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零雨様より、手仕舞と東火の話を頂きました!

恋文の日記念。


※弓ヶ浜東火
最近、本部内で人の視線を感じる。
昔ならば弓ヶ浜という理由で見られているんだろうと判断するのだが、そういう視線で私達を見る人間は本部には居ない。外でならともかく。
だから、こんな付け回す様な視線に心当たりが無くて困っているのである。
「はあ……」
やはりずっと見られているという事を意識してしまい、あまり落ち着けない。唯一落ち着ける自室でついため息を吐いてしまった。それを文弥に見付かってしまい、声を掛けられた。
「どうしたの、東火兄さん?」
「……いや、別に……」
「嘘だろ。最近兄貴元気ないし」
雨境に突っ込まれた。バレていたのか。
「なんか、本部の中で最近視線を感じる」
ぽつり、と呟くように言うと、全員が目を丸くした。
「それは、誰か分かってるのか?」
雄飛兄さんが心配そうに言うが、私は首を横に振った。誰だか分かったら、こんなにストレス溜まっていない。
「えーと……兄さん、あのね」
何故か雨境と文弥が気まずそうに視線を合わせてモジモジしていた。
「何?」
「本当に気が付いてない、の?」
「え」
二人は事情を知っているのか、そんなに簡単に見破れる様な物なのか。私には分からないが、考えてもさっぱりだった。
「……ああ」
雄飛兄さんがなるほど、と納得したように手を合わせる。そんなに思い付きやすい物なのか!?
「……まだ分からんのだが」
「じゃあ、自分で見付けなよっ」
教えてほしいと頼むと、雨境はニンマリ笑って意地の悪いことを言う。普段弄られてるからってこういう所で仕返ししなくったっていいのに。
私はそのまま三人に部屋から追い出されてしまった。自分の部屋なのに……。
「あれっ、東火さんどうしたんですか?」
部屋の前で立ち尽くしていると手仕舞君が偶然通り掛かった様で話し掛けてきた。
「あ、あぁ……手仕舞君」
「柳賀、です!」
「柳賀君……弟たちに部屋を追い出されてしまって」
手仕舞君は何故かニコッと笑った。
「それなら俺と一緒に遊びましょう!」
「……はい?」
「駄目、ですか?」
「駄目ではないですけど……」
ああ、また今回も手仕舞君のペースに巻き込まれて押し通されてしまった……。どうも手仕舞君に誘われると自分は断れないようだ、読めなくて。
「それで。遊ぶって具体的に何するんですか?」
「考えてません!」
あまりにはっきりあっさりと言われてしまった。考えてないって……余りの無計画さに目眩がしてくる、いつもの事だが。謎の視線の人物も自力で探さなければ行けないのに。
「あれ?」
「どうしたんです?」
「いや……」
今は部屋の外に居るのに、視線を感じない。
「柳賀君、ちょっと相談したいことがあるんで食堂に行きましょう」
彼の表情が物凄く輝いた。「俺を頼ってくれるなんて!」と口でなく顔で言っている。
「はいはい!行きましょう行きましょう!」
私の手を半強引に握った手仕舞君は、食堂に向けて廊下を駆け抜けていった。


「コーヒー入れてきますね」
食堂の窓側の方に席を確保すると、手仕舞君は席を離れた。その間、私は上がってしまった息を整える。
「はぁ……」
人目のつく食堂でも、人の視線は感じない。私一人じゃないからかと思ったが、今も感じないので、その可能性も消えた。
「うー……む」
「お待たせしましたあ。ブラックでいいですよね?」
「ああ、どうも」
手仕舞君がコーヒーカップを二つ持って戻ってきた。カップの中にはコーヒーが入っているのに、不安定に揺れていないのは流石と言ったところか。
手仕舞君はカップを置いて私の向かいに座る。私は一口飲んでみる。薫りと味がインスタントだった。
「ブラック飲めるって凄いですよねぇ」
そう言いつつ、手仕舞君はミルクを大量に入れ、角砂糖を何個もぶち込んでかき混ぜている。
「……それを飲める方が私には凄いと思いますけどね」
「そうですか?」
美味しいですよ?と普通に言われてしまい、私は渋い顔をした。あんなの糖尿病への階段以外の何物でもないだろうに。
「一口飲みます?」
勧められたので、一口飲んでみる。……ゲロ甘とはまさにこの事だろう。まあ、手仕舞君の戦い方は私よりも神経を使うので、糖分が欲しくなるのかもしれない。多すぎだとは思うが。
「えへへ」
手仕舞君が戻ってきたカップに口をつけ一口飲んでから、頬をだらしなく弛ませる。
「東火さんと間接キスだぁー」
「……お前はガキか!」
思わず素で突っ込んでしまった。珍しく顔が赤くなるのが分かる。何故か彼は怒られたのに更にデレデレした。
「東火さんの素が出てくれて嬉しいです」
「……すんません、取り乱しました」
「俺としてはずっとそれでも良いんですよ?むしろそうして下さい!」
「あーいやいや、それは遠慮しときます」
やっぱり彼は読めない人間である。ゴホン、と一つ咳払いをして私は自分を落ち着かせた。
「えっと……相談って何ですか?」
すっかり忘れていた。
「最近ですね……変な視線を感じるんです」
手仕舞君は変な顔をした。言い表しがたい、微妙な顔である。
「視線、ですか」
「いやね、ただそれだけなんですよ。でも、ずっと視線を感じていると疲れちゃって」
「大変ですねぇ……」
「今は感じないんで、楽でいいです。もしかして、手仕舞君が私を見てたせいだったりして!」
私が笑うと手仕舞君も一緒に笑ってくれたが、同時にもっと微妙な顔になった。
「俺が何とかしますよっ」
微妙な顔でぎこちなく彼は笑顔になる。
「本当ですか?いやぁ、助かるなあ」「ええ、任せてください!」


良い様に手仕舞君を利用してしまった感があるが、私の助けになることを手仕舞君は望んでいる様だし、私も助かるしで今回ばかりは甘えさせて貰う。
そして、手仕舞君が宣言してくれた直後からしばらく、全くその気配を感じなかった。
「あの件、解決したの?」
また兄弟で私の自室に集まった時、文弥が尋ねる。
「あの件って?」
「変な視線のこと」
「ああ。手仕舞君が解決してくれた」
文弥含め、三人とも妙な顔になった。
「手仕舞君って、東火に近付いてくるあの手仕舞?」
「それ以外に誰がいるんだ」
「…………」
三人で顔を見合わせ、前回の様にチラチラと私の様子を伺っている。
「ま、まあ、解決したならそれで良いんじゃないか!」
雄飛が明らかに取り繕った笑顔でそう言った。
「そうそう!ところで、俺達話し合いたい事があるんだけど、兄貴出ていってくれない?」
「ここ私の部屋なんだが!?」
私は雨境に突っ込んだが、三人に何だかんだと言われて部屋の外に追い出されてしまった。この状況、前にも無かったか?
「……っ?」
部屋の前でまた立ち尽くしていると、極僅かにだが……視線を感じた。
「また、か……?」
キョロキョロと辺りを見回してみるも、全く分からない。はあ、とため息をつきかけた時、何かが頬を掠めた。
「えっ……」
壁に、矢が刺さっていた。もしかして自分の命を狙っているのかと血の気が引いたが、何やら矢に手紙がくくりつけられているので、そういう訳でもないらしい。私は手紙を破かない様にそっと開く。
「……………」
ごめんなさい、好きです。と、その文章だけ書かれていた。宛名も差出人の名前も無し。この手紙の差出人には呆れるしかない。だが、こんな簡素な文章で私は今までの視線の人物が誰が分かってしまった。
「……手仕舞君。いるんでしょう、出てきなさい」
「と、東火さん……」
天井の通気孔の穴から、ゆっくりと手仕舞君が顔を出す。流石に今回は呼び方を指摘されなかった。
「ご、ごめんなさい……あの、気が付いてるとは思わなくて……しかも、迷惑だとは……」
「手仕舞君」
名前を呼ぶとビクッ!と彼は固まる。
「別に怒っては無いです。ただ疲れたってだけで」
彼を手招きすると天井から軽々と着地して申し訳なさそうに此方に近付いてきた。
「今後はこういう事、しませんね?」
手仕舞君は何度も頷いた。私は筋肉を弛めて小さく微笑んだ。
「この恋文、確かに受け取りましたよ」
彼が返事をする暇を与えず、私はダッシュでその場を逃げ出した。


「東火さーん!さっきの言葉、どういう事ですかっ!?」
「うわっ、追い掛けてきた!」
「うわっ、って何ですかあ!酷いですよ!」
「ちょっとデレてやっただけです!勘違いしないで下さいよ!」
「そのツンデレ発言、勘違いしても良いんですね!?」
「違うーーっ!」
「……何やってんだ、あの二人は」
「あっ、津川良いところに!東火さん捕まえて!」
「えっ?」
「捕まえなくていいです!」
「あー、逃げちゃった!もう津川のバカ!くたばれ!」
「俺のせい!?」

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恋文の日記念です。
私もなんか書いた気がします。
フルーツタルトラブストーリーのどこかに埋まってます。
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