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コラボ補足編。

零雨様の『最もシリーズ』と『本部シリーズ』がコラボ。
零雨様に書いて頂いた噂の補足編。

キャスト
鈴砂珠宇(すずさしゅう)
キャラ作りの達人
瀬戸氷河(せとひょうが)
月下美人の不良

零一のクラスに転校生が来たらしい。
「なんでもかなりの美形だそうですよ」
向かいで仕事をしていた後輩であり生徒会長である北里康也が楽しそうに話す。
「ふうん……どんな人なの?」
僕は書類を書く手を止めずに話を聞いた。
「授業中によく物憂げな表情で空を見ているそうです。それなのに当てられてもスラスラ答えてしまう。不良優等生……と言うんでしょうか」
「やけに詳しい情報だね」
「新聞部の方に聞いた話なので」
なるほど。新聞部の面子は釣木学園でも一二を争うほどの情報通が揃っているから、既にそんな細かい話が来ていてもおかしくはない。書類が書き終わったのでペンを置いて彼を見た。
「それと……その人、赤空葉菊とよく接触しているそうです」
康也も書く手を止め、僕を見た。僕は堪えきれずにフッと笑う。彼が何を言いたいかなんて、長年人間観察をしてきた僕には手に取るように分かる。
「その転校生、調査してくるよ」
彼の望み通りの台詞を言うと、彼も笑顔になった。
「ええ、お願いします。まあ俺も零一さんに会う口実作りの為に協力はしますから」
僕は思った。コイツは本当にホモ野郎なんじゃないだろうか。

「情報くれないかな?」
放課後、早速零一を生徒会室に呼び出した。机の端で康也が仕事をしているが、その顔は妙に幸せそうである。零一がいるからだ。対する零一は康也が苦手なので気まずそうに座っている。が、平静を装った顔をしている。
「情報って」
「転校生のだよ」
僕は康也がいるので生徒会用のキャラ作りをしたまま話す。
「その……えーと」
「瀬戸氷河」
「そう、その瀬戸氷河さんって人は赤空先生とよく接触してるらしいじゃないか」
「確かに赤空葉菊が直々に連れてきてたな」
「ファンタジー側だとしたら生徒会が把握しておかないとなにかあったとき面倒でしょう?」
一般人でももちろん把握するが、ファンタジーの人間は複雑な環境が多いので情報は一般人のよりかなり多くなる。零一はまだ腑に落ちない顔をしていた。
「そんなの新聞部に聞けばすぐ集まるだろ?何でわざわざ俺に」
「もちろん委員長の飛鉈さんには聞いたし、号外も読んだよ。でも同じクラスである零一の印象も聞いておきたいんだよ」
「つってもなー……」
零一は天井を見上げて考える。さっきの言葉は半分詭弁だ。新聞部以上の情報を持っているなんてかなりのレアケースだし、ファンタジー側でない友恵さんと一緒にいた場合は可能性はゼロに等しい。ただし、華さんと一緒で友恵さんが居なかった場合は確実に何かしら起こっている。そういう男なのだ、零一は。
「……あ」
「何?何か思い出したの?」
「『釣木の異端、暴かせてもらうぜ』」
「はあ?」
「俺達のファンタジーな悩みを解決してくれるんだってよ」
「……ふうん?」
思わず、キャラ作りを忘れて素で答えてしまった。それ程に意外な言葉だったからだ。
そこに座る康也も気が付いていないが、生徒会長になるだけのカリスマ性を持っている。異常な程に人を惹き付ける魅力。それもある意味ファンタジー、彼の言う異端だ。この釣木学園にはそんな人間が山ほどいる。その全てを転校生は把握するのもりなのだろうか。
「じゃあ僕のファンタジーも消すつもりなのかな」
「それは嫌だな」
意外なことに零一は顔をしかめた。普通を望む相手は周囲も普通になってほしいだろうと僕は思っていたのだ。首を傾げて質問する。
「なんで?」
「だってそのコロコロ替わるキャラが珠宇だろ。キャラが替わらない珠宇とか珠宇じゃねーよ」
「……ふふ、零一のくせに生意気な答えを」
「ふん」
僕は照れ隠しのように零一のもっさり髪に触った。誤魔化すように軽く引っ張る。視界の端で康也が恨めしそうに僕を見ているのは分かっているが無視した。

「瀬戸氷河君、かな?」
次の日、今度は転校生を直接生徒会室に呼び出してみた。確かに彼はかなりの美形であった。月下美人というのだろうか、月に映えそうな白い肌と綺麗な髪である。来てすぐの彼は目立つことに少し苛立っている表情をしていた。赤空葉菊と関わって目立たないでいられるなんて高望みをする人である。
「そうだけど、何の用です?」
「僕は生徒会副会長の鈴砂珠宇。君と同じ三年だし、敬語とか遠慮はいらないよ」
僕は生徒会用のキャラではなく、木下蜂蜜や五十嵐知代なんかをモデルにした優しい性格をした友人キャラになりきった。
「生徒会ってさ、生徒のことを色々と把握しなきゃいけないんだ。時には悩み相談、時には出席催促、時には雑用なんかもする。だから転校生の氷河君のことも知りたいなって」
ニコ、と笑うが、相手の反応は「はあ」とあまり良くなかった。僕のキャラ作りには気が付いていない様だ。
「零一君から聞いたよ」
零一の名前を呼ぶと彼はピクリと反応した。僕は微笑みを崩さず続ける。
「君はファンタジーを探しているんだって?」
「ただの調査だ。俺には解決出来ないしな」
めんどくさそうに話す彼に僕は思う。解決なんて、しなくていいのに。
「生徒会って、こういうことするから生徒のファンタジーとかもよく知ってるんだ」
「なら教えてくれ」
やはり食い付いてきた。僕は申し訳なさそうな顔を作って話す。
「残念だけど……個人情報だからそれは出来ないんだ。だからさ、換わりっていうか、僕も協力のつもりで話したいことがあるんだ」
「聞かせてくれないか」
「もちろん。……僕は、宇宙人の弟子だ」
氷河の眉がピクリと動く。考えていることを予想するならば『この世界には宇宙人までいるのかよ』だろう。彼のキャラを真似するかもしれないので、よく観察が必要である。
「……どういうこと、だ?」
「僕はね、小さい頃に宇宙人と知らずに宇宙人と遊んでいたんだ。その宇宙人に遊びと称してスキルを教えられたんだ」
「…………」
「物真似っていうのかな、他人の特技を真似することが出来るんだ」
僕は嘘をついた。正確には他人の人格や特徴を真似して他人に成りきることができる、だ。特技を真似するのはその副産物に過ぎない。ただ、それを正直に言うとこのキャラ作りがバレてしまうかもしれないので、黙っておく。
「面白いな……何処まで真似出来る?」
「試したことはないけど、多分何処まででも。宇宙人のスキルだからかなり精度は良いと思う」
「……なんでそこまで話してくれるんだ?」
「協力したいからだよ。生徒会は生徒がより良い学園生活を送る為に存在してるからさ」
僕以外の人はかなり奉仕的だよ、と微笑むと彼はちょっと苦い顔をした。奉仕という言葉はあまり好きではないようだ。
「理由はなんであれ、話してくれたことは感謝する」
「ありがとう。……これから氷河君はどうするつもりなの?」
さりげなく今後の動向を聞いてみる。
「適当に学園生活を送るさ」
氷河は何故かため息をつくと、そこで初めて出したコーヒーを口にする。彼のその言い方に何か引っ掛かりを感じたが、今の僕の手持ちの情報では分からないので気にしないことにした。
「そっか。……何か困ったことがあればいつでも言ってね?」
「そうさせてもらうよ」
彼は生返事で立ち上がると「ありがとな」と言って出ていってしまった。
「……瀬戸氷河」
去るのを見送ってから僕も甘くしたコーヒーを一口啜る。
「魔物討伐本部の人間。人殺しでガンナー。成績優秀、素行不良。釣木学園の異端を警戒して探ろうとしている」
僕のこのキャラ作りにも彼は気が付いているだろうか。
僕はキャラ作りを止めてため息を一つついた。
「人間観察、するかあ」

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宇宙人まであらわる。
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