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コラボ番外編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
零雨様に書いて頂いた噂の番外編。

キャスト
瀬戸氷河(せとひょうが)
凍てつく光の魔弾。
多々角円(ほぼまるまどか)
ノンストップ重力。
榎本恭二(えのもときょうじ)
子供心の吸血鬼。
赤空核(あかぞらさね)
反面常識人。


「ヒョウガ?」
パチリと、目を開くと円が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「悪い、寝てた……」
「いや、何か苦しそうだったから」
「変な夢見ちまったよ」
「へえ、どんな?」
俺は欠伸をしながら、砂のように崩れていく夢の記憶を組み建て直す。まあ、そんなのも時間稼ぎでしかないが。
「えー……と、円が俺の立場で、俺が円の立場の夢、だった気がする……」
「僕がヒョウガの立場、って神血ってこと?」
「たぶん」
既に薄い記憶をなるべく鮮明にしようとして、眼鏡を掛ける。
「哀れだったよ」
「誰が?」
「俺と、お前」
神血という立場に振り回され魔物の亡骸を積み上げる円と、一人平和な道を歩く俺。円は倒れてもなお歩み続け、俺は途中で歩くべき道が無くなる。
「……て、あれ?」
「どうしたの?」
道が無くなったということは、未来が無いということだ。俺が途切れた道の先の闇に落ちたということは、円も落ちているということ……?
「いや、ただの夢だな」
結局は俺の夢で、ただの空想に過ぎない。夢では普通に納得した事も、現実だと辻褄の合わない意味不明な出来事だ。突っ込み所も多すぎる。
「ふーん。飲み物買ってくるよ」
円はつまらなそうに相槌を打って、部屋を出ていってしまった。が、一分もしないうちに戻ってくる。
「おかえり、早くね?」
「や、何か気分じゃ無くなっちゃった」
円は俺の向かいの椅子に座った。
「……円はさ」
夢の影響なのか、何なのか。俺は円のことが少し気になってしまって尋ねてしまう。
「今まで絶望的な状況に陥った事は無いのか?」
「ないよ」
即答した円はニコリと綺麗な弧を作って微笑んだ。
「普通、あえていうならちょっと不幸。毎日が能力バトルとか有り得ないし、人が死んだりとか、大きな怪我もしない。友達は多くはないけど、普通にテストに苦しんだり、文化祭を楽しんでいる人間だよ」
カズヤ先輩やサネに会うまではね、と付け足した。
「中学校の頃は、本当に毎日――つまらなかった」
その声が、思った以上に冷たくて。俺は思わず円の顔を見てしまったが、彼はいつもと同じ表情をしていた。
「周りの人間が『親友』だとか『かけがえの無い人』なんてヤツが居る、って聞いた時は、なんで僕にはいないのかと妬ましかったし、僕も欲しくて羨ましかったし、でも僕は失うことは無いってちょっとホッとした」
まるで俺の見た夢を円も見ていたかのように、円はつらつらと俺が夢の中で思ったことを言っていく。
「今はカズヤ先輩やサネが居てこんなことは思わなくなったけどね、アハハ」
円は少し恥ずかしそうにはにかんだ。
俺はまだ覚えている。夢の終わりを。やはり考えずにはいられない。夢の終わりで俺は――暗い底へと落ちた。円はまだ落ちてないどころか、幸せである。つまり円はこれから落ちてしまうのだ。
「…………」
「さっきからヒョウガ、変だよ」
「…………」
「大丈夫」
考え込む俺を奇妙に思ったのか、円は微笑んで耳元に口を近づける。
「落ちていくのは、ヒョウガなんだから」
そう円が囁いた。


「起きて」
「う……んー……?」
心地よいベッドの温もりが誰かによって剥がされ、俺はぶるりと震えた。寒い。部屋の暖房が効いてないのか。俺は剥がされた掛け布団を探して手が周りを這い回る。
「寒ィ……」
「だーめ。起きて」
「……あ、と五分……」
「呑気なヤツだなー、魔術師に捕まったってのに」
「っ!?」
魔術師、と聞いて脳が一気に覚醒し、俺は即座に起き上がってソイツを見た。
「アハハ、今更」
汚い白衣にボサボサの髪。魔術師、というか研究者の様だ。
「まー落ち着けよ。俺の研究は終わったから、お前にもうなんかするつもりも無いしさ」
「終わった……?」
「そそ。まあ座れよ」
魔術師は近くの椅子を引き寄せて座る。俺も警戒しながらも今まで寝ていたベッドに座った。体に傷もないし、拘束されている訳でもない。
「俺は夢の魔術師、って感じで名乗ればいいのかね」
魔術師は煙草をくわえて白衣のポケットからライターを取り出す。ライターで煙草に火をつける。
「お前、さっき夢見てただろ」
フー、と煙草を持った彼は口から煙を吐き出した。
「それ、俺が作った夢なんだわ」
「何?」
「未来と空想が混ざった夢。……覚えてるか?」
俺は腕を組んで考えた。勿論目の前の相手への警戒も怠っては居ない。
確か、円と話している夢だった気がする。そこでも俺はうたた寝していて……円と立場が入れ替わる夢を見たんだ。
「『夢の中で夢を見た』だろ?」
「なんで……」
「そりゃ俺が作った夢だ。そん位分かる」
魔術師はまた煙を吐き出し、ニヤニヤ笑う。
「お前のその夢のオチ、両方とも最悪だったろ?俺の演出だよ」
俺は魔術師の真意が分からなかった。俺に夢を見せて、何がしたかったのか。オチが最悪だったからと言ってどうなるのか。
「夢ってのはさ、見た人間の精神状態だとか、暗示だとか、真相心理とかを無意識に反映してんだよ。現実の出来事が夢に反映される。なら逆はどうよ」
魔術師は何処からか出した灰皿に煙草の灰を少し落とす。
「『夢で俺が干渉した出来事が現実の思考に反映されるんじゃあないか?』」
「まさか、そんなこと……!」
「有り得ない、なんて言い切れるか?その思考すらも俺の干渉演出によって生まれた物かもしれないぜ?」
「っ!」
「それは嘘だけども。いつかそんな事が出来る様になったらいいねェ」
他人事のように言った魔術師に俺は反射的に飛び掛かっていた。馬乗りになり、襟首を掴んでいつでも凍らせられる様な状態。
「俺に、何しやがった!」
吠える様に怒鳴る。それなのに、魔術師はヘラヘラと笑って煙草を避難させていた。
「別に何も。お前も数ある観察体の一つに過ぎねーよ」
神血ってラベルのついた、な。イヒヒ、と笑ってる相手を俺は殴っていた。痛そうに顔をしかめてはいるが、切羽詰まっている様子はなく、俺は苛ついてもう一発殴る。
「ってーな……煙草が不味くなるだろうが」
俺は無言で襟首から魔力を込めて相手を凍らせ始めた。
「おいおい……ま、いいけどよ」
魔術師は多少焦ってはいるが、なおも余裕のある笑みだった。持っていた煙草を床でもみ消す。
「この世界も、夢だしな」


パチリ、と目が開いた。
妙にスッキリした気分だ。
「おはよー氷河!」
恭二がノックもせずに入ってくる。
「ってあれ!もう起きてる!俺が起こしてやろうと思ったのに!」
「なんか、起きなきゃいけない気がした」
「ふーん」
いつもの様に恭二が抱き付いてくる。……何故だろう、とても安心している自分がいる。
「恭二は、俺のもの」
「ん?当たり前じゃん!つーか、氷河が俺のものなの!」
ニッ、といつものように笑う恭二を俺は抱き締めていた。
「なんか……安心するわ」
「えー何で?」
「知らね」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夢の魔術師登場編。
互いに思い思いに書いているせいか、結構深い話になってまいりましたコラボ小説。
巨悪なんていやしないけど、ただ互いに巻き込まれ続けています。

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