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完結記念に全部うpしちゃいます。
空間論法殺法編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
そして、零雨様に書いていただいた噂の本編でございます。

キャスト
榎本恭二(えのもときょうじ)
子供心の吸血鬼。
瀬戸氷河(せとひょうが)
凍てつく光の魔弾。
赤空核(あかぞらさね)
反面常識人。
一一哉(にのまえかずや)
計算の策師。




※瀬戸氷河
「殴るのが好きなのか?」
「はあ?」
核がまた俺の首に手を回してくっついてきた。
「お前の戦い方の常識を見てみたんだが……好きと戦い方が一致しないんだ」
彼の言っていることがよく分からず、俺は首を傾げた。
「拳で戦うのも好きだ、みたいな事を思っているのに、なんで不得意な魔術なんか使っているんだ?」
くっつきながら器用に俺の顔を覗き込んで来る核の表情は本当に不思議そうだった。心を読める環というヤツだったら俺の感情とかも読んで分かるんだろうが……常識という事実しか受け取れない彼には分からないんだろう。しかも、核は人の心を感じ取るのが疎そうだし。
「……色々事情があるんだよ」
「ふゥん。聞かせろよ」
色々、と誤魔化したのにそれを分かってか分からずか、核は普通に踏み込んで来た。
「俺達の中で治癒術を使えるのは俺しかいないし、俺が後衛で魔術とか銃使ってた方がバランスが良いんだって」
「バランス、か。今の状態でもそんなの感じないけどな?」
「うるせえ!」
ムカついたので核の頭を叩いてやると、彼は楽しそうに笑いだした。気でも狂ったのか!?
「そんな常識、俺が覆してやる」
ぼそりとそう聞こえたかと思えば。
「――ッ!?」
時が止まった様な気がした。
「ハハッ」
核が笑う。
感じたのはほんの数瞬。されど数瞬、何かが起こったのは間違いない。
「核……何した?」
「ン?戦ってみたら分かる。きっと楽しいぜ。夢でも見てると思って、まあ楽しめよ」
親切でもしたような、楽しそうな言い方だった。俺は何が起こったか分からないが、そのうち分かるんだろう。悪いことでは無さそうだし。
「なんで戻ってるんだよー!」
「効かねーんだからしょうがねぇだろ!死ね!」
勝手に先に行っていた筈の芳示と円の声が聞こえて前を見ると、全力で廊下を引き返してくる芳示とその背中にしがみついて半泣きな円が居た。その後ろには、人狼を彷彿とさせる魔物が二人を追い掛けている。
「何やってんだアイツら……」
「良いタイミングだ。戦ってみろよ」
核が離れて芳示達をこっちへ呼び寄せる。確かに、何が起きたか理解する良い機会だ。俺は銃を構えて、魔物の腕へ向けて撃つ。パシュッ、とそれは腕を貫通し、その軌道は氷柱となって凍りついた。
「はあッ!?」
俺は普通に撃ったつもりだった。魔力を込める気も無かったし、そもそも意識して込めていない。勝手に魔力が混ざっていたとしてもこの威力はおかしい。
だが、更におかしいのはここからだった。
俺は銃を仕舞ってその氷柱に乗り、魔物へと駆け出す。そして右手に魔力を込め、魔物の頭へ殴りかかっていた。魔物はあっという間に凍りつき、バラバラに砕ける。
「……は?」
無意識というか、反射的というか。何で俺は今こんなことをしたのか?普通に考えれば、自分の得意な銃で戦う筈だし、魔術ももっとよく考えてから使う。そう、常識的に考えれば。
「ッ、核!」
「分かったか?」
核がニヤニヤしている。これが『常識を覆す』ということか。
「俺は専らこういうことに使ってるぜ。物事を進めるのに都合が良いからな」
人の常識と逆の事を出来るのが核の能力だと思っていたが、他人の精神にまで影響を及ぼせるとは。そうしたら、本当に彼の都合の良いように操れるじゃないか。俺の意思とは無関係に。
「嫌だったか?」
答えない俺に核は少し不安そうな表情で聞いてくる。俺はニヤリと笑い返してやった。
「んな訳あるか!超戦えるじゃん!最高だよ!」
「だろうな」
不安など抱いていなかったかのようにまたニヤニヤしだした核を見て、子供っぽい所もあるじゃないか、なんて思った。


※一一哉
彼の気持ちが計算できてしまうからこそ、共感したのか何なのか、自分はモヤモヤしていた。もちろん、それは顔には出さないし出せないが。
「氷河の奴、楽しそうだな……」
子供が何かを我慢している様な顔の恭二。物事を計算出来てしまう自分には既に七人全員のこれからの行動や心理が分かっている。正直……このままでは本当に解決出来るか怪しい。恭二の核君への嫉妬は一瞬でも隙になり、パーティ連携の崩れへと繋がる。核君も面倒な人間に興味を持ってしまったものだ。そして、氷河も面倒な人間に好かれてしまったものである。それが彼の個性というか魅力なのだろうが。
「核君は、あまり親しい人間がいないんですよ。こう言うのもアレなんですがね」
少しでも恭二の関心と不満を逸らすべく話を振る。彼はこちらを見て軽く首を傾げた。
「ふーん?」
「人間というのは面白い生物に興味が湧くものでしょう?核君もしばらくしたら飽きるんじゃないでしょうか」
「氷河に飽きるとかねーから!」
恭二は言葉を遮るように言った。たとえ自分に不利になっても氷河という人物の評価を落としたくはない、ということか。悪くない精神だが、この程度で氷河の見方が変わるなんてことはないし、そもそも自分さえしっかり見てやれば別に他の人間の評価なんてどうでも良いと思うが。……八方美人の自分がこんなことを思うのも変だけれど。
「でもベタベタするのは嫌なんでしょう?」
「うん、やだ!」
あれもやだ、これもやだ、なんてまるで子供だ。氷河の評価も落とさず、核君と恭二の機嫌も損ねず、丸く収める。難しいが、難しいからこそ計算式の解き甲斐があるというものだ。
「今、氷河さんは核君の能力によって戦闘能力が上昇しています。先程も言いましたが、自分達はサポート専門です」
彼は戦闘能力の上昇と共に、魔力量も増えている。おそらく、核がもっと能力を使う割合を氷河に割けば、大魔術ですら詠唱なしで簡単に唱えられてしまうだろう。魔力が尽きることも、疲労で倒れることもなく。
「そーなんだ」
「核君には氷河さんをサポートすることは出来ても、守ることは出来ません。……それは、貴方の役目だとは思いませんか?」
「あっ、確かに!」
彼はハッとして両手を打つ。
「そう考えると、ちょっと位多目に見てあげても良いじゃないですか」
「うーん、そーだなー。戦いでカッコよくズバッとやるのは俺だしぃ?」
目に見えて機嫌が良くなった恭二に自分も軽く微笑む。まあ、氷河も戦闘能力が上がっているから、恭二に守られる必要も無いのだが。
馬鹿にしてるだなんてとんでもない。予想もしない危機だったよ、これは。
何はともあれ、解決して良かったね。

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