夏の話がしたい！


氷河ヒロイン化企画、番外編。

・サマーワーニング
※不亘純也
一日暇な俺と才臥と康司は、才臥の部屋に集まって遊んでいた。
流転はまだ仕事が残っていて、すぐに行くから集中させろ、だそうだ。
ふと、才臥の部屋のクーラーが不穏な音を出す。
「あれ、風来なくなった？」
康司がクーラーの真下に立つ。
「ん？壊れたのか？……まっかせなさーい」
才臥が椅子にのぼり、調子よくクーラーを弄りはじめた。
才臥の事だから、きっと事態は悪化している。
「流転を呼んだほうがよくないかな？」
「いやいや、こんなのは流転を呼ぶまでも……あ」
バキ、と嫌な音がした。
才臥がこちらに振り返る。
「壊しやがったな？」
康司が、悪戯に笑う。
黙って椅子からおりた才臥。
「ああああああ！どーすんだよ！俺、こんな暑い部屋で寝られねぇよ！」
「だから、流転呼べばよかったのに――いたぁっ！？」
俺が呆れたように呟くと、才臥に叩かれた。
「うるっせぇよ！純也に正論言われたくねーし！」
んな、理不尽な。
頭を抱えて暴れる才臥。
こうしてる間にも、クーラーのなくなった部屋の気温は上がっていく。
ふと、才臥の動きが止まった。
「あ、あいつがいたわ」
才臥がドアに手を掛け、にやりと笑う。
「康司、純也。どうにかなるかもしれねぇよ？」

才臥が来たのは、氷河の部屋。
ノックもせずに、開ける。
「よー、氷河ー！」
「才臥な……いや、慣れたけどさ」
ノックなし突撃は、才臥の常套手段。
氷河も呆れたようにため息を吐いた。
さて、氷河の部屋には恭二と芳示と丙もいた。
「どーしたんだよ、才臥？」
トラブルメーカーコンビの片割れ、恭二が才臥に聞く。
「ん、氷河借りていいか？」
「いいよー」
「だから、なんで俺より前に恭二の許可取るの！？」
つっこむ氷河。
康司と才臥が、氷河の両腕を掴む。
「あ、お前らも来たら？面白いもんが見れるかもよ？」
才臥が芳示と丙にも声をかける。
「それなら、行こうかな、っと」
ベッドに座っていた芳示が、立ち上がる。
「ほら、行くぞ、丙」
「ん？……ああ」
先ほどまで寝ていた丙が、芳示に起こされる。
被害者を増やしたまま、才臥の部屋に戻る。

「いやー、クーラー壊れちまったから、氷魔術で冷やしてくんない？」
「俺はクーラーの代わりか」
才臥の部屋に来るなり、才臥は氷河にそう頼んだ。
才臥のアイデアってこれかよ。
氷河の部屋に来た時点で、容易に想像出来たが。
氷河は、諦めたようで一歩前に出る。
「そりゃいいけどさ……。魔術ってのは結構制御が難しいから、クーラーみたいに調整って難しいぞ？なんか短い棒ねぇか？」
「棒なら……」
才臥が机の引き出しを漁る。
そして、ボールペンを氷河に投げた。
「ほらよ」
「なめてんのか」
ぱしっ、とボールペンを受け取る氷河。
指揮棒のように操り、小声で呟く。
「凍れっ」
指された空間が冷える。
が、強過ぎてベッドの掛け布団まで凍る。
「んー……難しいな……」
調子が悪そうに、何度もボールペンを振る。
才臥の部屋がだんだん凍り付く。
「あはははは、冷えてきたな！」
「氷河、下手くそだな」
笑いだした恭二と芳示。
丙はまた寝ていた。
「おい氷河！なんかいろいろ凍っただろ！？」
「だいたい人をクーラー代わりにしようとするお前が悪い！」
文句を言う才臥に、ボールペンでずびしっ、と指摘する氷河。
「んだと、お前の部屋のクーラーも壊してやろうか？」
「やっぱお前が壊したのか！」
「文句あるか！？」
なんだか喧嘩になりそうだったので、俺が間に入る。
「もー、才臥が悪いんだから認めなよー」
「隙あり！」
「ちょっ！？」
才臥に投げられ、ベッドに倒される。
ちょっと背中痛い。
「氷河ー、掛け布団凍ってるー」
「わりぃ、純也。大丈夫か？」
「ちょっと痛い」
「ああ、悪かったって」
氷河が治癒術をかけようと、手を伸ばす。
しかし、それは康司に止められた。
「いーよ、こんな程度の事に治癒術使わなくて」
「ん、そうか？」
あっさりと手を引く氷河。
「ちょっと悲しいなー、今のは」
起き上がり、悲しげに笑う。
「あ！あの人呼ぶか！ちょっと待ってろ！」
才臥がひゅんっ、と部屋から出ていく。

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続きます。暑い。