われるが、ちゃんと感謝されてるのは分かっているので文句はない。
「えーどれにしよう」
手仕舞君はこれから選ぶのに更に十五分掛かった。


「手仕舞、お帰り」
「あ、津川だー」
「ドーナツありがとうな。……デートはどうだった?」
「えー、そんなんじゃないよ?」
「待ち伏せてた癖によく言う」
「フハハ、バレなければ良いのだよ、バレなければ」
「何故ムスカ声」
「これからも協力してよね!プンスカプンプン!」
「暇だから良いけど……」
「『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んで爆発してお詫びをしろ』って言うし」
「ひどい!」

―――――――――――――――――――――――――――――――
というわけで、手仕舞×東火です。
手仕舞が食えないキャラになりましたぜ。
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