忍者ブログ
一次創作ファンタジー小説中心サイト。 このサイトにある全ての小説の無断転載は禁止しています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

完結記念に全部うpしちゃいます。
空間論法殺法編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
そして、零雨様に書いていただいた噂の本編でございます。

キャスト
天城芳示(あまぎほうじ)
特攻鬼軍曹ガンナー。
大浦丙(おおうらひのえ)
微睡みのトラップ。
多々角円(ほぼまるまどか)
ノンストップ重力。
多々角環(ほぼまるたまき)
筒抜けの仲間想い。


※多々角円
「おい」
振り返るとホウジが睨むように僕を見ていた。
「円だったっけ?」
「え、あ、そうだけど、ですけど」
「お前の能力って物の重力を変えられるんだよな?」
何か苦言を言われるのかと思わず敬語混じりになってしまったが、予想に反して普通の質問であった。拍子抜けして肯定と共に余計なことまで話してしまった。
「射程距離は五メートル程度だし、間接的にでも触れた物にしか有効じゃないけど……まあそうだね」
「ふーん……じゃあさ」
彼は右のホルダーからハンドガンを素早く抜いて構えて見せた。
「俺が撃った弾の重力を操ることは可能か?」
「えッ?」
僕は腕を組んで考えてみた。
「……ホウジに触れていれば出来る、かも」
本物の銃なんて初めて見たし、ホウジを通して銃、そしてその中にある弾を操るなんて間接的にも程があるが、不可能ではないはずだ。僕が撃って操る方が効率は良いだろうが、撃つのに必死になって操るのは難しいだろうし。
「別に軌道を変えるとかそんなんじゃ無くてよ、『加速』と『威力』が欲しいんだわ」
銃についての詳しい話を色々語られたが、要約するとこうだ。弾を撃った先を下にして重力による加速を付加、運動エネルギーを増幅させて威力が増す。なるほど、僕はホウジの撃った方向に重力を加えれば良い訳だし、簡単そうだ。
「でも、戦闘中にホウジに一々触るのは大変じゃない?」
「俺の背中にでもしがみついてろ」
それじゃあ僕は戦えない、と思ったが僕はメイン火力ではないのでまあいいだろう。
ホウジが背中を向いてしゃがんでくれたので、僕はおそるおそるホウジの首に手を回して寄り掛かる。
「重い!」
「えッ」
「自分の体重軽くするとかねーのかよ」
「あるけど……」
「じゃあさっさとやれ、馬鹿」
罵られた。
僕は自身の体だけ無重力状態にして少しでも彼の負担を減らそうとする。ホウジに触れたまま、彼の体重を残しておくっていうのは結構難しいんだけど、文句を言ったら色々脅されそうで怖いので言わない。
「ん、いいんじゃね?」
「ハハ……」
「俺が戦う時は両手使うから、自分でしがみついてろよ」
「はい、分かりました……」
ホウジは満足気に笑うと、他の人達を置いてさっさと進み始めた。集団から離れるのは得策ではないが、僕は黙ってホウジの体にしがみついていた。
僕はホウジ様には逆らえないということを今のやりとりで悟ったのである……。


※大浦丙
「…………」
俺は黙って芳示と円のやりとりを見ていた。円には申し訳ないけれど、芳示は俺が何か言ったって止めるような人間ではないので、見ているしかない。
「兄ちゃんは振り回される事に慣れているから、あの程度なら大丈夫だよ」
近くにいた環が彼らを見ながらそう言った。
「……あ、ごめんなさい。心を読んじゃって……」
「いや、構わないよ。『勝手に読んじゃう』んだろう?」
俺と環の視線がぶつかり、彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「そうですけど……いい気分じゃあないでしょ?」
「んー……どうだろう」
何か言おうと思ったが、特に何も言葉が思い付かなかったので適当な感じで返事を返す。心を読んだのだろうか、彼に驚いた顔をされた。そんなに驚くようなことだろうか?
「ほぼ初対面の、普通の感性の人にそう思われる事って中々ないですよ」
俺は首を傾げる。氷河達だって同じこと思ってそうだけど。
「芳示さんはちょっと嫌そうだった。氷河さんもやっぱり戸惑ってて……恭二さんは、よく分かんない」
どういうこと?
「『イエーイ!聞こえるー?』とかそういうどうでもいいことばっかり伝わってきて……側にいると疲れちゃうんであんまり近くには……」
なるほど。三人ともらしいと言えばらしい。大人なんだから彼に気を使えよ、とも思うが。
「っていうか、丙さんさっきから全然喋ってない」
環がジト目で俺を見上げる。
「喋るのめんどくさい」
「怠惰過ぎません……?」
呆れた声で言われるも、彼は俺から離れようとしない。俺が前にいる氷河達の方を見ると、服の裾を摘ままれる感触がした。
「……丙さんの声が、一番静かで落ち着くんです。側に居させてよ」
俺は黙って前を見ていたが、視線は恭二だったり一哉だったりと落ち着かなかった。
「……フフ」
「環が変なこと言うから」
「アハハ、ごめんなさい」
声を出して笑う。彼の笑う顔、会ってから初めて見た。緊張が解れてきたって事だろうか。
「かもね。……頼りにしてる」
何を?
「色々と。僕戦えないし」
「いーよ。守ってあげる」
俺は前を見たまま、彼の頭をくしゃりと撫でてやった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
天草八津芽
性別:
女性
自己紹介:
BLでファンタジー小説が多いです。
ひっそりひそひそ書いてます。
ツイッター
メインアカウント(妄想ばかり)


オリキャラ紹介bot
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
P R

Copyright © [ 妄想の隠れ家 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]