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完結記念に全部うpしちゃいます。
空間論法殺法編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
そして、零雨様に書いていただいた噂の本編でございます。

キャスト
天城芳示(あまぎほうじ)
特攻鬼軍曹ガンナー。
多々角円(ほぼまるまどか)
ノンストップ重力。


窓から飛び出した体は硝子の破片と共に宙を舞い、そのまま落下して無惨な死体を晒すかと思われた。が。
「ホウジさんッ!」
落下する体が、ピタリと止まった。重力も、反動も、何もなく体がその場に静止している。首を捻って見ると、円が校舎の壁にほんの少しだけ手を触れていた。カク、と円の首が傾く。前も能力を使ったときに同じ動作をしていたが、癖なのだろうか。
「便利な能力だな」
「手の届かない距離に投げられてたら打つ手が無かったけどね」
円が俺を引っ張って、体を校舎へ触れさせる。すると、校舎が『下』になった。これで一応安心って訳か。
「うわっ」
同じ様に校舎を『下』に立った円が顔をしかめる。訳が分からず俺は眉間にシワを寄せた。
「ホウジさん、血が……!」
顔を触ってみると生暖かい感じがした。実際に見てみれば確かに血である。そう自覚すると同時に色々な所に軽い痛みが襲ってきた。
「いってぇ……」
顔に細かい切り傷と、右こめかみ辺りに大きな切り傷。こめかみの傷は出血が結構酷そうだ。と、傷口に白いハンカチが当てられた。円は片手で自分の制服のスカーフを抜き取ると、包帯代わりなのか俺の頭に巻いて縛った。加えて、俺の顔についた血を自分の制服の袖で擦り始める。
「おい」
「動かないで」
「んなことまでしなくていーから」
円は無視して俺の血を拭う。円が満足するまで拭うと、折角の制服が赤く染まっていた。
「満足か?アイツらの所まで戻るぞ」
「駄目だ。真っ正面から戻るのは、駄目」
「ああん?」
装備などを落としていないか確認をして俺は再びアイツらを捕まえるべく立ち上がろうとするが、円に止められる。柄悪く返事をするとビクッと怯えた顔になるも、裾を掴まれ座らされた。
「真っ向から挑んだんじゃあ僕たちは勝てない。何か……策を考えなくっちゃ」
「策って、どんな」
「うゥん……」
そのまま黙ってしまったので、俺も何か考えることにした。フードの奴は魔術師、それは分かっている。だが、その隣にいたスーツの男、アイツは誰なのか?一哉の言い方では、アイツは犯人ではないという感じであった。犯人ではないのに何故俺たちの邪魔をして魔術師を守ったのか。
「なあ。あのスーツの男は人間なのか?つーか誰」
「誰かっていうのは僕には分からないけど……多分、人間かな」
あの反射神経と力はどう見たって普通の人間ではないと思ったが、俺たちの世界とここでは普通の基準が違うのかもしれない。ともかく、格闘のみの近距離戦では力負けするだろうし、銃を使うにしてもあれじゃあ撃つ前に接近されて捩じ伏せられる。
「狙撃……は今の状態じゃ無理か」
遠距離からの狙撃。これなら気が付く前に撃てる。遠距離用の装備ではないが、円の能力で威力はともかく届くことは出来るだろうし、俺の腕なら距離によるがスコープなしで当てられる。ただし、場所がない。今いる窓の外からでは充分な距離とは言い難い。別の建物から狙撃するにしても校庭を挟んで向かい側。いくらなんでも遠すぎて当てられない。こういう状況を見ると、遠距離用装備を持ってこなかったことが悔やまれる。
「じゃあ……落とし穴みたいな罠、とか」
「落とし穴……」
円の一言で、何となく策が思い付いた。
「校舎、壊して良いか?」
「はァ?」
円が信じられないという顔でこちらを見る。
「……僕が怒られるんだけど」
「よし、ならいいか」
「え、ちょっと!」
俺は立ち上がってアイツらがいる階の下の階の窓に立った。四つん這いから立ち上がりつつ追い掛けてくる円が慌てた様に声を掛ける。
「あんまり離れすぎないでよ!能力が切れちゃう!」
「さっさと来いよ」
窓は中から鍵が掛かっているらしく開かない。銃を取り出して持ち手の部分で窓を叩き割った。窓の硝子は重力に従って床に落ちた。俺は鍵を開けて窓を開ける。そこから教室の壁へと飛び降りた。背中の服を掴まれる感触がして、円がしがみつくのが分かった。
「僕の能力の射程距離分かってるの!?」
「知らん」
背中で大きな溜め息が聞こえた。再び背負う体制に戻ったが、相変わらず能力で重さはほとんど感じない。
「分かったよ。ホウジさんの行きたいところを『下』にするから好きにして」
「じゃあ天井を『下』にしろ」
今は『壁』である天井に片足を起き、俺はそう指示した。グッ、と重力の向きが替わり、そちらの足に体重が掛かる。円本人が移動するのなら思考だけで変化が可能だから、着地も変化もスムーズに出来るだろう。便利な能力である。
「天井を爆破させてアイツを落とす」
俺は逆さまの教室の扉を開け、教室内に入りながらそう言った。
「俺の弾薬を使って一部を爆破させれば、アイツを罠に掛けることが出来る。運が良ければ身動きが取れなくなるだろうし、駄目でも足止めにはなる。その間に俺たちは魔術師を探せばいい」
「なるほど……良い案かも」
と、言いつつ俺と円は二人でその罠の制作に急いで取り組んだ。一哉とやらが計算して時間稼ぎをしてくれるだろうと円は言っているが、俺は彼らをまだ完全に信用した訳じゃあない。
天井と床の二ヶ所に罠を設置した俺達は天井に座って待機する。罠、と言っても二メートル程の円を描いて爆薬を設置して、アイツがその上に丁度立った時に爆発させて落とすというものなのだが。上に居るかは壁を挟んで円の能力の射程距離内なので、何となくは分かるらしい。成功すればアイツは落下し、俺たちのいる階の更に下の階へ落ちるだろう。
「……ッ、ホウジさんッ!」
円の表情が変わるのと同時に俺は罠を起爆させていた。ドンッ!と予想以上に大きな爆発音と揺れ。天井と床が崩れ落ち、その中に人らしき物が紛れているのも見えた。
「っしゃ!」
「やった!」
俺と円は思わず歓声を上げて拳をぶつけ合った。まだ事態が解決したった訳じゃないのにな。俺たちはその穴へと近付き、上の教室を覗き込む。一哉と目が合う。
「あァ、まどちゃん、芳示さん。作戦通り、だね」
一哉はニコリと微笑んでそう言った。

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