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零雨様より、短編集を頂きました。

季節感あふるる話。

冬の甘々と夏のベタベタ。

・手仕舞と寒がり東火
※手仕舞柳賀
東火さんは、炬燵が好きだ。
「うー……む……」
今も暑そうにうなされながらも炬燵から出ようとしない。
「東火さん、東火さん」
「んむ……?」
目を擦りながら炬燵の布団を上げる東火さんが可愛い。可愛くてしょうがない。
「東火さん、炬燵で寝るのは良くないですよ~」
いつの間にか生えていた狐耳が俺の声に反応してピコピコ動く。つついてもパタパタ耳が反応するだけで本人は起きる気配がない。
「しょーがないなぁ……」
俺は東火さんの脇の下に腕を通し、炬燵から無理矢理引き摺り出した。こういうのは普段は俺の役割の筈なんだけど……。のとほぼ同時に換気のために開けていた窓から風が入ってくる。
「っ、ぴぃ!」
「え、わっ」
寒さにビクリと体を強張らせた東火さんは驚いたのか、寝惚けたのか、奇声を上げ俺にしがみついてきた。突然の重みに俺はそのまま後ろへよろめく。
「……うん?」
東火さんが俺を押し倒す様な体制でもぞ、と動く。右手は何か掴もうと空をかいている。眼鏡を探しているのだろうか。俺はそのまま東火さんを抱き締めていた。こんな機会逃したらいつ東火さんを抱き締めるんだよ!
「寝惚けてます?」
分かっているが、気が付いていないフリをして聞く。東火さんは珍しく素直に頷いた。
「……そう、みたいですね」
「大丈夫?結婚する?」
「うん……はい?」
まだ寝惚けているのか、何なのか。東火さんは!結婚を!承諾してくれた!
「本当ですかっ!?」
東火さんを上に乗せたまま腹筋の力だけで起き上がる。もちろん、抱き締めたままで、だ。
「いやいやいや!」
思いっきり首を横に振られた。哀しいかな、座っている時でも身長差で俺は東火さんを見上げていた。
「えー」
「えーって手仕舞君ね……」
「柳賀ですっ」
その時、また風が吹いた。ブワッ!と東火さんの耳と尻尾の毛が逆立つ。
「離して下さい……」
「くっついてた方が、温かいでしょう?」
パタ、と尻尾が俺の体を叩く。
「寒いです。くっつくなら炬燵に入ってからにして下さい」
俺は東火さんを抱えたままズリズリと地味に移動し、炬燵に入る。後ろから東火さんを抱き締める様な形だ。俺は背中にぴったりとくっつく。
「ちょっと一回座り直したいんで離してもらってもいいですか?」
「あ、ごめんなさい」
位置がしっかりこないのか、居心地悪そうに身動ぎするので離れると、東火さんはさっさと立ち上がって向かいの炬燵に入ってしまった。
「っはあーー!?」
「あー温かいですねぇ」
炬燵の上に置いてあった眼鏡を掛け、至福の顔でぬくぬくする東火さんに、俺はもう何も言えなくなってしまったのであった。


・夏好き島原と夏嫌い小浜
※小浜黒葉
「暑いねー」
「暑いな」
僕たちは畳の部屋で二人してうつ伏せに倒れていた。
「クーラーつけようよ」
「扇風機でいいだろ」
「扇風機じゃ足りない」
あまりにも暑いのでそう提案してみるが、何故か洋斗は却下してしまう。扇風機なんかじゃこの暑さは乗りきれそうもない。
「クーラーつけちまったら夏らしくねーじゃん」
「別にいい。夏嫌いだし」
「俺がつけたくねーんだよ」
尚も勧めてみるが、非論理的な理由で却下されてしまった。文句の意味でぺちぺちと背中を力無く叩く。
「やめろ、あっついんだよ」
小蝿を追い払うように手を振る洋斗に僕はある事を思い付いた。
「よーうと」
僕は起き上がり、四つん這いで洋斗に近付く。そして洋斗の上にべたっと覆い被さった。
「何やってんだ、暑いだろ!」
「僕だって暑いよ」
洋斗の背中は汗ばんでいて暑苦しい。元々洋斗は汗をかきやすいので、髪は雨に濡れたように汗だくになっていた。うっかり触ってしまったので、洋斗のズボンで拭う。こちらもちょっと湿っているのであんまり意味は無いけれど。
「おい、フツーに俺の服をハンカチ代わりにするなよ。つーかどけ!」
「クーラー付けるまでどかないー」
僕はニヤニヤ笑いながらリモコンで扇風機の電源を入れた。ぶおー、と上にいる僕だけに風が当たる。
「俺に風来ねーぞ!」
「そうしてるんだからね」
涼しさに思わずため息をつく。下は暑いままだが、上から風が来るので悪くない。
「うがーっ!」
「わっ」
いきなり洋斗の体が起き上がり、僕は横へと転がった。立ち上がった洋斗はTシャツを脱ぎ捨て、扇風機の前に立ち塞がる。
「風来ないんだけどっ!」
「うるせー!」
汗だくのTシャツを投げられた。僕は触らない様に素早く避ける。
「臭い!キモい!やだ!」
「お前は乙女か!」
ていっ、とチョップを食らった。そのまま洋斗は箪笥から新しいTシャツを出して着始めた。
「まだ脱いでたら?また汗だくになるよ」
「かき氷」
「うん?」
「かき氷、食いに行こうぜ。ちったあ涼しくなるだろ」
「えー」
「奢ってやるから」
「しょうがないなぁ」
ほれ、と手を差し出されたので掴んで起こして貰う。その手はすぐに離れてしまった。
夏は手を繋ぐのも暑くて嫌だなあ、なんて思った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
短編二本でございます。
季節感あふるるものですね。
ちなみに初東火さん妖怪化かな?
尻尾は一本です。
島原と小浜はとてもかわいらしいんだが。

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