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操り人形のはなし。


・マリオネットスレンダーの魔術師
※瀬戸氷河
「ごめん……なさい……」
俺は弱かったはずだ。
恭二には力で劣り、芳示には体術で劣り、丙には技術で劣る。
それなのに、何故。
「やっぱり大切な人を傷つけるのは、出来ないみたいだね」
笑う魔術師。
俺の足元には、三人が倒れている。
似合わず俺に倒された三人。
全部俺が、この手で……。
傍に寄りたくても、糸がそれをさせない。
力なく呟く。
「もう、いいだろ……離せよ……」
「まだダメだ。治癒術があるだろ。」
魔術師が俺を棒立ちにさせる。
「う……っ」
「あははは、辛そうだねぇ」
「お前が、心まで操ってくれれば……いいのにな……」
表情まで操られることはなく、涙が止まらない。
いっそ無表情でいられたら、俺は壊れそうにはならなかった。
「ふふふ、いいねぇ、そういう表情好きだよ。」
糸が外され、がくりと崩れ落ちる。
「う、ぁああっ……」
そして泣き崩れる。情けないものだ。
あの日と今が重なる。
どうしようもない絶望。
あの日は……本当に死ぬかと思った。
吸血鬼に殺されると思った。
誰も、いなくなる。
「ひのえ……ほう、じ……っ」
死んでしまう。消えてしまう。
「恭二……」
それが嫌だから……俺は……。
全てを差し出したのに。
全てを受け入れたのに!
「まだ一仕事あるんですよねー」
「ッ……!」
また糸が俺を絡めとる。
こんな魔術師に屈しなければならないのか。足がゆっくりと恭二たちのところに向かう。
止めを刺すつもりか。
他でもない俺の手で。
誰かが自分のせいで死ぬのが嫌だから、俺は。
「……だから、おれは---を壊したのにっ!」
「ひいぃっ!?」
魔力が暴走して、辺りを凍らせる。
糸も例外でなかったようで、魔術師の指先を凍らせていた。
「はぁっ……恭二、芳示、丙を……!」
魔術師の支配から解放されていた俺は、覚束ない足取りで、三人の元に寄り添う。
制御が効かず溢れる魔力が、治癒術として発動する。
広範囲治癒術。
普段の俺には出来ない魔術だ。
「俺がいるから……死なせないから……!」
三人の指先がぴくりと動くのが見えた。

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壊れて暴走する氷河。
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