忍者ブログ
一次創作ファンタジー小説中心サイト。 このサイトにある全ての小説の無断転載は禁止しています。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

完結記念に全部うpしちゃいます。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
そして、零雨様に書いていただいた噂の本編でございます。

キャスト
瀬戸氷河(せとひょうが)
凍てつく光の魔弾。
赤空核(あかぞらさね)
反面常識人。


※瀬戸氷河
転移した先も普通の教室だった。
「このくらい逃げれば大丈夫か」
核がぼんやりと宙を見つめながら呟く。
「今、転移したのか?」
「ああ。犯人の能力に近い常識だ」
俺はよく分からず首を傾げたが、核は無視して俺の手を引き教室を出た。
「……手、離してくれよ」
「断るぜ」
こちらを見てニヤッと笑った核は手を離すどころか、指を絡めてきた。何故か俺は手を離せず、やきもきしていた。
「常識を覆すのは……」
「止めない」
『常識を覆す』というのは、人の心まで操ってしまうのか。ニヤニヤと笑う核が顔を近付けて来る。廊下でこんな状態とか、誰かに見られたらどうするんだ!
「核君」
ぴたりと、核の動きが止まる。声の先には、見知らぬ青年が立っていた。助かったと思うと同時に、見られたというショックを受けて顔が赤くなった。
「東西南北(よもひろ)」
「公共の場でそういうことをするのは良くないと思うよ」
東西南北と呼ばれた彼の言葉は普通の言葉だったが、この変な奴らにしか出会ってない状況では奇跡の一言の様に聞こえた。
「分かってる」
核は何故か嬉しそうに微笑むと俺から距離を取った。ただし手を繋いだまま。
「手は離さないんだね」
「当然だろ。いつ、何があるか分からないんだから」
「ふゥん」
彼は右親指で唇に触れながら抑揚なく相槌を打つ。
「瀬戸」
「何だよ?」
「神隠しの犯人……いや、神隠しの魔術師の能力、教えてやる」
核は唐突にそんなことを言った。
「……は?」
「東西南北、こっち来いよ」
「…………」
事情を知らない彼の前で神隠しの話を始める核の意図が俺は分からなかった。いや、もしかしたら俺が知らないだけで彼も核達の仲間で関係者なのかもしれないが……。
東西南北は唇を触りながら俺達を見ている。その手を下ろすと、ゆっくりと近付いてきた。
「……彼。困ってるみたいだけど」
ザワ、と全身の毛が逆立った。
「やっぱり手離してあげたら」
彼にとって分からない事を離している筈の核の言葉にも、見知らぬ人間で明らかに学生ではない俺にも、彼は全く触れなかった。それよりも先に、常識的な事を言った。この状況では逆に異常である、普通の事を言った。
「神隠しの魔術師の能力は『空間を繋ぐ』」
東西南北は核と一メートル程の距離を開けて正面に立つ。不意に俺の手を掴む感覚が無くなった。核が両手を上げて笑っていた。
「過去も未来も異世界も関係無く、入口と出口を繋ぐ」
「そういえば。この人は誰だい。紹介してくれよ」
まるで会話が噛み合っていない。淡々と喋る核と、抑揚なく話す東西南北。俺はどうしていいか分からなかった。
「過去から赤空空木を連れて来れたのも、異世界から瀬戸達を連れてきたのも、その能力が『繋いだ』からだ」
「綺麗な人だね。人間じゃないみたいだ」
東西南北は右手を上げ、核を指差す。その手が動き、人間の頭位のサイズの円を宙に描く。
「東西南北」
「そんな綺麗な人が。ボクは欲しい」
すとん、と。核と東西南北の間に何かが落ちてきた。
「……フラフープ?」
それはフラフープだった。腰で回して遊ぶ様な、そういう用途の輪っか。それを指差した右手で東西南北は掴む。
「生徒と魔術師という決して相容れぬ存在を繋いだ、生徒であり魔術師である能力者」
「核君」
「それが、お前。東西南北紡だ」
核も対抗するかのように東西南北を指差す。
「その人。頂戴」
彼は相変わらず噛み合わぬ台詞を吐き、フラフープを核の指差す腕にぶつける様に振った。
「な……ッ」
フラフープと腕はぶつからなかった。あろうことか、フラフープは腕をすり抜け……いや、フラフープの円の中を通った腕が、無くなっていた。
ポタリと思い出した様に核の腕の断面から血が滴り落ちた。
「ぐ……ッ!」
「自覚しなければ痛くなかったのに」
核は痛みが襲ってきたのか腕を押さえて踞る。それを冷静に見下ろす東西南北。
「てめぇ、核に……何したッ!」
「この輪の中は別の所に『繋がっている』。中を通ったんだから移動するのは当然でしょ」
言いながら彼は核の上にフラフープを掲げ、離す。フラフープは重力に従って床に落ちて行き――核を他の空間へと移動させた。
「核ッ!」
カラァン、とフラフープが床にぶつかる音が廊下に響いた。核が居た場所にあるのは、フラフープと輪の外にあったのだろう学ランの切れ端。
「邪魔者は居なくなった。って。ベタな台詞」
核が居た場所を見る東西南北に俺は殴りかかっていた。
「無駄。ってヤツだよ」
俺の魔拳の先には東西南北の手のひらがあった。手のひらにはぽっかりと丸い穴が空き、俺の拳はその穴を通って空振りした。
「ボクの手のひらを別の空間に『繋いだ』」
平坦な声で囁く様に言う東西南北。その背中からは、俺の拳が『生えていた』。
「入口は手のひら。出口は背中。簡単なことだよ」
俺は腕を引き抜き、反射的に相手から距離を取っていた。
「良い判断。だね。このままボクが空間を繋ぐのを止めていたら。キミの腕も千切れていた」
ごとん。
「!?」
俺と東西南北の間に落ちて来た物は――核の無くなった腕、だった。
「入口はフラフープ。出口は天井」
ゾッとして天井を見上げる。そこはポッカリと穴が空いていた。その先の空間に見える核の頭と思われる赤髪。それを見てカッと頭に血が上るのが分かった。
「何の……つもりだッ!」
俺の怒りに呼応してか、廊下が凍っていく。その現象に彼は驚く様子も見せず、口角を上げた。
「その方が面白いって先生が言ってた」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

東西南北紡(よもひろつむぐ)
空間を繋ぐ能力。入口と出口を創れる。入口と出口を重ねると異世界に繋げられる。
一人称は「ボク」、二人称は「キミ」。人の話を聞かない性格で、言葉に感情の起伏が少ない。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
天草八津芽
性別:
女性
自己紹介:
BLでファンタジー小説が多いです。
ひっそりひそひそ書いてます。
ツイッター
メインアカウント(妄想ばかり)


オリキャラ紹介bot
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
P R

Copyright © [ 妄想の隠れ家 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]