友人に捧げた入門者向け本部シリーズ。短編です。
全20話で、全員分の日常が綴れたので、こちらにも上げておきます。

相沢、莱桃編。

※篝祇亜須磨
次は、相沢さんの部屋だ。
強運を自慢する彼は、よく本部メンバーを巻き込んで賭け事を始める。
ギャンブルでは負け知らずで、賭け好きな人から金を巻き上げているらしい。
部屋に入ると、案の定トランプが並べられていた。
そこには珍しく莱桃さんがいた。
「あれ、莱桃さんがいるなんて珍しいですね」
「ああー、亜須磨。なんや物好きやなぁ」
莱桃さんは賭け事に縁のない人物だと思っていただけに意外だった。
彼は甘党だからパティシエの宮代さんの所にいると思っていたし。
「お、亜須磨もポーカーやってく？」
「絶対巻き上げられるから断ります」
「じゃ、賭け金なしで」
トランプをシャッフルし、テーブルに並べる相沢さん。
それから戻して莱桃さんと俺と自分にカードを配り、山をテーブルに置く。
カードの中を見ながら、せっかくなので相沢さんに質問をしてみた。
「そういえば、ずっと気になっていたんですけど、相沢さんのギャンブルって誰が来るんですか？」
「常連は杜矢さんと氷河だな。それから白河さんとか杉森さんとか瀬神さんとか才臥とか雨境とか来るぜー。」
賭け事が好きそうな人ばっかりだ。
杜矢さんは感がいいから得意そうだし、氷河さんは何だかんだいって金とスリルが好きだったりする。
白河さんと杉森さんも同じ理由で、瀬神さんと才臥と雨境さんは純粋に楽しんでそうだ。
「あれ？この前、恭二と菅谷おらんかったっけ？」
莱桃さんがカードを３枚取り換える。
「ああー、恭二は氷河とセットで来るねー。菅谷は気まぐれって感じ」
俺もカードを４枚取り換える。
だめだ、ワンペアしか出来ない。
「才臥が意外にこういうのうめぇんだよ。あれはびっくりしたなー。逆に氷河はすっごい下手。意外だよなー」
相沢さんもカードを一枚取り換える。
相沢さんのギャンブル話が続く。
「何が下手って賭け方が下手なんだよなー。ヤマを張る場所を間違えてるし、挑発に乗りやすすぎでさ。」
「へぇー、そーやったんか」
「そうそう。莱桃さんも今度見てみろって。笑えてくるから。さて、準備はいいかい？」
相沢さんのオープン！という合図で、一斉にカードを出す。
莱桃さんがスリーカードで、相沢さんがストレート。
この場合は相沢さんの圧勝だ。
「……絶対、勝てないよ、これ」
相沢さんのギャンブルはあまり見たことがないが、スリーカード以下の役を出したことがないぞ、この人。
こういうところが彼の強運たる所以なのだが。
「そや、亜須磨。何か用があったんやないの？」
莱桃さんに言われて、本来の用を思い出した。
遊んでる場合じゃなかったな。
「ええ、白河さんから伝言で。明日、１２時までにラウンジに集合だそうです。」
「「りょーかい」」
相沢さんがトランプを回収して、またシャッフルする。
またポーカーに付き合わされる前に、逃げ出した。