忍者ブログ
一次創作ファンタジー小説中心サイト。 このサイトにある全ての小説の無断転載は禁止しています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

零雨様より、手仕舞と東火の話を頂きました!

身長確定記念。


しゃがむ私と背伸びの彼
※弓ヶ浜東火
フラフラしている手仕舞君とばったり会った。
「……あ、どうも」
彼は少しこちらを見て挨拶したが、すぐに俯いてしまった。普段と態度が違う。どうしたというのだろうか。が、気にしてもしょうがないので私は引き留めずに食堂へ向かう。淡白?このくらいで充分だ。
「…………」
私が歩き出すと彼も黙って着いてきた。
なんだろう……妙に視線を感じる。いや、視線を感じるのはいつもの事なのだが、その視線がいつもと違うのだ。普段は熱っぽい、親しげな物であり、今回は……妬ましげな、子供が膨れている様な、そんな視線なのだ。普段の視線も勘弁して欲しいが、今回のはもっと困る。
「……あの」
私は耐えきれずに口を開いた。
「なんですか?」
「何ですかと聞きたいんはこっちなんですが」
「……はあ」
手仕舞君を見ると、彼は戸惑った顔をしている。が、演技であると雰囲気でバレバレだった。
「別に、とーかさんには縁のない悩み事ですうー」
あっさりと演技を止めた彼は唇を尖らせ私から視線を外す。これは完全に拗ねている。私には縁のない悩み。少し気になる。
食堂に入っても彼は着いてきた。
「紅茶が飲みたいです東火さん」
図々しい声が後ろから聞こえたが、無視して調理場の方に向かう。棚から湯飲みなどを出し、上にある棚から緑茶の缶を出す。紅茶や緑茶が入った缶は何故か高いところにあるので、上に手を伸ばさないと届かない。
「…………とーかさんのばか」
「はい?」
振り返ると手仕舞君はジト目で私を見ていた。
「俺は、手が届かなかった」
「……あー、はい……」
拗ねている原因が分かった。彼は身長の低さを気にしているのだ。彼は本部でも低い部類で、私は高い方に入る。167センチと182センチ。拗ねるのも当たり前だ、……いやそんなことを当たり前と言ってしまうのもアレだが。
「そんなこと私に言わんで下さいよ」
「分かってます、分かってますけどー!」
その場で足踏みしてモゴモゴと何か言いたそうにする彼だが、そのまま黙り込んでしまう。お湯が沸く音がした。
「俺、東火さんを守れる様になりたいんですよ……」
うろうろ視線をさ迷わせて呟いた手仕舞君の台詞に私はちょっと照れた。彼は私の顔を見ていないからバレてはいないが。私はすぐに後ろを向いて緑茶を煎れる。
「大きくなくても戦えると思いますがね」
守れる、と言うのは恥ずかしいので戦えるという表現に変える。
「大きい俺が!小さくて可愛い東火さんを守りたいんですっ!」
「…………」
黙らざるを得ない。見た目は可愛い部類で普通に悪くないと思うのだが、どうして中身がこんなに残念なんだろう。まさに『理想と現実の差(笑)』だ。ああ、彼の言うことも『理想と現実の差(笑)』だ。
「ねぇ……聞いてます?」
裾を引っ張られた。ティーセットをトレンチに乗せ、私はまた振り返る。彼は上目使いで私を見上げていた。……うん、小さい。
「聞いてますよ。手仕舞君、これ持ってください」
「柳賀って呼んでくださいよ!」
「手仕舞柳賀君これ持ってください」
トレンチを押し付け、食堂に出る。窓際の席を選んで私は腰掛けた。テーブルにトレンチを起き、手仕舞君も向かいに座る。もう良い頃合いだろう、緑茶を二つの湯飲みに注いだ。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございますー」
嬉しそうに緑茶を啜る手仕舞君。どうやら機嫌は治ったようだ。ふにゃふにゃとした笑顔はとても無邪気だ。とても攻めには見えない。とてもメタい。
「……そんなに身長が気になります?」
「もちろん!」
「私になら、背伸びしたら届くんじゃないですかね?」
フォローのつもりで言ってはみたが、これではまるで私なら簡単に攻略出来ると言っているみたいじゃないか……考えすぎか、恥ずかしい。私も一口緑茶を飲む。飲みつつ様子を伺って見ると、何やら考えているらしい手仕舞君。
「なるほど、分かりました!」
ガタリと勢いよく立ち上がった彼は素晴らしい笑顔をしていた。そして私の後ろへ回り込む。
「東火さんは前見てて下さいっ」
「え、あ、はあ……」
頭を押さえられてしまったので彼の姿が見えない。一体何をする気なのか。と、頭を押さえていた手がそのまま体に回る。これは、後ろから抱き締められている体勢だ。
「えーと……」
私は上を見て手仕舞君の顔を確認した。ニコニコと嬉しそうだ。
「これなら、俺の方が上ですよっ!」
「……良かったですね」
まるで他人事な台詞だ。むー、と声がして頭の横辺りに彼の顔が近付く。彼の髪で耳がくすぐったい。もそもそと動いたかと思えば、耳元で手仕舞君が囁いた。
「とーかさん」
「っ!」
体がびくりと硬直する。よく分からない感覚が、全身を襲った。
「東火さん」
彼が耳元で囁く度にぞわぞわする。しかし、決して不快ではない。むしろ……いや、分からない。私は振り払うのも何故か出来ずに、目を瞑った。
「……好きですよ」
まるで耳に全神経が集まってしまったかのようだ。彼の息遣いが、震える声が、触れる髪が。一々私を動揺させる。
「手仕舞、君……」
「東火さん?」
ふわ、と彼の髪の毛が耳にかかって、首を傾げたのが分かった。
「ちょっと……耳元で話し掛けるのは、あの……」
妙に恥ずかしくて、顔が熱い。うっすらと横目で彼を伺ってみる。
「!?」
……凄い顔をしていた。もう、般若の様な、凄い形相だ。今にも白目を向いてしまいそうである。
「か……」
「か?」
「可愛すぎるでしょおおお!!!」
私から離れた手仕舞君はその場で大きく足を開き、上を向いて大きく叫んだ。そして、ダッシュで食堂を出ていってしまう。私が止める隙もなく。
「…………」
ズズ、と私は温くなった緑茶を啜る。
「……戻るか」
私はトレンチを片付けて、自室へ戻った。
手仕舞君?知らんわ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
王道になれない二人。
普通のシチュエーションが出来ないのが難点?
でも、だからこそらしいんだ。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
天草八津芽
性別:
女性
自己紹介:
BLでファンタジー小説が多いです。
ひっそりひそひそ書いてます。
ツイッター
メインアカウント(妄想ばかり)


オリキャラ紹介bot
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
P R

Copyright © [ 妄想の隠れ家 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]