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完結記念に全部うpしちゃいます。
空間論法殺法編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
そして、零雨様に書いていただいた噂の本編でございます。

キャスト
榎本恭二(えのもときょうじ)
子供心の吸血鬼。
大浦丙(おおうらひのえ)
微睡みのトラップ。
一一哉(にのまえかずや)
計算の策師。
多々角環(ほぼまるたまき)
筒抜けの仲間想い。


※一一哉
「任せたぜ、っつってもなあ……」
俺はキャラを変えて呟いた。あまりにも赤空空木が計算外過ぎて、もう計算するのも疲れた。使わない一人称だって使わざるを得ない。
「円と芳示は窓の外、丙は倒れてるし、俺と環は戦闘は専門外。頼りは恭二だけか……」
「え、一哉キャラ変わってね!?」
「たまにはキャラを替えてみた方が楽しいと思いません?」
恭二が大袈裟なリアクションを取ったので、適当なことを言って黙らせる。無意識ではなく、意識的に俺は能力をフル活用させた。
「空木先生。俺たちを倒してしまう前に少しお話しませんか?」
ギロリとこちらを見る赤空空木。赤空というのはどうして誰も彼も俺の計算を邪魔するんだろうか。腹が立つ。
「貴様も……釣木学園の生徒か」
「えぇ、風紀委員長の一一哉です」
「一……一に一哉というヤツがいるなんて聞いてないが」
空木はゆっくりと此方へ近付いて、俺たちの距離はわずか一メートルとなった。彼にとっては零にも等しい距離だが、俺にとっては途方もなく遠い距離だ。だが、襲っては来ない。やはり昔読んだ資料に書いてあった通り、生徒には甘い。
「えぇ……この時代は貴方が生きている時代よりかなり後の世界ですから」
「……へえ?俺様はタイムスリップしてきたということか?」
チラ、と俺は恭二を見る。恭二は環と手を繋いで環の能力下にいる。何となくは俺の考えていることが分かるだろう。
「そうなりますね。先程までいた赤髪の彼……貴方の孫ですよ」
「何?」
その時、赤空空木がはじめて動揺した。その僅かな隙。恭二は音もなく太刀を抜き空木に斬りかかっていた。
「ッ、クソッ!」
紙一重で避けるが、彼のスーツは三十センチ程の切れ込みが出来ていた。反撃してくるかと思ったが、それ以上に余裕が無かったということか。ダンッ!と恭二の両足が床を鳴らす。彼の太刀が舞い、連撃。一撃、二撃、三撃。
「面倒なヤツだッ」
ひらりひらりと紙一重でかわす空木はそう言ったかと思えば、跳んだ。まるで円の無重力の影響を受けているかのように軽く恭二の太刀の上に乗り、跳んで、彼の頭を蹴り飛ばそうとする。
しかし。
「チッ」
空木は急に動きを止め、太刀の上からジャンプして離れた。丙たちからも俺からも少し離れた教室の隅に着地すると、そのまま俺を不敵な笑みで睨み付ける。
「一一哉ァ……お前分かってるじゃあないか」
「何がです?」
「俺様が生徒に甘いって事をだよ」
俺も微笑み返す。空木が恭二への攻撃を止めたのは、戦えない俺が恭二の後ろに居たからだ。彼がそのまま恭二を蹴り飛ばせば、俺にぶつかって俺も怪我をする。いくら空木にとって敵でも、『釣木学園の生徒』で『戦えない』人間には手を出せない。読んだ資料から計算する限り、そういう邪魔で空木と戦っていけばある程度はかわせるだろう。
「恭二さん!大丈夫?」
「よくわかんねーけど、ヘーキ。それより丙は?」
「だい、じょうぶ……」
丙が緩慢な動きで起き上がるのを視界の端に入れつつ俺は空木から一歩離れた。
「貴方のこと、倒そうとなんて思ってませんよ」
「何?」
ヒゥン、と風が鳴く音がした。
「ッ!」
空木が後ろへ飛び退く。ヒゥン、ヒゥンと音は鳴き止むことなく続き、空木の周りにある机や椅子はスパスパと積木を崩した様に崩れた。空木が教室のとある所に立つと音は止まった。
「ディ、シュピンネ。まるで蜘蛛だな」
口角を上げた空木の視線の先は、先程まで倒れていた丙であった。丙は手袋をした手を前に構えている。キラリと光の反射でしか見えないが、手袋の先からは無数に糸が出ていた。
「蜘蛛の糸。そんな名前の文学作品があったなァ」
そう言いつつ、空木は側の机を掴み無造作に放り投げた。しかし、それは丙たちにぶつかる前に不自然に止まり、地面へ落ちる。彼らの前には蜘蛛が巣を張ったかのように糸が張り巡らされていた。この僅かな時間でここまでトラップを張るなんて中々の糸操術である。
「一人じゃ……この糸を切ることは出来ないよ」
空木が出した話に乗っかったのか、丙は苦々しげに微笑む。まだスタンガンの痺れが残っているのだ、あと数手も攻撃されれば突破されてしまうだろう。だが、それは構わない。後の計算式を見れば防御が突破されてもされなくても、どちらでも良いのだ。空木が数歩前に近付き、蜘蛛の巣の防御幕から伸びている糸を握る。ギシ、と何処かで軋む音が聞こえた。
「残念だが、俺様の力は千人力なんだ」
軽やかにその糸に飛び乗った空木はその糸の上を掛け、防御幕に接近する。同時に、俺も丙たちの方へ走る。
「っらあっ!」
右腕を防御幕の隙間に入れ、腕を降り下ろすとそのまま蜘蛛の巣を構成する銀糸はあっさりと千切れた。あの糸、金属で出来ているのにまるで紙でも千切るかのの様である。どんな固い物質で造られてるんだ、空木の腕は。
「……ッ、本当に邪魔な一だな」
防御幕を破壊した空木が丙たちを攻撃する前に俺は彼らと空木の間に入っていた。さっきさりげなく回収したスタンガンを持って。
「ふふ。こんなの、簡単に計算できますよ」
顔をしかめた彼はまた俺たちから距離を取った。
「ただの時間稼ぎ、尺延ばしとでも考えて下さって結構です」
「貴様……」
ピクピクと彼の眉が動く。どうせ「やっぱり一の人間は挑発的で気に食わないことを言う」とでも思っているのだろう。やっぱり赤空の人間だ、核とよく似てる。
その時。
ドンッ!と物凄い爆発音と揺れが訪れた。
「な、何?」
恭二の驚きの声に俺が答える暇もなく、更に轟音がして空木の立っている場所から半径一メートルの地面が崩れ落ちた。流石にこれには空木も反応出来なかったのか、床の瓦礫と共に下の階へ落ちていった。
「もーキャラを戻してもいい気がする」
穴に近付き独り言を呟きながら覗き込むと、芳示と円が天井に『座り込み』、こちらを覗き込んでいた。
「あァ、まどちゃん、芳示さん。作戦通り、だね」

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